第25話 初めてのレベル上げ③
※※※
この日の晩は、料理が今までの倍くらい
「……あの、トウリさん?」
「
「……えっと、トウリ?」
「美味い——ふんぐっ!」
「うわあっ! 水、水!」
……んぐっ……んぐっ……ぷはあっ!
「……ありがとう、グウェイン」
「いや、いいんだけどさ……その、気を落とさないでね?」
「そうですよ、トウリさん。なんでもすぐにできる人なんていないんですから」
……くっ! 二人の優しさが、胸に刺さるよ!
「そうだよな。……うん、ありがとう、二人とも」
そう口にしたものの、なかなか普段思った通りにはいかないものだ。
そんな俺を見かねてか、アリーシャが明るい声で話し掛けてきた。
「で、でも、今日はブルファングを相手にしたんですよね? あの魔獣、皮膚は硬くて弾力もありますし、仕方がないと思いますよ!」
「……そうかなぁ?」
「そうですよ! 今日はさらに二匹に襲われたって聞きましたし、今度こそミニファングを——」
「ミニファングは無理! むしろ、ミニファングの方が無理だから!」
「……えっ? ど、どうしてですか?」
「どうしても何も……可愛すぎるんだよ! うり坊なんだよ! 俺には無理ですよ!」
「これだよ、これ」
「これとか言うなよ、グウェイン! だって、可愛いだろ? そう思わないのか、お前は!」
俺はここでミニファングの可愛さをこれでもかと語っていった。
俺は都会っ子だったから生でうり坊を見たことはなかったけど、テレビに映るあの愛くるしさには目を奪われたものだ。
まあ、基本的に可愛いものが好きだっていうだけなんだけど、そのせいでこの世界のミニファングを殺せなくなるとは思ってもいなかった。
そして、俺が語り終えたのと同時に二人の口から飛び出した言葉は——
「「でも、魔獣ですよ?」」
「そうなんだよねえぇぇーっ! 結局は魔獣なんだよねえぇぇーっ!」
うん、魔獣だから倒さないといけないのもわかるんだよ。最終的にはブルファングになって、今の俺では手も足も出なくなるんだからね。
「それでも、可愛いのは尊いのよぉ」
俺がグスグスしていると、ポンと手を叩たたいたアリーシャが一つの提案を口にしてくれた。
「でしたら、ヌメルインセクトを倒せばいいのでは?」
「……ヌメルインセクトってなんですか?」
「魔獣の中でも見た目がグロテスクなせいで、好んで討伐をする人がいないくらいなんです。動きも遅いしブルファングよりも弱いから、トウリさんにはピッタリかもしれません」
「なるほど……可愛くないならいけるかも」
見た目がグロテスクってのが気になるけど、それならむしろ討伐すべき魔獣ではないか。
「そうそう! 姉さん、トウリの鑑定スキルなんだけど、これとっても便利だよ!」
俺がヌメルインセクトについて聞こうとすると、グウェインが興奮した様子で今日のレベル上げのことを語り始めた。
まあ、内容としては俺の鑑定スキルで魔獣の居場所を一発で見つけたというものだが。
「それはすごいですね! ある程度の生息地は判明していますけど、それでもこの辺りで魔獣をピンポイントで見つけるのは難しいんですよ!」
「そうなんだよ! それなのにトウリはそこまで感動してないんだよ」
「えっ! そうなんですか?」
いや、だって。魔の森でずっとやっていたことだし、今さら感動とかできないんだよなぁ。
その後、俺の鑑定スキルのことで二人が盛り上がってしまい、ヌメルインセクトについて詳しく聞くことができなかった。
まあ、明日にでもグウェインに聞ければいいかと思い、俺は疲れを
「俺はそろそろ休むけど、二人はどうするんだ?」
「あっ! 僕もそろそろ休むよ。明日も頑張ろうね!」
「えっ、明日も大丈夫なのか?」
「兵士長にお願いして、三日間の休みを
マジか。副兵士長、大丈夫なんだろうか。
「ありがとう、グウェイン」
「いいって。さあ、休もうか」
「片付けは私がしておきますから、グウェインも戻っていいですよ」
二人の心遣いに感謝しながら、俺は部屋に戻っていった。
明日こそはヌメルインセクトを討伐して、レベルを上げるんだ!
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