意図せぬ曇らせと抜刀術(第60話までレビュー)

=== はじめに ===

基本的な内容はタイトルのとおりです(身も蓋もない)が、ちょっと付け足すと…

「胸糞ダークファンタジーなマンガ世界に転生したので、我が身を顧みず原作シナリオに喧嘩を売ってボロボロになったら、周囲の皆が曇りまくってしまった」

…という感じになります。つまり「意図せぬ曇らせ」ですね。この手の話が好きな人に強くお勧めします。

かつ、レビュアーの思うにこのお話にはもうひとつの軸がありまして、それが「抜刀術」です。引き抜きざまに敵をぶった斬るあれです。これがまたいい味を出していまして、このへんが好きな人にもお勧めです。

で、さらに付け加えると、書籍版を買ってみることをお勧めします(ダイマ)。WEB版より相当に、かつ良好に加筆されています。
レビュアーとしては、第31話相当部分(2巻)の加筆がとてもおいしかったと申し上げておきます。

(以下、下に行くほどネタバレがひどくなるのでご注意を。内容を事前にあまり知りたくない人はここでUターンすることをお勧めします)


=== ネタバレLevel 1 ===

初っ端から「仲間を守るために、強大な敵に相打ち覚悟で特攻する」という、定番ながら極めて高火力な曇らせムーヴを炸裂させている主人公くんですが、その後も全方向に見境なく曇らせをバラ撒いております。本日は曇天なり。
第60話時点で、主人公くんに曇らせられた犠牲者は…

- 彼に守られた同パーティの女冒険者3名
- 主人公くんに依存していた聖女様1名

以上4名は精神を焼き尽くされており、どう見ても手遅れ。
加えて…

- 冒険者ギルドの女性事務員1名
- 年上の女冒険者1名
- 親友の男性騎士1名
- 主人公くんが救助した女冒険者2名
- 主人公くんに興味津々の聖女様3名
- こじらせた男性冒険者1名

以上9名も、いい感じに焦げてきています。とりわけ、年上の女冒険者さんはヤバそう。

しかも、犠牲者はさらに増えそうな勢いでありまして…被害が広がる前に、この主人公くんをどこかに監禁、じゃなかった隔離した方がいいんじゃないかな…。


=== ネタバレLevel 2 ===

全方向曇らせ事案と化している主人公くんですが、その属性をざっと並べると…

- 転生者(原作シナリオ=地獄じみた悲惨な展開を知っている)
- 神への反逆者(原作者=神に怒りを燃やしていて、全力で抵抗する覚悟を決めている)
- 不惜身命の侍(第0話でいきなり命を捨ててかかっている。っつーかほとんど死んでる)
- 抜刀術の達人(おそらく世界最強クラスの剣士。魔法使いに片足突っ込んでいる)
- 努力の鬼(7年間地獄の修行を積んでいたらしい。つまり安易なチートではない努力家)
- 隻眼隻脚(0話で取得。現代日本だとたぶん身体障碍者5級くらいに相当)
- 不撓不屈(片目・片脚を失っても剣士として再起を誓う筋金入り)
- 前途ある若者(現代日本ならまだ高校生…)
- 仲間想い(ぶっちゃけ自分より仲間を優先している)
- 鈍感(自分のムーヴが周囲からどう見えるのかを理解していない)

…といった感じの属性てんこもりです。サブキャラなら3~4人くらい作れそう。
で、これらの属性が嚙み合うと…

 苦難を乗り越えてきた若き練達の名剣士が、
 仲間を守るために強大な敵に特攻し、
 剣士として致命的な障碍を受けつつ、
 仲間を守れたことをただ無心に喜び、
 涙を流して悲しむ仲間たちを労り、
 誰を責めることもなく、
 障碍も苦とせず、
 ただ静かに再起を誓っている!

…というムーブになるわけです。

いや、恰好いいんですけどね。漢の中の漢ですけどね。
多感な女の子の眼前でこんなことやらかしたら、そりゃあ脳みそ焼き尽くしちゃうに決まっていると思いますよ。
主人公くんは責任取らないといかんと思いますねー。


現場からは以上です。

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