バウンダリ編 第31話 感涙
家に担がれたまま帰ってきて、しばらくして目を覚ましたじいさんは、しばらく呆然としていたがそのうち孫に負けたと泣いていた。
慰めようかと思ったが「ほう・・でかくなったな小僧・・・」とか「帝王は媚びぬ・・・」とか言い出したからそっとしておいた・・・頭は打ってないはずだけど・・・
ばあちゃんが言うには、嬉しかったんでしょうと言っていた。
その後も、「最後の試練だ父を倒し・・・」とか言ってばあちゃんに蹴られていた、すでに倒したし・・・じいちゃんだし。
その後も色々聞かれたが、守秘義務もあるし返答に困った、取り敢えず「ある豆を食べながら部屋にこもって2年ほど鍛錬した、こっちでは2日だけど」と言うと納得したようだ。
出かけていた父さんが帰ってきて、じいちゃんが暴走してそれを止めるため気絶させたと説明すると、父さんがよくやったと泣きながら飛びついてきたのだが反射的に膝が出てしまった「あっ」と思う間にみぞおちに決まったようで、うめきながらゴロゴロしている。
ほう、和人もKOしたのか、これで導人が一番だなと爺さんが嬉しそうにしていた、その後肩を貸しながら父さんとリビングに歩いて?引きずって行った。
「さて、導人の事だ、洗いざらい吐け」
父さんは、
「お父さん、なんのことでしょう?」
「あ゙あ゙っ、なめてんのか、俺は医者だぞ」
「どこかの組織の人間にしか見えませんが?」
「こんな善良そうな年寄りを、なんて言うことを言うんだ」
「はあー、色々あるんですよ、もう導人も中学生ですし」
「おめぇ・・・そんな当たり前のセリフで、ごまかせるとでも?」
劇画タッチでじいちゃんがにらむ
こめかみに、冷や汗を垂らしながら父さんは
「あー国と守秘義務の契約があって喋れないのですよ」
「くにぃ、守秘義務う? 公安にでも所属して、まさか全身機械にしたのか? まだ中学生なのに子供が作れないぞ!!」
「何の心配をしているんですか・・・中学生は子供を作っちゃいけません」
「なんで国が出てきて、なんで守秘義務なんだ、さっき言ったようにまだ中学生じゃないか、そんなものにかかわるような年じゃないだろう」
「いや・・・まあ、そうなんですけどね、関わらないといけないことになってしまって・・・」
「ちょっと待て」
とダッシュ
部屋でボーっとしていたら、じいちゃんにつかまった。
リビングに引きずってこられた・・・かかとが痛い、あっ靴下に穴が開いたばあちゃんに言いつけてやる。
「いや、やめて」
とっさにじいちゃんが反論
「なにを?」
「いやなんだか嫌な予感がして・・・」
「それで?」
「おおそうだ、国ってなんだ守秘義務って、その年でなんでそんなやばい組織に関わっているんだ」
「国がやばい組織って・・・ああ、まあそうかな?」
「何にかかわっているんだ?」
「あまり広げないでよ」
「お、おぃ」
お父さんがなんか焦っているけど、無視して身分証明書を取り出す。じいちゃんに見せながら、
「これ、僕の身分証」
見ると写真の横に所属 陸軍情報管理部と職名が特別技能職員[非常勤]と書かれている。
「なんでその年で軍人なんだ?」
「軍人と言っても、内勤の非常勤職員だから」
「でも普通・・・おかしいだろう?」
「実は、内緒なんだけど、軍学校高等部へすでに入学が決まっていて」
「なっ、まだ6月だぞ」
「うん試験は一応あるらしいけど、受ければいいだけで好きな科を考えておいてくれって」
「なんでそんなことに・・・」
「軍の青田買い?」
「・・・今ってそんなことになっているのか? 少子化のせいか?」
「んっ、なんで少子化の話になった?・・・違うその体のことだ、正月に会ったときには普通の中坊だった、なんで半年もしないうちにそんなにでかくなった」
「ああ5月の中頃に寝て起きたらこうなった、次の日病院にも行ったけど検査結果も異状はないし原因が不明だって」
「血液検査もしたのか?」
「うん、関係ありそうな甲状腺とかも異常はなかったって」
「一晩でか・・・」
「うん」
「かなり痛かっただろう」
「「えっ、じいちゃん・父さんもなったの?」」
父さんと声が重なった、ということは
「えっ、父さんもなったの?うちの血筋が原因?」
「いや俺の場合は多分別の原因だけどな・・・」
とじいちゃんが遠い目をしていた・・・絶対何かやったな?
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