第28話乱射の後

「殿、大丈夫ですか?」

「大丈夫です、美喜さんは止まっている車の確認」

「小妹は倒れている男に止めと拘束」

美喜は手裏剣を持ったまま男たちの

車に向かった

亮は倒れている通行人のところへ

駆け寄り怪我をしている人に

応急処置を施して行った。


最初に太ももから出血している女性のドレス

をまくり上げ太ももを自分のネクタイで

止血のために絞りあげた。


次にすぐそばにいた男性の腕をハンカチで

男性の膝下を男性のネクタイを外して縛った。

「大丈夫ですか?」

「妻を見てくれ」

「深大腿骨動脈を切っている可能性が

あるので強く止血しました」

「ありがとう」

「救急車を呼んであるので大丈夫です」


脚を撃たれた体の大きい

男性のところへ行って容態を見た。

「やばい」

亮はすぐに男のベルトをはずし

ズボンを脱がせ

「太股から出血している」

出血している箇所の上を締めて止血した


亮はその他転んで怪我した女性、腕を切った男性

転んで足を捻った女性を容態をチェックして

行った。

「美喜さん犯人の車は?」

「逃げました」

「小妹、捕まえた三人は?」

「死んだ」

「何?」


「殺されたんだよ。車に乗っていた

マシンガン持っていた男に撃たれた」

「そんなに簡単に仲間の命を・・・」

「亮、通りを見て!狙われたのは亮じゃないよ」

路上に残った銃弾の後は一方向を向いていた。

「大変だ!」


救急車到着すると亮は隊員に

症状のひどい女性を指さした。

「こちら意識レベル300、大腿骨動脈に損傷が

あるとみられ大変危険です」

「わかった」

救急車は患者を乗せて走り出した。


そこへ来た警察が亮に声をかけた。

「君は?医者か?」

「いいえ、救急救命士の資格を持っています」

「そうか、ありがとう。署へ行って

状況を説明してくれないか」

警察官は亮の肩を叩いた。

「わかりました」


「小妹、余計な聴取があるから美喜さんと

姿を消してくれ」

亮は特殊警棒を小妹に渡した。

「了解、気を付けて」

詳しい状況の説明を求められた亮は

パトカーに乗りWest 54th Streetにある

ミッドタウンノース分署に着くと

ガラス張りの部室に入った。


亮は警察官に出来るだけ多くの情報を伝えるために

自分の脳の中に記憶されている映像を思い出していた。

「運転手は小太りでメガネをかけて、

撃っていたのはひげを生やした男です

車種は黒のGMC・ユーコン5.3ℓ、2014年型。

車のナンバーは○○○○、北に向って逃げました」

「ずいぶん詳しくわかるな」

警察官はメモを取った。


「使った機関銃はM27IARは海軍仕様だから

 犯人は海軍と何か関係があるんじゃないでしょうか」

「おい、馬鹿にしているのか。

あの状況で機関銃の見分けが

つくわけがないだろう」

「いいえ、使った事があるのでわかります」

「使った事がある?日本人が?あやしいなお前」

警官は電話をかけて刑事を呼んだ。


「早く非常線を張って下さい、

早くしないと逃げられてしまいます」

亮が立ち上がると「黙って座っていろ!」

亮は無理やり椅子に座らされた。

そして身体検査をするとパスポートと

小切手帳を見つけた。


「ん、いつアメリカに来た」

「4月5日にボストンに着きました」

「どこにも入国スタンプが押していないぞ」

「細かい事気が付くなあ」

亮は笑いながら囁いた。

亮はしょうがなく椅子に座って

両手を膝に上に乗せた

そこへ刑事が入って来て亮の顔を見ると

驚いていた。


「ん?あんた昼間に」

「はい」

刑事は先ほど、美咲と一緒に出動していた

ニューヨーク市警のパーカー警部補だった。


原美咲の関係者である事を知っていた

パーカー警部補は慌てて

事情を聞いていた警察官を叱り

亮の言っていた車種とナンバーをメモに取り

指示をした。


「すぐに手配だ」

パーカーは部室を出ると

司令室に入っていった


「すみません、電話をして良いですか?」

「もちろんです。どうぞどうぞ」

先ほどの警察官は手のひらを返すように

愛想が良くなっていた。


亮は美咲に電話をして、事件の事と

今拘束されている事を伝えると

美咲は心配して言った

「今、そっちへ行くわ」

「お願いします」


亮はその間に尚子に電話を掛け

事件の説明をした。

「亮、大丈夫?」

「はい、大丈夫です。今日は警察署を

出られないかもしれません」

10分ほどで美咲は警察署に着き

亮の居る部室に通された。


「大丈夫?亮」

「はい、今パーカー警部補が

緊急手配してくれました」

「美咲さん犯人の似顔絵を描きます」

「似顔絵の担当の人を呼んでもらうわ」

「いいえ、僕が自分で描きます。

画用紙と鉛筆を借りてください」

「わかったわ」

美咲が画用紙と鉛筆を借りて持ってくると

亮はすぐに描き始めた。


「彼は犯人の持っていたマシンガン型式を

言っていたそうだ。彼はホラ吹きか?」

絵を描いている亮を見ていたパーカー

警部補は美咲に聞いた。

「違うわ、彼は常人じゃないの、

一度耳や目から入った情報は

 決して忘れないのそれがたった1秒でも」

「まさか」

パーカーはまったく信じられない様子だった。


亮は10分ほどで似顔絵を四枚描き上げると

パーカーに渡した。

「早い!上手い。しかも正面と横顔だ」

亮は運転していた男とマシンガンを撃っていた

男を分けて説明をし、最後に美咲に向って言った。

「目つきが少し変だったから覚せい剤を

やっていたかもしれない」


「そうね、銃の乱射事件の犯人の

ほとんどは薬をやっている」

「許せない」

「ところでマシンガンの話なのですが」

パーカー警部補が亮の脇に座った

「はい」

「本当にM27IARですか?」

「はい、間違いありません」

「M27IARは・・・」


「はい、アメリカ海軍仕様です」

「わかりました。調べてみます」

パーカー警部補は似顔絵をスキャニングして

手配すると共にデータをFBIに送った。

「テロリストかも知れないので

FBIに似顔絵を送りました」

美咲と亮に状況を伝えた。


「もう一度順を追って話しますと車が1台

マシンガンを撃ちながら走ってきました。

車は通り過ぎて三人が降りてやってきました。

その後、三人は射殺されて

車は去って行きました」

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