クラス転移しました~欲しくなかった没地神の加護~

ぐっちょん

第1話 クラス転移!?

「なあ、なんで急に自習になったんだ?」


「おいおい、お前知らねぇのかよ。A組の事」


「えっ、何? 何かあったのか?」


「ああ、マジでびびるぞ。何でも授業中に先生と生徒が突然いなくなったんだってよ」


「えっ! マジで? ちょーこえ〜じゃんっ」


「だよな、だから先生たち今職員会議してんのよ」


「なんか警察も来るらしいから、午後の授業は中止になるだろってみんな言ってるわ」


 授業の合間は机に突っ伏して時間を潰す俺。

 授業が始まらないからおかしいと思いつつも、いつものように机に突っ伏していると、みんなの会話が耳に入ってきた。


 ——今の話ホント? 俺も詳しく聞きたいぞ……


 残念ながら俺はボッチだ。こういう時に話しかける友人はいない。


 別に苛められたり無視されたりしているわけじゃないので、たまに話し掛けられることはある。

 でも、自分から話しかける勇気はない、話すのが苦手なんだ。

 面白い話題を振ることができない。それを普通にできるみんなはすげぇよな……


 俺も親の転勤で県外の高校に入学しなければワンチャン友だちの1人や2人……


 ——はぁ……


 俺だって頑張ろうとしたけど、無理だったんだよ。


 近くの席の奴に、適当な話題を振って話しかけた。


 でもな、話しかける度に少し困ったようは顔をされるとさすがに心が折れた。

 そりゃあ毎日天気の話しかしなかった俺も悪いけど、次に話しかける勇気はなかった。


 そうこうしている間に仲良しグループが出来上がっていたんだ。


 次第に一人でいる方が楽になり、気づけばもう2年生。今さらって感じ。俺はたぶん、このまま何事もなく卒業することになるんだろう。

 でも大丈夫。まだ大学デビューが残っているから。大学デビューは本気を出すんだ。


 結局、この日は担任の先生がすぐに戻ってきて、すぐに下校になった。


 学校から連絡があるまで自宅待機だそうだ。


 不謹慎だけど、平日なのに明日から学校が休みだと思うと嬉しくて小踊りしそう。ふふふ、明日はゲーム三昧かな。


 ――――

 ――


 二日後。


 何事もなかったかのように授業が再開された。早すぎないか? 先生と生徒が消えてるんだぞ。大問題じゃないか。


 と思ってたらA組の先生と生徒が学校に来ていたよ。意味が分からない。


 誰かA組に行って聞いてきてくれないかな?


 俺は机に突っ伏しながら聞き耳を立てた。


「面白れ〜こと聞いたぞ」


「何だよ」


「A組の奴らさ、異世界に行ってきたんだってよ」


「「「はああ!」」」


 ——なんとっ!?


「ケモミミとか、エルフがいたんだと。ちくしょう」


「おい、もっと詳しく聞かせろよ」


「えっとたしか……あぁもう、ちょっと待ってろ、A組の奴を連れてくる」


 1分も経たないうちにさっきの奴がA組くんを連れてC組に帰ってきた。


「「「おお!」」」


「ちょ、待て、待てって」


 そしてすぐにC組の生徒から取り囲まれている。


 俺も気になっていたので机に突っ伏しながらも聞き耳はしっかりと立てていた。


 ラッキ―なことにA組くんは俺の席の近くで取り囲まれてくれている。ナイスだ。


「だから押すなって」


「分かった分かった。それより早く話せよ」


「分かった、分かったって……とりあえずお前ら落ち着け」


 A組くんの話では昨日にはこの世界に帰ってきたが、先生を含むA組のみんなは事情聴取を受けていたそうだ。


 それで向こうの異世界……ガンラなんたらには一ヶ月も居たそうだ。


 何でも千年前にガンラなんたらの世界を平和に導いてくれたのが異世界の勇者で、その勇者を讃える百回目の式典にお呼ばれしたらしい。


 その式典は百年ごとに開催されているらしく、A組のみんなは今回の主催国『ユの国』にいたそうだ。


 羨ましいことに、A組のみんなはユの国の王様からお小遣いを貰い異世界の街(ユの国)を観光してきたそうだ。


 宿泊先は超がつくほどの豪華なお城の個室だったとか。マジか。


 1番おどろいたのは、魔法という空想の産物が、この異世界には存在していて、王国騎士団によるパレ―ドでは、見たこともない魔法を花火のように打ち上げていたのだそうだ。

 

