第460話
半端者達が住む場所で『悪魔』が現れたと報告を受け、常駐している兵士に命じ、討伐隊以外に冒険者も集めて差し向けたが、別に半端者達がどうなろうと知った事では無いが、悪魔を討伐出来ればその素材を手に入れ、その売却で大金も入るだろうし、悪魔を討伐したとして名声も高まる。
大昔、この町が出来たくらいの頃に悪魔が現れ、この町の戦士達が命懸けで戦って大勢が散り、その時の町長と戦士達の一部が龍山に住む龍に懇願して撃退し、それ以来、この町では龍山の龍を神の如く崇めているという御伽噺があるのだが、実際は龍は来ていないのだろうと思う。
龍は気位が高く、我々が願った所で力を貸してくれる訳が無い。
まぁ龍山が近くにあるから、昔から畏怖を籠めて、龍を信仰しているだけだろう。
そうして書類仕事をしていたら、討伐に向かった兵士達が戻って来た。
意外と早く戻って来たが、昔と比べれば技術も装備の質も上がっているから、討伐せずに撃退でもしたのか?
そう聞いてみると、兵士がバツの悪そうな表情を浮かべた。
「な、なんだとぉぉっ!?」
報告に戻った兵士が言うには、冒険者ギルドで戦力を揃えて向かったが、到着した時には悪魔は既に討伐されて解体され、冒険者ギルドは『研究の為』と言う名目で触手の一本を手に入れていたが、我々も何とか手に入れようと交渉したが、冒険者ギルドと違って正当な理由が無いだけでなく、普段から彼等を冷遇していたのもあって取り付く島も無かった。
だが、このままだと彼等が悪魔の素材を持って出て行ってしまう。
今更、彼等の追放を撤回する訳にもいかないのだが……
どうするか悩んでいると、また別の兵士が執務室に飛び込んで来た。
一体どうしたのだ?
「た、大変です! りりりりり、龍が!」
龍?
龍が一体どうしたのだ?
「龍山より、龍と
兵士の言葉を聞き、慌てて執務室の窓に駆け寄って龍山の方角を見てみると、確かに何かが此方に向かって来ているのが見えた。
しかし、私の頭の中では別の事を思い付いてしまった。
昔の我々は弱く、悪魔を討伐出来ずに多くの犠牲を払って撃退するしか無かったが、今の我々なら十分に勝てる筈である。
ならば、討伐出来なかった悪魔の代わりに……
「部隊を準備せよ!」
私は、思い付いた事を実行する為に、兵士にそう命じ、私自らも壁に掛けていた直剣を手に取った。
部隊を引き連れ、龍山より飛来した龍と翼竜を斥候兵に確認させると、龍達は町から少し離れた場所に着地し、何やらやっているが気にするべきはそこでは無い。
その龍の周りに、追放予定の半端者達が集まっているらしい。
まさか、町から逃げようとしていた所を襲われているのかとも一瞬考えたが、報告を聞く限り、どうにもそう言う雰囲気ではなく、寧ろ困惑している様子らしい。
まさか、御伽噺の様に、偶然やって来た龍に願って町に復讐でもするつもりかとも考えたが、そんな事を気位の高い龍が了承する訳が無いと頭を振った。
だが、今はそんな事はどうでも良く、寧ろ一緒にいるなら、龍達も半端者達も纏めて始末するのに丁度良い。
「よし、武器を構えよ!」
「本当にやるのですか!?」
私の命令に、一緒に付いて来た部隊長がそんな事を言っているが、何時までも龍山の龍達に怯えて暮らすのも、今日が最後となるだろう。
昔なら確かに敵わず怯えるだけだったが、今の我々は昔よりも遥かに強く、大賢者様が考案された武器や防具も支給されているのだ。
そう言った私の後ろにいる部隊の一部は、見慣れぬ筒と材木を合わせた奇妙なモノを持ち、革鎧とも違うマダラ模様の服装の者達がいた。
戦線ではコレが大活躍しており、多くのクリファレス兵を討ち取っているらしく、私も中央の知り合いから何とか融通してもらって手に入れ、今まで訓練をさせて来たのだ。
