あらすじにある通り、とある一組の夫婦の
再構築失敗のお話です。
サレ夫である男主人公サイドがメインでストーリーは進みますが、男主人公が所々で話の最後に己の心情を独白します。これがまたとても切なくて悲しくて心に堪えます。
そして要所要所で入るシタ妻である女主人公視点の話が有ります、この女主人公がとんでもなくパンチの効いたキャラです。こちらは読んでいて(個人的に)殺意の波動に目覚めさせてくれそうな程です。
男主人公に感情移入して読んでいて心にダメージを受けたり女主人公の余りにも自分勝手な言動に怒りが湧いたりと、とにかく感情が揺さぶられます。そういった点から読み過ぎ注意と書きましたが、揺さぶられると分かっていても何度も読み返したくなる。そんな作品だと当方は思います。
「コイビト・スワップ」でハイクォリティなNTRざまぁを描ききった冷涼富貴さんの新作です。
浮気やNTRを扱った作品は数多くありますが、そこにある負の感情のリアルさ生々しさを描かせたら、私は冷涼さんの右に出る者は居ないと思います。
何故なら、浮気した者とされた者と間男とその周囲、それぞれがどのように考え行動するかを精緻にシミュレートし、物語とするその緻密さと考察の深みが他の追随を許さないからです。フィクション故の不自然な御都合や、芝居じみた嘘臭さのない、まさにもうひとつの、現実。
何をどう考えても挽回不可能な裏切りをしておきながら、頑なに離婚を拒否し、自己中心的に主人公に執着し未練がましくすがり続ける汚嫁、憤怒と消せない劣等感に苛まれ、体の健康までも損なう主人公、その周囲で無責任な言動を押し付ける者、その心の働き、変遷、そのメカニズム・・・・。
冷涼さんの深い人間考察に裏付けられた人の負の心の働きのそのリアルさと「これは確かにある!」と誰もが頷くその説得力に、ひたすら唸らされるのです。
そして作品に関し、誰もが語らずにはいられなくなる・・・・・・。
光明の見えない重苦しく、読んでいて強烈な怒りを掻き立てられるようなドロドロした話ながら、その劇的なまでに圧倒的なリアルは、一度見たら最後、読む者の心を釘付けにし、怖いもの見たさ的に惹き付けて離さない、そんな魔性の迫力と中毒性があります。
是非ご堪能下さい。
重いテーマやエピソードを、盛り込んだ怒涛のギャグでサラッと読ませる冷涼富貴さんの連載です。
「コイビト・スワップ」の作者様と言えば、ご存知の方も多いのではないかと。氏の他作品も概ね似たようなテイストで、ギャグ部分が読者を選ぶと思います。
それで本作、ですが。「コイビト〜」とは全く違い、全編シリアス。作品紹介、あらすじに偽りなしです、今の所。
ほぼ四面楚歌でスタートする主人公の境遇に、同情を禁じえません。胸糞なキャラクターの言動には怒りが湧きます。
「コイビト〜」のテンポの良さは少し抑えて、ギャグを排除した重さが読み手の心を抉ります。
氏のファンの方はもちろん、他作品で敬遠している方にこそ読んで欲しいなと。
ここまでギャグ抜きで、氏のメンタルが心配になる程の良作だと思います。