第147話・魔力付与型サングラスと、古代遺跡
エルフのルーター持続の里で、私たちは里長であるワカマッツさんとの話し合いを行いました。
勇者の秘宝、それがあることを打ち明けてくれただけでなく、条件次第では譲ってくださると言うことで話は進みます。
そして交換条件として提示されたものは石板に記された勇者の装飾品だそうで、武田さんが付けている眼鏡というものに酷似していました。
「クリスっち。これは眼鏡じゃなくサングラスだし」
「サングラース?」
「発音が微妙だけど、まあ、それは今は良いし。サングラスっていうのは、太陽の光とかから目を守るもので、眩しいものを見る時とかにも使われるものがあるし」
「でも、どうしてこれなのでしょうか? 見たところ、提示された石板は古いものであることは間違いはありませんが、何故、今これが必要なのですか?」
そうです、その理由は大切です。
「この森の奥、私たちの聖域のさらに山側にある洞穴にですね、メデューサという魔族が住み着いてしまいまして。背徳者とかいう烙印を押されて魔王国を追放されたらしく、我々の里と取引をしたいという伝言が届けられました」
そう告げてから、ガサガサと羊皮紙を数枚取り出して私たちの前に広げてくれました。
そこには確かに、殴り書きのような文字で食べ物が欲しい、金ならあるという感じのことが書かれています。
「本当だ、こっちには『呪いにより、見たものが石化してしまう』って書いてあるし。書いてある文字も行間や文字間がバラバラで、あちこち文字が重なっているし……」
「羊皮紙の端が石のように硬くなっているのも、呪いの影響のようですわ」
「ふむふむ、それでルーターの里としては、このメデューサさんと取引をするためにも、サングラスを掛けて石化を防ぐということですか」
「逆ですね。メデューサの視線を無力化するために、彼女にサングラスを装着してほしいのです。ただ、サングラスまで石化されると困りますから、視線を無力化できるような装飾品がないかと思いました」
それで、勇者の残した石板なのですか。
ここで問題なのは、【型録通販のシャーリィ】の商品にサングラスがあるかどうか、そしで運良く【石化の呪い】に耐えうる魔術付与が施されているかどうか。
「あーしは神話に詳しくないけれど、あーしたちの世界にいるメデューサって、見たものを石に変える能力があるし。だから、サングラスを相手に掛けさせて大丈夫なのか心配だけど、ひょっとしたらそういうのがあるかもしれないし」
「そこなのですよ。ということなので、まずはそのようなものがあるかどうか、調べるところから始めたいのでお時間をいただけますか? あと、できれば私たちだけになりたいので宿がありましたらお貸しいただきたいのです」
ワカマッツさんにそう話しますと、すぐに手配してくれるそうでエルフの方が外に出ていかれました。
そして少しで戻ってくると、この場所から少しだけ離れますけどと前置きをしてから、私たちを空き家へと案内してくれます。
定期的に森の近くまでやってくる商人がいるそうで、その人たちが里まで来た時に宿泊するために使っているとか。
さて。
型録通販のシャーリィには、サングラスはあるのでしょうか。
………
……
…
「……ありますね。それも複数の種類のサングラスが」
「スポーツタイプとか、クラシックとか色々あるし。でも、これって買ってから届くまでは、付与されれる魔法の種類はわからないし?」
「そこなのですよ。ですから少し多めに購入して、ガンダムに付与される効果を確認しなくてはなりません」
「ガンダムじゃないし。ランダムだし」
あれ、バラバラっていうか言葉を勇者世界の特殊単語でガンダムっていうのでは? あれ? わたし武田さんに騙されました?
「そ、そのランダムに付与される効果で、適切なものがあることを祈りましょう。幸いなことに、サングラスの種類は二十種類もありますし、それぞれ少しずつ購入してみます? この紫外線透過率っていうのが良いものにします?」
「紫外線透過率? あ〜、それが小さいやつを重点的に買うし。ひょっとしたら、石化の呪いって紫外線みたいに変換されるかもしれないし」
よくわかりませんが、0.1%っていうやつが一番小さいですから、このタイプのものを5つずつ、合計25個ほど購入してみましょう。時間的に今注文したら……うん、明日の朝の配達便ですね。
これは仕方がないので、急ぎの注文で伝票を書いて送りましょう。
「では、今宵一晩の宿を借りるということで、私が里長に話をして来ます」
「よろしくお願いします。私たちは、少し里の中を散策して来ますので」
「あーしがいるから大丈夫だし?」
柚月さんが護衛ということで、ノワールさんも安心して里長の元へと向かいます。では、私たちは里の中の散策へと向かいましょう。
………
……
…
樹上都市ということもあり、地面は綺麗に整地はされていますが、建物のようなものは、殆ど見当たりません。
ただ、精霊樹の根元あたりには大きな集会所のようなものが作られています。
扉の前には誰もいなく、厳重に守られているとかそのような雰囲気はありません。
「ん? 里の外から来たものか? そこは許可なく入ることは許されていないからな。間違っても入るなよ?」
私たちが建物の前にやってくると、樹上から声が聞こえて来ます。
「ここは、何があるのですか? 見た感じでは集会所のようですけれど」
「勇者の祠だよ。その入り口が祀られている場所だけと? 勝手に入ったらダメだからね」
「「勇者の祠?」」
思わず柚月さんと顔を見合わせてしまいます。
つまり、この中に、勇者の秘宝というものが封じられている……もしくは祀られているのでしょう。
「見張りとかはつけないのですか? こんな誰でも自由に入れそうな場所なのですよ?」
「この里のエルフで、しきたりを破る奴はいないからな。それに、祠の中に入るためには、里長の持つ魔導具がないと不可能だから」
──ヒョイ
そう説明をして、エルフの男性が枝から枝へと飛びつつ降りて来ます。
「君はハーフエルフだね? 私はこの里で商人をしているタカッツというものだ。ほら、中はこんな感じだよ?」
──ガチャッ
いきなり建物の扉を開くと、中を見せてくれます。
「え、あ、あの、しきたりは?」
「祠の中に入ってはダメ。でも、建物の中については問題はないし、ほら」
そーっと中を覗きますと。
木造の建物の中には、小さな彫像や飾り絨毯が並べられています。
でも、これは私も見たことがない形の彫像で、人の姿をしたものから甲冑を着た騎士のようなものが、壁に備え付けられた棚に並べられています。
それに薬瓶もあちこちにあるようですし、何かこう、一種異様な雰囲気……にも感じられました。
恐らくは儀式に使われるものなのかもしれません。
そして正面奥にある、風化した石造りの壁と、そこに組み込まれた金属製の扉。その周りにいくつもの魔術印が施されていますから、あの扉の向こうが『勇者の祠』なのでしょう。
「んんん?」
中を見ていた柚月さんが、腕を組んで頭を傾げています。
「柚月さん、どうしたのですか?」
「いや、あーしの考えすぎだし。あのタペストリーとか彫像には、見覚えがあるような無いような気がするし?」
何か考えていますけど、勇者ゆかりの場所ということで柚月さんが知っているものがあったのでしょうか。
謎が謎を呼び始めました。
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