第50話 自分 12

叔母が裁判を起こした裏には、東京の叔父が入れ知恵したはずだ。


東京の叔父は直接動かず、他の裕福な叔父はトラブルになりそうだと


気づき、すぐに辞退した。金で焚き火が出来るほどの金があったからだ。


愚かな遠縁の叔父は、真に愚かだった。


彼自身、殆ど何もせずに、私の家に来る度に10万円取っていた。


しかし、これはある意味フェイクの申請である事は、私は知っていた。


何故ならいつも同じ手順だったが、最初は私は相続人では無いから


席を外して欲しいと言い、だいたい20,30分程度してから


応接間に戻るように電話してきていた。


その場では10万円をわざわざ私に確認させていたからだ。


そしてたわいも無い話をして、いつも帰って行っていた。


父親はいつも言っていた。来るだけで特別何もしないのに、


いつも同じように忙しい、忙しいと言いつつも


なかなか帰ろうとしないと。


正直迷惑な話だと言っていた。


結局1500万ほどのお金の殆どは、使途不明金になった。


手書きのお金の移動を記していたノートは紛失したと言い、


そして殆ど実際は何も把握できていない為、祖母の家が壊される


事になった時、どこに何があるのかも分からない為、


散々私にコンタクトを取ろうした。私に対して手紙も寄越したが、


私は読まなかった。書いてある事は想像できたし、


一番は信用できない相手だから、読む必要もないと判断した。


父は手紙の内容を何度か聞いてきた。


私はその度に読んでいないと答え、


俺は読む気はないから、渡そうか? と言ったが、


元々、面倒事は他人任せな為、父は手紙を受け取る事を拒否した。


申し訳ない気持ちだから100万円だけ渡すと、本当によく言えたものだ。


誰一人謝罪も無く、私は本当は、何が起きているのかが知りたかっただけだった。


人間であるならば罪悪感はあるはずだと、私は思って生きて来た。


しかし、私の父には微塵も無かった。


唯々ただただ、兄弟を第一に考え、私を捨て駒にしようとしていた。


人間関係を築けないのは、父も母も弟もであった。


父と弟は難しいタイプの人間だから理解できるが、


一番恐ろしいのは母親だった。


権力をかさにして、多くの悪行をしていた。


自分より強い者には逆らわず、自分より弱い者に対しては非情な扱いをしていた。


いつもそうだった。人任せにするから実際には何も知らない奴らばかりだった。


父は一人で嘘を、双方についていた。


私にも兄弟にも、嘘をつくから事は厄介になっていっていた。


嘘を隠す為に更に嘘をつく。しかし嘘は嘘でしかない為、それを記憶することは


深みにはまるほど、限界が来て、嘘がバレる。


しかし、父の嘘の発端すら見えないほど無数の嘘で、乗り切ろうとしていた。


医者だから頭が良い訳では無い。


父は私よりも自分のほうが頭が悪い事を自覚していた。


昔、まだ父が元気な頃言っていた。


「身内の争いほど醜いものはない」と言っていた。


しかし、しっかりと理解していないから最終的には、


醜すぎる事になった。言葉とはそういうものだ。私は哲学からそれを学んだ。


真に理解しなければ無意味だ。己の信念を貫く事で自分を見出した。


私は信念を曲げず、戦った。勝ち負けは相手にでは無い。


自分との闘いだ。私は闇に包まれたが、信念だけは貫いた。

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