第36話チャイナタウン
「はい、昨日彼女がライブに出るので見て
もらいたくて探していたそうです」
「そうなんだ」
一恵はジャネットのことを思い出して微笑んだ
「今、ジャネットに連絡をしてきてもらいます」
「はい、お願いします」
亮は病室から外へ出てジャネットに電話をして
一恵の状況を説明した
「美咲さん、毛染めかシャンプーの日本への
輸送のチェックは出来ませんよね」
「無理だと思う。何処から何処へ行ったかも分からない
それにもうすでに日本についているかも知れないし」
「そうですね。ではプレステージを探らなくちゃ」
「潜入捜査ね。危険だけど」
「はい、本当に危険だ」
ジャネットが病院の廊下を早足で
歩いてくる姿が亮の目に入った
「亮!」
亮は病室のドアを開けると一恵のベッドの脇に座った
「カズエ、大丈夫?」
「ああ、ジャネットありがとう。
あなたが亮さんに言ってくれなかったら私死んでいたわ」
「ううん、私と亮が知り合わなかったら」
二人は手を握り合って亮の顔を見た
一恵は退院の手続きを終えて
ジャネットが持ってきたジーンズとティシャツに着替えて
ジャイナタウンにタクシーで向った。
「あの、これ入院費の足しにして」
ジャネットがくしゃくしゃのお金、200ドル
を一恵に渡した。
「ジャネットいいのよ。ありがとう」
一恵は目に涙を潤ませながらジャネットに返した
「私、明日からまた働くから」
「ジャネット、その仕事辞めてください」
「でも・・生活が・・・」
「ジャネットはスターになる女性だから」
「えっ、私が?」
「そう、必ずなれます。だから僕が援助します」
「本当、でも亮の給料じゃ・・・」
「ジャネットは良い人ですね」
亮は自分の仕事を良く知らないジャネットが
気を使ってくれたのでうれしかった
「大丈夫です。安心してください」
「でも・・・」
「亮。私が説明しておきます」
一恵が笑いながら言うと
美咲も大笑いをしていた
チャイナタウンにレストランゴールドドラゴンに
タクシーが着くと小妹が玄関で迎えた
「待っていたよー」
「遅くなってごめん」
亮が小妹の頭を撫でた
「みんな来ているよ」
亮が大きな個室に入ると
シンディとケイト
モニカとスティーブ
尚子とロイ、千沙子と明日香
キャシーとブルックが席に着いていた
ジャネットと一恵と
美咲と亮、小妹が席に着くと
劉文明と王全櫂が入ってきた
二人はテーブルの一番奥の席に着くと
「初めまして、こちらがチャイナタウンのボス王全櫂です。
私は劉文光の息子、劉文明と申します」
ロイとキャシーは香港最大の企業の
総帥の息子の名前を聞いて驚いた
「そこの遠慮深い男は私の弟です」
文明が言っている弟の意味が良くわからないが
みんなが亮の方を見た
「未熟者ですが亮をお願いします」
全員で乾杯をすると中華料理を食べながら
亮はみんなを、一人一人紹介をして行った
「そういう事ね、ジャックが手を引いた訳」
キャシーが亮に輝いた目で近づいた
「はあ。僕は知りませんよ」
「うふふ。私はあなたに付いたお陰で未来が明るいわ。
今度ゆっくり二人で食事でも」
「ありがとうございます。でも僕は明日日本に」
「どうせ、またこっちへ戻るでしょその時ね」
「はい」
亮は色気ムンムンのキャシーが苦手だった
それを見ていたシンディは耳元で囁いた。
「亮、キャシーは苦手でしょ」
「はい」
「うふふ、こっちではああ言う女性は結構多いのよ」
「あはは、僕は日本人の方がいい」
「あら、一度お相手してあげたら、
夢中になったら何でもしてくれるわよ」
「本気でそう言っているんですか?」
「もちろん、亮の社会勉強よ」
そこへ一恵が来て文明に挨拶をした。
「こんばんは。私新村一恵と申します」
「こんばんは」
「お前に会わせたい男がいる」
文明がウエイトレスに合図を送ると
一人の男が入ってきた
それは背格好が亮に似た男だった
「亮、この男をお前の身代わりにしようと思う」
「はい」
「いつまでも逃げたヒーローで
後を追われたくないだろう」
「はい」
「それに、また命を狙われるかも知れないからな」
「はい、もし一文字がニュースを観ていたら
僕を探す可能性がありますね。
それに今回の乱射事件の犯人も目撃者として僕を・・・」
「そうだ、お前が了解したら、今日からこの男がヒーローだ」
「はい、でも大丈夫ですか?」
「ああ、外見はお前に似ていても
中身は中華料理屋のウエイターだ
実際にマスコミが取材しても