 そう語るA組くん、めちゃくちゃ興奮していた。


「マジですごいかったぜ!」


 魔物もいると聞いていたが、街から出ていないA組くんたちは見る機会がなかったとか。そこはちょっと残念そうにしていた。


 C組のクラスみんなから羨望の眼差しを向けられたA組くんは、ちょっと誇らしげにしながら自分のクラスに戻っていった。


 ——いいなぁ。異世界のガンラなんとか。俺も行ってみたい……


 ――――

 ――


 更に一ヶ月が過ぎた。


 不可解な出来事があっても一ヶ月間も経てば騒ぎは落ち着き学校は平穏を取り戻していた。


 でもそんなある日のことだった……


「なあ、なんでまた急に自習になったんだ?」


「お前知らねぇのかよ。B組のこと……」


「えっ、何? 何があったんだ。ま、まさか……」


「ああ、そのまさかだよ。また授業中に先生と生徒がいなくなったんだってよ」


「えっ、マジで!? それってまた異世界か?」


「それはまだ分かっていない。だから今回もまた職員会議してるんだってよ」


 ——な、なんと今度はB組ですか!?


 結局この日も、担任の先生がすぐに戻ってきて下校することになった。


 今回も学校から連絡があるまで自宅待機になった。


 不謹慎だけど、明日から休みだと思うと嬉しくてしょうがない。よーし、ゲーム三昧だ。


 ――――

 ――



 二日後。


 何事もなかったかのように授業が再開された。早すぎない?


 B組の先生と生徒はちゃんと学校に来ていた。

 

「おいおい。面白れ〜こと聞いたぞ」


「何だよ」


「ああ、B組の奴らやっぱり異世界に行ってきたんだってよ」


「「「ええっ!」」」


——なんと、またもや異世界!


「ケモミミとか、エルフとか、いたんだってさ。いいよなぁ」


「おいおい、もっと詳しく聞かせろよ。で、そこはA組がいった異世界と同じなのか?」


「それは分からんな。よし、ちょっと待ってろ、B組の奴連れてくるわ」


 1分も経たないうちにさっきの奴がB組くんを連れて帰ってきた


「自分で歩けるから、ちょっ、引っ張るなって……」


「いいから、早く聞かせろよ」


 C組の生徒から囲まれたB組くんはちょっとにやけていて、なんだか嬉しそうに見えた。


 俺は早速机に突っ伏して聞き耳を立てる。ありがたいことに、またもや俺の席の近くで取り囲まれてるB組くん。ラッキーだ。


「話すから、ちょっと、落ち着けって」


 B組くんの話では昨日のうちに、この世界に帰ってきたが、やっぱり事情聴取やらなんやらに時間をとられたのだそうだ。


 そして気になっていた行き先は異世界ガンラなんたら、A組と一緒だ。そこに一ヶ月もいたそうだ。


 ——また異世界ガンラなんたらか、しかし、なんで肝心な異世界の名前がキチンと聞き取れないんだ?


 不思議に思いつつもB組くんの話を聞いていると、何でも千百年前に世界を平和に導いてくれた異世界の勇者を讃える11回目の式典にお呼ばれしたそうだ。


 ——ん? 1回増えてる……?