大賢者様曰く『もう剣やマホウの時代は終わった』と仰る通り、その威力は凄まじいものがあった。
「確かに、威力や射程は凄まじいでしょうが、本当に龍に通じるのでしょうか?」
例え通じなかったとしても、他にも武器はあるのだから、何の問題も無い。
しかし、何も分からず一方的に討伐されるというのは、余りにも憐れだとも思い、彼等にも技術の進歩とやらを思い知らせてやるとしよう。
そう思い、私は合図を決めてから数人の部下を連れ、彼等の元へと悠々と向かった。
町から少し離れた所に着地したんじゃが、まぁやはりというかやっぱりと言うか、この集団は遠くからでも目立つからのう。
着陸と同時に町の方からベヤヤとムッさんがやって来て、『何を考えてんだ』と怒られてしもうた。
しかし、時間も無い以上、この手こそが最善だと思ったんじゃよう。
そう説明し、今回の計画をベヤヤ達にも話したのじゃ。
ワシが作った『飛空艇』は、移住する民達全てを一度に運べるだけの余裕は無いし、往復して運ぶには相応に時間が掛かる。
かと言って、のんびりやっておれば、帝都に残しておる兄上達の用事が終わってしまえば、それだけ待たせる事になって迷惑も掛かるし、移住民達が独自に移動を開始すれば、あの町長の事じゃから、道中で口封じでも考えておるかもしれん。
ならばどうすれば良いのかと考えた際、確実に『シャナル』に安全に向かう事ができ、尚且つ、絶対に安全な相手に依頼すれば良いと思い付いた訳じゃ。
そうして思い付いた相手こそ、この異世界でも有数の最強生物である龍種であり、信頼も出来る神獣の『黄金龍』殿じゃ。
『黄金龍』殿に先導と護衛を頼み、
その為に、ワシは『短距離転移』を繰り返して龍山に向かい、『黄金龍』殿と交渉して無事に成功した後、移住民に乗ってもらうゴンドラの様な大型の箱を作成。
ゴンドラ一台に4家族程度、15人程が乗り込み、そこで数日間生活出来る様に内装を整えたのじゃ。
それこそ、ベッドからテーブル、厠に水場と、何ならこのままでも十分に生活可能。
これ以外にも、ゴンドラ自体には防寒に防護結界、もしも途中でゴンドラが落ちた場合も、『浮遊』が発動してゆっくりと高度を落としていき、内側から扉を開ける場合、安全の為に扉から離れた所にロック解除の宝玉が入った筒を3ヶ所設置し、筒の中にある玉を下側に開いておる穴から手を入れ、上に押し上げる事でロックが解除される仕組みとなっておる。
まぁ緊急の場合、『黄金龍』殿がぶっ壊して救助するんじゃがね。
そして、このゴンドラは魔道具となっており、運ぶ翼竜達のマナを使用して機能を維持する様にしており、もしもマナの供給が途絶えても、搭載しておるマナバッテリーによって一日は余裕で過ごす事が出来るのじゃ。
という訳で、移住予定の皆を呼んで来てもらったんじゃが、まぁ『黄金龍』殿達を見て、半分近くの住民達が卒倒してしもうたが、ちゃんと交渉した結果、協力してくれると言う事を説明し、ゴンドラに案内して内装の使い方を説明。
そこまで操作は難しい物では無いんじゃが、『シャナル』までは少なくとも数日は掛かるので、必要になるであろう食糧も渡すのじゃが、流石にゴンドラの中に竈を付けて、火事にでもなったら大惨事になるので、調理器具はお湯を沸かす程度のポットの様な物しか付けておらん。
なので、お湯だけで調理が出来る料理をベヤヤに考えてもらって、それを大量に『
そうして、ケリタ殿達に内装の使い方や注意点を説明しておったら、何やら物々しい連中が近付いてくるのが見えたのじゃ。
その先頭におるのは、無駄に豪華な装備に身を包んだあの町長なんじゃが、左右におるのは護衛のつもりなんじゃろうけど、町の近くで隠れておる連中に気が付いておらんとでも思っとるんじゃろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます