第38話

 その日の夕方。

 お店の閉店時間になり、外に出る。

 ポストを覗きに行くと、手紙が入っていた。


 宛名は私。

 誰だろ?

 手紙の裏をみると、アランと書いてあった。


 返事が来たのね!

 ウキウキしながらお店に向かう。

 ドアを開けて、中に入る。


 おっと、札をクローズにしていなかった。

 もう一回、外に出て、札をクローズにしてから、中に入る。

 ナザリーさんが調理場から出てくる。


「お疲れ様」

「お疲れ様です」

「あら、手紙?」


「うん、アラン君から」

「じゃあ、掃除とかは私がやっておくから、二階に行っていて、いいわよ」

「ありがとう」


 ナザリーさんの優しさに感謝!

 私は二階へと向かった。


 部屋に着くと、手前の椅子に座り、手紙を開く。


『ミントへ 元気にしているか? 俺は元気だ。手紙の返事ありがとう。読ませてもらった。良い人に会えたみたいで、安心した。今度、紹介してくれ。』


『薬草、無事に届いた。ありがとう、大切に使わせてもらうよ。クラークさんと会えたのか、あの時、毒消し薬を持っていなかったらと思うと、ヒヤッとする。薬のことなんだが、余っているものないか? こちらの薬屋が興味を示している。もし余っているなら、【薬のトトちゃん】宛てに送ってくれ。代金は運送費込みで、送るとの事だ。』


『ワイルドボアのサンドイッチか。想像するだけで、ヨダレが出そうだ。レシピはないのか? 前に送った写真で、一緒に写っていた女性だが、酒場の店員なんだ。もし教えてもらったら、作ってもらえるかもしれない。写真の方、見させてもらった。可愛い制服だな、大切にするよ。アランより』


 可愛い制服って、褒めるとこ、そこ?

 思わず、クスッと笑ってしまう。


 まぁ、大切にしてくれるって言っているし、いいけど。

 レシピについては、ナザリーさんに確認しなきゃね。

 私は手紙を椅子にかけてあったバックにしまうと、立ち上がった。

 

 一階に行き、カウンターの方へと向かう。

 ナザリーさんは、カウンターを雑巾で拭いていた。


「ナザリーさん、相談があるんだけど」


 ナザリーさんは、手で汗を拭うと「なに?」


「アラン君が、ワイルドボアのサンドイッチを食べたいから、レシピを教えてほしいんだって」


「アラン君が作るの?」

「うぅん、酒場の店員にレシピを渡して、作ってもらうって書いてあった」


「ふーん……構わないわよ。宣伝にもなるし」

「じゃあ教えちゃうね。返事を書くのに雑貨屋に行ってくる」


「分かったわ」

「帰ってきたら、調理場にある新聞紙と段ボールもらうね」

「えぇ」


 雑貨屋に行って、前と同じレターセット買うと店に戻る。

 カウンターに置かれているメモを手に取り、調理場へと向かう。


 調理場に着くと、調理台の下から、小さい段ボールと中くらいの段ボールを回収した。


 調理台の横にある古新聞置き場から、新聞を2部、回収して、段ボールに入れる。

 あとは……薬!


 売り場の方へ行き、中くらいの段ボールの中に、

 小さい段ボールを入れて、床に置く。


 アラン君にもあげたいから、多めに入れてっと……。

 回復薬を10個、毒消し薬を5個、麻痺消し薬を5個を段ボールに入れる。


「よいしょ」


 落とさない様に、慎重に段ボールを持ち上げた。

 あとは二階で仕上げるか。


 二階に行き、部屋のドアを開ける。


「ナザリーさん、ただいま」

「お帰りなさい。あら、アラン君に荷物を送るの?」

 と、奥の椅子に座っていたナザリーさんが返事をした。


「うん。薬を送ってあげようと思って。あと、トト村の薬屋でも、欲しいんだって」


「順調ね」

「うん」

「じゃあ、私は下に行っているわね」

「ごめんなさい。邪魔しちゃって」


「大丈夫よ。丁度、夕飯の準備をしようと思っていたの。

 終わったら、降りてきて」


「はーい」

 ナザリーさんは立ち上がると、部屋を出て行った。


 私はテーブル近くの床に置き、小物入れからペンを出した。

 ペンをテーブルに置き、手前の椅子に座る。


 さて、まずはレシピを書き写すか。

 メモを段ボールの中から回収して、レシピを書き写す。


 四つ折りにして、テーブルに置いた。

 次は手紙の返事。


 レターセットを段ボールの中から回収して、中身を取り出す。

『アラン君へ 私は元気です。薬だけど、薬屋とは別に、アラン君用に薬を送ります。気にしないで、使ってね。』


『レシピの方は、許可が取れたので、手紙と一緒に同封します。無くさないでね。最後にお願いがあります。薬に使っている素材が不足しているの。素材はプラントAの毒袋と、麻痺消し草。もし見つけたら送ってね。ミントより』


 よし、書けた。

 封筒に、レシピと手紙を入れて、封をする。


 何で手紙を書くと、敬語になるんだろ?

 まぁ、これでいいわ。

 あとはこれを梱包するだけね。


 小さい段ボールに封筒を入れて、回復薬5個、毒消し薬2個、麻痺消し薬を2個入れる。


 新聞紙を梱包材代わりにクシャクシャと丸めて入れて、蓋をした。

 中くらいの段ボールに残りの薬を入れて、丸めた新聞紙を入れて

 蓋をする。


 最後に両方をガムテープで留めてっと……出来た。

 段ボールを持ち上げて、壁際に置く。


 これなら邪魔にならないわね。

 明日の休み時間、運送屋に持って行こう。

 さて、下に行くか。


 その日の夜。

 寝る準備を済ませ、布団に入り、今日の整理をする。

 手持ちの薬草【1個】

 手持ちのお金【2334P】

 回復薬改【1個】

 マジックウォーター【1個】

 回復薬【6個】

 毒消し薬【3個】

 麻痺消し薬【3個】

 

 結局、薬の方は、あの後は売れなかったけど、

 新しいルートも出来たし、焦る必要はないよね。


 うんうん、大丈夫、大丈夫。

 ナザリーさん風に言い聞かせると何だか落ち着く。

 これはいい。使わせてもらおう。

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