第13話
「うん?」
純一郎が首をかしげる。
突然、外の魔術師たちの非常に強力な生体電流が、ここまで肌で感じられた。
ここ学園長室まで、外からの生体電流が皆の肌が焼け焦げるかのような高熱となって包み込んだ。と、同時に窓の外から気味の悪い大勢の魔術師たちの詠唱が聞こえてくる。
「うん。と、……あった!」
純一郎は終始落ち着いている。
豪奢な机の上の試験官を一本取り出すと、蓋を開けた。
「むん!」
途端に、純一郎の身体の奥から並々ならぬ生体電流が放出された。学園長室がブンと電気の音が支配し、立っているだけなのに、ぼくの身体全体がビリビリと痺れだした。
純一郎は光の玉を掌から発し、それを窓の外へ投げつけた。
過激な爆発音と共に、校舎の窓ガラスが全て割れる音が木霊する。凄まじい光が重厚なカーテンをふっ飛ばして、ギラギラと射しこんできた。
「な?!」
「皆、伏せて!!」
「キャッ?!」
ぼくと白花と凛は床に蹲った。
窓の外は、山のような黒煙と灼熱の高温に覆われた。
ぼくは何が爆発したのかわからなかった。
真っ赤な小型の太陽が校舎で破裂したかのように思えた。
けれども、これが高位魔術の一つ。
爆炎系の魔術だ。
「触媒は硝酸アンモニウムさ」
純一郎は床から埃を叩いて立ち上がった。未だ落ち着いていて試験官を机に戻しに行った。硝酸アンモニウムは、 主に農業の肥料にもなるようだ。
「これが……王者の書」
…………
壮大な破壊の後、第三カリタス学園は半壊になるはずだった。大雨に埋もれた学園は学びの泉とは到底機能しない瓦礫の建造物となったはずだ。ぼくは凛と、魔術師たちがいなくなった校庭で、怪訝に思いながら学園を見つめていた。
「え? ナニナニ? 直っているわね学校……」
「……修復されている?!」
広大な第三カリタス学園は、いつの間にかその機能を回復したかのように、窓や壁などの外観が修復されていた。
「弥生と靖は大丈夫かしら? ねえ、零。これからも戦いは激しくなるわ」
白花は新調した白いハットを被って校舎から何事もなく歩いて来た。
「まさか、奴隷の書か?!」
「そうよ」
「ええええええーーー?!」
白花の言葉にぼくは絶句し、凛は驚きのあまり更に混乱したようだ。考えてみると、凛には驚きと混乱の連続だったのだろう。学園長室で寝ていたら、いきなり魔術師たちと戦うはめになるのだから……それも、わけもわからずに……。
「どんな傷でも癒せる。けれども、建物もなの……」
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