第13話 ユニバースランド①

「パパ見て見て、この前の懸賞2等が当たったよ」


「おいおい、マジかよ。まさか本当に当たるなんて……」


 リビングにいた俺は開封済みの封筒を握りしめて嬉しそうに駆け寄ってくる夏海ちゃんを見てそうつぶやいた。

 夏休みが始まる数ヶ月前、夏海ちゃんとスーパーへ買い物に行った時に3000円以上購入で豪華景品が当たるという懸賞に応募したのだが、どうやら2等に当選してしまったようだ。

 ちなみに1等がハワイ旅行で2等は遊園地ユニバースランドのアトラクション乗り放題の入場チケットとなっており、夏海ちゃんは申し込む時から2等を欲しがっていた。


「俺もあと少しで連続休暇に入る予定だし、せっかくだから家族揃って行こう」


「いいわね、そうしましょう」


「ちょうどお父さんが連休のタイミングで部活も休みの時期に入るから賛成よ」


 封筒に入ったチケットを見つめながら父さんと母さん、凛花はそんな事を話している。


「遊園地だ、やったー」


「夏海ちゃん、良かったな」


「また皆んなで日程調節しましょう」


 こうして俺達は近々遊園地へ遊びに行く事が決定した。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「やっと着いた、夏海もう待ちきれないよ」


「ああ、ようやく遊べるな」


 俺達は朝早くに父さんの運転する車に乗り込み出発して、何時間も乗り続けてようやくユニバースランドへと到着したのだ。

 嬉しそうな夏海ちゃんに俺は手を引っ張られて家族5人はユニバースランドの入り口まで歩いていく。

 そして懸賞で貰ったチケットを係員に見せて入場ゲートをくぐると大きな観覧車やジェットコースター、メリーゴーランドなどが視界に入ってきた。


「予想はしてたけど、めちゃくちゃ沢山人がいるわね」


 凛花がそう口にするようにユニバースランド内は家族連れやカップルなど、たくさんの人で溢れかえっている状況だ。


「夏海、メリーゴーランドに乗りたいな」


「夏海ちゃんが行きたがってるし、そうしようか」


 パンフレットを見ながらどこへ行くかを話しながら歩く俺達だったが、夏海ちゃんがそう言い出し父さんも同意したためまずメリーゴーランドへ行く事が決定した。

 そしてメリーゴーランドの乗り場に到着したわけだがあまり人気が無かったのか他の人気アトラクションよりもかなり空いており、すぐに乗る事ができそうだ。

 少しの間待っていると俺達の番となり、夏海ちゃんは大喜びでメリーゴーランドへと乗り込む。

 俺と凛花も一緒に乗るが、父さんと母さんは乗らずに外から写真を撮ろうとしているようだ。

 それから音楽に合わせてメリーゴーランドは回り始めるのだが、夏海ちゃんはかなりはしゃいでいる。


「メリーゴーランドに乗るのなんて久しぶりだよ」


「遊園地自体が久しぶりな気がするわ」


 隣の馬に座っている凛花とそんな会話をしているうちにメリーゴーランドは終了の時間となった。


「次はコーヒーカップに行きたい」


「よし、行こう」


「私は酔いそうだからお父さんとお母さんと一緒にお兄ちゃんと夏海ちゃんの様子を外から見てるね」


 そんな雑談をしながら5人で並んで歩いているとコーヒーカップの前まで到着した。

 先程と同様待ち時間はあまり無く、俺と夏海ちゃんは係員のお姉さんにコーヒーカップの座席まで案内される。


「わーい、コーヒーカップだ」

 

「あまりハンドルを回しすぎるなよ。やり過ぎると目が回って気分が悪くなるかもしれないからな」


「分かったよ、パパ」


 しばらく待っているとコーヒーカップが動き出し、夏海ちゃんがハンドルを回す。


「見て見てパパ、世界が回って見えるよ」


 夏海ちゃんは気分が悪くならない程度にハンドルを回し続け、それと連動してコーヒーカップもくるくると回り続ける。

 それに合わせて周りの景色も次々と移り変わっていくので、ハンドルを回さずにただ座って見ているだけでもそれなりに楽しめた。


「パパも一緒に回さない?」


「そうだな、俺もちょっとだけ回してみようか」


 夏海ちゃんからそう勧められたため俺も一緒にハンドルを回し始める。


「わー、早い早い」


「結構楽しいな、これ」


 久々に乗ったコーヒーカップは思ったよりも楽しかったため、俺はハンドルをノリノリで回していく。

 俺と夏海ちゃんは終わりの時間が来るまで、2人で仲良くハンドルを回し続けて移り変わる景色を楽しんだ。


「楽しかったな」


「うん、次は何に乗ろうかな」


 夏海ちゃんはパンフレットを見て嬉しそうに目を輝かせながら次は何に乗るかを考え始めていると、突然後ろから声をかけられる。


「あれ、ひょっとして和人君と夏海ちゃんじゃない?」


「えっ、恵美じゃん。どうしてこんなところに?」


「あっ、恵美お姉ちゃんだ」


 なんと俺達に声をかけてきたのは家族と一緒に来ているらしい恵美だった。

 話を聞くと、どうやら恵美もスーパーで買い物をしてユニバースランドのチケットがたまたま当たっていたようで、家族のお盆休みのタイミングを使って偶然今日家族と遊びに来たらしいのだ。

 父さんと母さんは恵美の両親と親しげに話し始めており、俺と夏海ちゃん、凛花は恵美と話している。


「せっかく恵美ちゃんに会えたんだから子供同士4人で回って来なさいよ。私達は恵美ちゃんのお母さん達と回るからさ」


 母さんからの提案で俺と夏海ちゃん、凛花、恵美の4人でユニバースランドを回る事になった。

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