英語がしゃべれない中国人
じゃがっかりするだけだ。
熱もすぐ冷めるだろう」
劉文明はみんなに身代わり男を紹介し説明をした
「がっかりだわ、亮がヒーローになれたのに」
ジャネットがつまらなそうな顔をしていると
「良いんだよ、ビジネスをやる人間が
ヒーローじゃいけないんだ
ジャネット。亮は君だけのヒーローで良いだろう」
「そうか私だけのヒーロー」
それを聞いていたブルックが笑った
「それいただき。今度歌にしてみる。
ねえ、ねえスティーブ作曲して」
「OK」
だんだんみんなの話し声が大きくなった頃
「一恵さんこの人が四年前、
あなたを助けた三人組の一人ですよ」
「えっ、あの時の?」
一恵は文明に頭を下げた
「あの時はありがとうございました」
「いや、あの時は我々も助けてもらったんだ。亮に」
「我々も?」
「いいや」
文明は亮の顔を見て慌ててそれを否定した
文明は美しい女性達を目の前にしてご機嫌で
ブルックとスティーブが歌を披露すると
尚子も唄っていた。
文明はブルックと尚子を見てレコード会社買収の
話しに参加したいと言い出した。
中国人に欧米人の音楽を浸透させば莫大な利益が
入ってくる事を考えていたからだった
「でも、中国では相変わらず海賊版が出回っているんでしょう」
ブルックは中国の流通の事を気にしていた
「コピーガードを入れてダウンロード専用で
販売すれば良いでしょう。
スマフォはたくさん普及していますからね」
亮はブルックたちに言った
「さすが亮だな、コピーガードは?」
「MITの友達が凄いのを作ったと言っていました」
「OK、その権利を買おう」
「はい」
「中国でそのコピーガードを入れないとダウンロードが
出来ないように法律を作る」
「作るって?」
ブルックが驚いていると
「劉翔記という僕達の兄弟分の男が
中国の政治の中枢部に居るんです」
「凄い国ね」
「はい、だから中国は力のある人が儲けるんです」
ブルックたちはただ驚くだけだった
「これでスタジオDの中国進出が楽になったわね」
シンディが亮の肩を叩いた
「はい、分かっていたんですが。
文明に頼むのが気が重くて」
「あら、そう。良いじゃない。
六本木あたりにビルを買って貰ったら」
千沙子が言うと亮は首を横に振った。
「駄目だよ、本当に買っちゃうから」
「それ良いじゃないか?」
文明が亮を指差して言った
「亮、ならどうする?」
「そうですね、レコード会社を
作ったらそのビルにホールを作って
所属歌手で毎日ライブをやります」
「なるほど、それはいい」
「それと昼間は毎日音大生の
無料クラッシクライブをやって
母親と子供達が音楽に親しみを持つようにします」
「OK、すぐにやろう」
「亮、私も賛成」
ブルックもジャネットもキャシーも賛成した
「日本では歌手の所属するマネージメントプロダクションと
レコード会社と契約するという複雑な形になっているので
歌手個人の利益が少なくなっています。
もし日本でやるなら原点に返ってレコード会社の
マネージメントをしてもっとレベルの
高い音楽を作りたいですね、
それと海外のアーティストを呼ぶときもギャラと
舞台セットが費用がかかりすぎて、入場料も高くなっています」
「それは聞いた事があるわ、日本はギャラが高いって」
ブルックがうなずいていた
「なるほど、亮がんばれよ」
文明が命令口調で言った
「ああ、言うんじゃなかった、また仕事が増える」
亮は落ちこんでいた
「どうだね、うちの料理は?」
王全櫂が亮の肩を叩いた
「美味しいですとても」
「あはは、亮。文明が言っていた通りだ。
君は周りの人間をみんな仲間にしてしまう男だ」
「ありがとうございます。僕はさびしがりやなもので」
「そうだ仲間は大勢居た方がいい。あはは」
王全櫂はとても亮が気に入って自分の息子のように
愛おしく思っていた
「文明、あいつは面白い。私も微力ながら彼を応援するぞ」
「ありがとうございます。大人がいれば鬼に金棒です」
「尚子さんどうします?」
「亮が居れば大丈夫、私日本に帰るわ。出来たら
日本のアメリカで仕事がしたい。欲張りかな?」
「いいえ、音楽に国境はないですから」
「でも、みんな家族みたいで」
「そうですね」
「大丈夫?ロイと文明がガブ飲みしていけど・・・」
「ロイはともかく、文明は強い」
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