第24話 アルテミス

「“経験値君”。ありがとうッス。お陰で、レベルがカンストしたッス。」


“経験値君”を削りに削った結果、カオス・オブ・カオスのレベルが上限に達した。


【カシム=オーウェン】

人族/11歳/レベル20(Max)/経験値―

カオス・オブ・カオス

/成長率SSS

HP:168/168

筋力:70(20UP!)※職業上限

魔力:90(20UP!)※職業上限

防御:70(20UP!)※職業上限

速さ:75(15UP!)※職業上限

わざ:75(15UP!)※職業上限

武器:封印の魔道書(∞)、インセクト(6)、ミスリルナイフ(35)、パラライズ(8)、

防具:魔導士の服、魔導士の鎧、鑑定の腕輪、収納鞄、従魔の指輪、鑑定阻害の指輪、天使の指輪、朱の宝玉

スキル:エリート(経験値10倍)、秘奥義:生命吸収(与えたダメージの1割回復:パッシブ型)、秘奥義:カオティックセレモニー(任意の魔法を生け贄不要の儀式魔法に変換する:1日1回限定:アクティブ型)、奥義:深淵の光(防御・魔法防御・防御系奥義無視の攻撃:1日1回限定:アクティブ型)、奥義:カオスペリース(状態異常・即死攻撃無効、HP回復、ダメージ2割軽減:パッシブ型)


…ノーマルモードのラスボス並みのステータスになった。…


「さて、“経験値君”をどうするッスかね?このまま倒すか、装甲を剥いで小さくしてから”捕虜”にするか、どっちが良いッスかね?」


『………。』


「盗賊のお陰でお金には困ってないッスから捕虜にするッスかね。確か、額にある赤い宝石みたいなのがコアだから、首を斬って適当に装甲を剥がせば持ち運びできるッスかね。」


ゴロンッ―


“経験値君”が仰向けになって、潤んだ瞳で見つめてきた。


『…クゥゥン。』


≪→従魔にしますか?はい/いいえ≫


… …。…


「お前、従魔になりたいんスか?っていうか、従魔にできるんスか?」


ブンブンッ―


“経験値君”は仰向けのまま、嬉しそうに尻尾を振る。


『ワンワンッ!』


…なぜ、犬の鳴き声…?…


「ドラゴンの見た目で、犬の鳴き真似すると違和感ありまくりッスね…。まぁ、拒否する理由は無いッスか…。良しッ!お前の名は“経験値君”ッス。」


―ブッブゥ〜―


≪【注意】相手が名付けを拒否しました。≫


メッセージが流れると、“はい”の選択肢がグレーアウトした。


「も、もしかして、“経験値君”って名前が気にくわなかったッスか?」


『ワンワンッ!』


「はぁ、この世界の従魔は名前にうるさいッスね。」


『ワンワンッ!』


「………。わかったッスよ。名前は“任せる”ッス。」


名付けを撤回すると、グレーアウトした部分がもとに戻り、改めて“はい”を選択するとドラゴンゴーレムの体が輝き始めた。


『ワオォォォォンッ!』


ガタッ…ガタッ……ガタッ…―

ゴトッ―

ゴトッ―


…なんか、“経験値君”が崩れ落ちていく…。


光がやむと、ドラゴンゴーレムから装甲が剥がれ落ち、小型のドラゴンに変化していた。


≪“アルテミス”が従魔になりました。≫


…まぁ、色々と深くは考えないでおこう。…


「よろしくッス。アルテミス。ちなみに、この剥がれた装甲はもらっても良いッスか。」


『ワンワンッ!』


………

……


“アルテミス”を連れて戻ると、オババが呆れ顔で出迎えた。


「ヒャヒャ。一緒になってレベリングをしているワタシが言うのもなんだけど、一ヶ月以上も不眠不休でレベリングを繰り返したなんて、かなりイカれているよ…。はぁ、それに、なんてモンを従魔にしてんのさ…。」


簀巻きにされているグレイスがモゾモゾ蠢きながら同意の声をあげる。


「そうなのじゃッ!そうなのじゃッ!」


ブスッ―


『黙りなさい。』


レイピア型毒針がグレイスの尻に突き刺さる。


「いたいのじゃッ!やめてたもう。おいッ!ポンコツゴーレムッ!妾を助けるのじゃ。」


グレイスの叫びに不快感を感じたアルテミスが唸り声をあげる。


『グゥゥゥッ!』


アルテミスの口にエネルギーが集束されていく。


キュイン―


『ヴァンッ!』


集束されたエネルギーがグレイスに向けて放たれる。


カッ―


ジュゥッ―


エネルギーが弾けて軽い閃光が放たれると、グレイスの髪の先端を焦がした。


「熱いッ!熱いのじゃッ!か、髪の毛を焼くのはやめるのじゃッ!寝返るとは、ゴーレムの風上にもおけないのじゃッ!やはり、お前はポンコツなのじゃッ!」


『ヴゥゥゥッ!』


グレイスの言葉に装甲を逆立てて怒りをあらわにしたアルテミスが、口を大きく開けて、前よりも大規模にエネルギーを集束し始める。


キュィィィィィィィィン―


…デカッ…。これ、まんま魔導砲じゃん。…


集束されたエネルギーのあまりの大きさにグレイスの表情が青ざめていく。


「や、やめてたもうッ!わ、妾が悪かった。この通りじゃ。」


『フン。』


ゴクンッ―


アルテミスは鼻をならした後、集束したエネルギーを飲み込んだ。


「おおッ!やっと自分の役割を思い出したかッ!ポンコツッ!ほれっ、そこの小僧に魔導砲を放つのじゃッ!」


アルテミスは口を僅かに開ける。


『ワフッ!』


ジュゥッ―


小さなレーザーがグレイスの髪を焼きながら頭皮ギリギリを通過した。


「ぐわぁぁぁぁぁッ!妾の、妾の髪がぁぁぁぁぁッ!」


ブスッ―


『黙りなさい。ハゲ鷹。』


「は、ハゲじゃと…。な、無いッ!妾の髪が根こそぎ無い部分があるぅぅぅぅッ!う、うわぁぁぁぁんッ!妾の頭皮がハゲ散らかっているのじゃぁぁぁぁぁッ!」


『ワオォォォォンッ!』


カッ―


ジュゥッ―


「はぁぁぁっ!また、ハゲが増えたのじゃぁぁぁぁぁぁッ!」


…これが本当のカオス・オブ・カオス。…

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