第74話
「到着デス」
チンと鳴って扉が開く。気のせいかテンポが速い。
せっかちなコだな――と思いつつエレベーターを降りる。無機質な通路に見覚えがあった。ほっとする。
確か右から来たはず……。
記憶を辿って歩き出すと、遠くに光るものが見えた。近づくにつれ、それがドアの底辺に沿ってつけられた細長い照明だとわかった。どうやら合図として光っているらしい。ちょうど記憶にあるのと同じくらいの歩数でその場所に着いた。きっとここが五二四八七だ。
念のため、何かしらの表記がないかとドア全体を丹念に眺める。やはり何もない。だからここが自分の部屋だという確信は持てない。しかし合っているなら、手で触れるだけで開くはず。
安治は片手を上げ、わずかに躊躇った。触ってみて、もし開かなかったらどうしようと思ったのだ。
もちろん、開かないなら、どうしようも何もない。最悪、ミッション失敗だったと項垂れて図書室に行けばいいだけだ。たま子に話せばどうにかしてくれるだろう。
それだけの話なのに、開かなかったらどうしよう、などと怯えてしまう。推測が外れた際のショックをわざわざ先取りして恐れてしまう。
――無駄だ。
反省や後悔なら事後にすればいい。起きる前にするなんて馬鹿げている。
もっとも事前にいつもリスクを想定できるなら万全を期せるはずで、失敗はしなくて済むはずなのだが。でも実際、失敗もするのだ。
起こる前に恐れて、起きた後に後悔する。二重でダメージを受ける。
――どうせ失敗するなら、せめてどっちかで済ませないものか。
本当に自分は無駄な思考をしている。馬鹿だと思う。
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