 その式典は百年ごとに開催されているもので、今回は主催国『ウの国』という国にお呼ばれしていたらしい。


 B組のみんなは、ウの国の王様からお小遣いを貰って街の中を観光をしたそうだ。

 宿泊先は、またもや豪華なお城だったらしい。


 ——羨ましい……


 そして、その異世界には、魔法が存在していて、王国騎士団によるパレ―ドの際は、魔法を花火のように打ち上げていてとても綺麗だったと語るB組くん。


「魔法がこう、ダダーンッ! てな感じで……」


 かなり興奮しているB組くんは、擬音が多くて聞いてて吹き出しそうになったよ。


 魔物もいるらしいけど、残念ながらB組くん見ていないそうだ。


 ——魔物か。


 みんなから羨望の眼差しが向けられていたB組くんは、どや顔で自分のクラスに帰っていった。


——いいな。異世界ガンラなんたら。


「俺思うんだけど、A、Bときたじゃん、次はC組の俺たちの番じゃね?」


「奇遇だな、俺も思った」


 ——なるほど。


「やべぇ。俺なんか緊張してきたわ」


「俺も……とりあえず準備しとくかな。カメラとか……」


「それいいな。あっ、でもスマホで撮った写真、全部真っ黒になるらしいぞ、B組の奴が言ってたぞ」


「何っ! そうなのか…くそっ」


「まあ、行けたらの話だし、気楽にいこうぜ」


「だな」


 ――――

 ――



 一ヶ月間が経つと、騒ぎは落ち着き、いつも通りの学校に戻っていた。


「おかしい。そろそろのはずだが……」


「ああ、そうなんだよ。俺さ、修学旅行と同じくらい楽しみにしていて、カレンダーに印だってつけていたんだよな……」


 ——ふふふ。奇遇だねそれ俺もやってるぜ。今日だよ今日。さあ、異世界ガンラなんたらの誰か、俺たちを召喚するのだ。


「もしかしてさ、勇者式典なくなったのかな?」


 ——それだけはやめて。やだよ。俺、魔法がみたいし、観光もしたい。


「分からんけど、それは……イヤだな」


「……だな」


 何事も起きないまま、更に一ヶ月間が経つと、学校で異世界のことを話す者は、ごく限られた者、小人数となっていた。


「はぁ、異世界に行って見たかったな」


 ——俺もだ。


「お前はまだそんなこと言ってるのか? それよりもうすぐ修学旅行だぜ。気にするならそっちだろ」


「ええ、だって俺国内だもん。お前海外に行くんだろ。お前はいいよな」


「まあな。俺初めてなんだよ海外、早く行きたいわ」


 そうだった。俺は国内だが、ぼっちに修学旅行は苦行でしかないんだよね。あ〜行きたくない。


 更に一ヶ月間が経ち、いよいよ修学旅行の前日となっていた。


 クラスには、いや、学校中、異世界のことはすでに終わったこと、なかったことのような認識となっていた。


 そんなある朝のホームルーム。


「……ということで、みんな明日からいよいよ修学旅行となる。

 海外組と国内組とでは集合場所や時間が異なるため間違えないように」


「「「は―い」」分かってまーす」


 ——はぁ、明日から修学旅行か……


 行きたくない。


 班行動がきついんだよ。みんな良い奴なのだが、明らかに俺に気を使ってるように見えるからな。こんなことなら、先生たちといる方がまだ気が楽だったな。


「ほかに何か質問のある人はいるか?」


 教壇に立ち教室内を見渡す先生。誰も口を開かず沈黙が続く。


「無いようだな。では朝のホ―ムル―ムは以上だ」


「起立!」


 日直の号令にみんなが一斉に立ち上がる。これは、いつもの朝の挨拶の流れだった。


 俺ものそりと立ち上がる。


「……」


 ——……?


 でも待てども待てども当番の「礼っ」という声が聞こえてこない。


——おーい、まだですか。


 気になった俺は日直の方に視線を向けるが、少しおかしな状況になっていて、みんな慌てているけど、何も聞こえてこない。


 先生もだ。先生も何か叫んでいるに見えるけど、何も聞こえない……


「え!?」


 俺が不思議に思っていた次の瞬間、教室内が真っ白な光に包まれ、俺自身もその白い光に呑み込まれていた。

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