第45話
月日が流れ3ヶ月経つ。
薬の普及は順調で、3大陸には行き届いている。
カトレアさんの畑は、余ったお金を拡張に使う話が出て来ていて、薬剤研究所が、協賛する話が挙がっている。
薬の素材の魔力の結晶はまだ余っていて、その他の素材も冒険者や旅人により、無くなることは無くなった。
パン屋の方も順調で、遠く離れた地域の人も知っているという噂を聞く。
お店の方は、ナザリーさんに旅立つかもしれないと、ほのめかし、ナザリーさんとアカネちゃんに、引き継ぎ始めている。
いつでも私が居なくなっても、良いようにだ。
おかげで、私のサポートは薬の素材や薬、パンが無くなった時に、複製するだけに済んでいた。
なんだか旅立ちの日を迎える時が来ているようで、寂しい気持ちだ。
今は余った時間を使い、心の隙間を埋めるかのように、素振りや体力づくりを欠かさず行っていた。
そんなある日の夕方。
私が店の近くの広場で素振りをしていると、クラークさんが訪れて来た。
手には木刀を2本、握りしめている。
「考え事をしながら、剣を振るな」
私は素振りを止めると「すみません」
さすがクラークさん、お見通しね。
「だいぶ剣に慣れてきたようだな」
「お陰様で」
「どれ、稽古をしてやる」
と、木刀を一本、私に投げつけた。
私は拾い上げると「ありがとうございます」
私の成長したところ、見せなきゃ!
木刀を構える。
いままで素振りをしていただけで、実戦経験はほとんどない。
様子を見ていても、時間の無駄だ。
まずは私から仕掛ける!
両腕を下に垂らし、無防備で木刀を持っているクラークさんに、
真正面から攻撃を仕掛ける。
カランッ
クラークさんは難なく私の攻撃を受け止めた。
「格上相手に、真正面から攻撃をしてどうする? 頭を使え」
「はい!」
後ろに飛び、一旦態勢を整える。
頭を? どうやって?
経験の浅い私には直ぐにアイディアが浮かばない。
「しょうがない。私から仕掛けるぞ」
クラークさんが正面から攻撃を仕掛けてくる。
私はとっさに、正面から受け止めた。
「受け止めるのもいいが、力が強い相手には、避けた方が無難だだったな」
グイッと木刀で押され、よろめき、態勢を崩す。
「こういう事になる。いまは木刀を弾かなかったが、丸腰になれば、それで終わりだ」
「はい! 気をつけます」
態勢を整え、木刀を構える。
ゴーレムと違い、動きが読めない相手に、どうやって攻撃をすればいいの?
そう思っていると、クラークさんがまた、正面から攻撃を仕掛けてきた。
私は後ろに飛んで避けた。
態勢を戻す間、無防備に見える。
いまなら攻撃できる!
でも、痛いだろうな。
クラークさんの態勢が戻り、私の木刀が弾かれる。
「あ……」
クラークさんが、弾いた木刀を取りに行く。
拾い上げると、私に近づき、差し出した。
「ありがとうございます」
「なぜ攻撃しなかった?」
「それは……痛そうだなって」
「私はお前の怪我など気にせず、攻撃をする。そうでなければ、稽古にはならん。お前もそのつもりで来い」
「はい」
「今日はもう終わりにするか。確か今はお店の方、余裕があるんだったな?」
「はい」
「何時頃なら都合がつく?」
「休みの日ならいつでも。仕事の時は、15時以降からなら」
「分かった。では、その時間になったら様子を見に来る。駄目な時があったら教えてくれ」
「分かりました」
私が返事をすると、クラークさんは背を向け、去って行った。
「ふー……」
素振りはしてきたものの、実戦となると難しいわね。
今度はイメージを加えた素振りをしようかしら?
辺りが暗くなり始める。
とにかく今日はもう、帰ろう。
お店に戻ると、ナザリーさんがレジの整理をしていた。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「私、汗だらけだから、先にシャワー浴びてくるね」
「分かったわ」
私が売り場を通り、廊下に行こうとしたとき、ナザリーさんが
「あ、そうそう。手紙が届いていたから、二階のテーブルの上に置いておいたから」
「ありがとうございます」
誰からだろう?
気になるけど、シャワーが先ね。
準備を済ませると、風呂場に行き、シャワーを浴びた。
パジャマに着替え、タオルで軽く髪の毛を拭き取ると、首にかける。
脱衣所を出て、二階へと向かった。
二階に行き、テーブルを確認する。
確かに1通の手紙が届いていた。
テーブルに近づき、中身を確認する。
アラン君からね。
『ミントへ。元気にしているか? 俺は元気だ。お前が帰る手段だが、手掛かりを見つけた。それが本当なら、どうにかなりそうだぞ。お前の誕生日に間に合うかもしれない。』
『ところで、お前の誕生日は何日なんだ? 聞くのを忘れていた。俺はいま、南西の大陸にある。シーサイドという港街にいる。滞在先の住所を入れておいた。返事が来るまで待っているから、教えてほしい。 アランより』
ついに手掛かりが見つかったのか……。
何でだろ? 心底喜べない私がいる。
首を振り、余計な気持ちを払う。
せっかく苦労して手掛かりを見つけたアラン君に失礼よね。
喜ばなきゃ!
さて、予備に買っておいたレターセットで、返事を書きましょうかね。
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