第5話 「俺、容疑者?」
気がつくと殺風景な山小屋のような建物の中で手足を拘束されていた。
「こいつ、気がついたぜ」
見ると20代くらいの若い男が2人いる。
一人の男がスマホのニュース画面を見せてきた。
「君さあ、殺人犯にされてるよ」
ニュースの内容は
「今朝がた軽井沢の別荘で東京の会社社長の妻が自身の所有する車のトランクで死体となって発見され、容疑者として浮上した不倫相手の男を重要参考人として行方を追っている」
というもので、防犯カメラ映像に移るパーキングの写メや軽井沢で楽しくショッピングする様子に加え、目撃情報も続々寄せられていた。
「安心しろ!オレたちも指名手配犯だぜ」
と別のニュース画像も見せてきた。
「昨日都内の貴金属店に強盗が入り、店を襲った二人組は現在も逃走中であり、闇バイトによる犯行とみられる」
画面には店内で暴れる目出し帽をかぶった二人の様子が映し出されている。
そして二人の目線の先には盗品が入ってると思われる黒いリュックが。
彼らは指示役の命令どおり在来線とバスを乗り継いで軽井沢までやって来たところ、道端で倒れている修を拾って、この山小屋まで運んで来たそうだ。
お人よしなのか、お互い”手配犯”という共通項のせいか、拘束も解かれ妙に打ち解けていくノープランの3人は、これからの逃走経路を調べ始める。
報酬はいくら貰えるのか知らないが、高額報酬や闇バイトなどはろくなことにならない!と先輩ぶって諭した。
俺たちは指名手配の順番から二人を「1番」「2番」そして俺が「3番」と呼び合うことにした。
俺は殺したのは園田だと確信している。
そして俺が乗せてきた女はやはり替え玉であり、まんまと不倫相手に仕立てられたんだ。
あの人前での馴れ馴れしさや二人きりの時の冷たい態度も納得がいく。
しかし高速入口の検問ではトランクはカラだったはずなのに…なぜ?いつのまにトランクに…?
すると1番の携帯が鳴り、指示役からの連絡が。
「今、受取役がそっちに向かってるからそこで待機しろ」
すると2番が
「指示通りにしないと殺されるかもしれないから、関係無い3番は小屋の外で待ってくれ」
というので、俺は小屋の外に出て雑木林の中に隠れた。
しばらくすると見るからに悪そうな大柄の男が一人で山を登って来て、小屋に入っていった。
5分もたたないうちに例のリュックを持って出てくると、入口に南京錠をかけ鍵を修のいる林の中に投げ捨て山を下りて行った。
小屋の窓から煙が出ている!
1番、2番を閉じ込めて小屋ごと処分するつもりなんだ……。
鍵を探し出し小屋を開けると1番は背中を、2番は腹を刺され血を流して床に倒れている。
すぐさま1番、2番を小屋の外に引きずり出し、手配中にもかかわらず119に電話してしまった。
やがて消防のサイレンの音が聞こえてくると
「ありがとう3番、こんなオレたちを助けてくれて…。
オレらは警察に自首するけど、3番はこのまま逃げてくれ、人殺しはしてないんだろ?」
と2番がかすれた声でつぶやくと
「山の上に向かって逃げろ……。」
と1番が小屋の裏山を指さした。
俺は振り返らずに走った。
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