第20話


 20話 


 ソロ部門 予選Aブロック

 参加人数が多く予選で選ばれないと、本選に行けない。でも、俺は緊張する事無く、なぜか楽しく脳が沸騰しそうだった。


「光ヶ丘はブロックはどこだ?」

「俺はCです。阿部先輩は?」

「いま。行ってくる。よく見とけよ!」


 さっそく先輩の番みたいだ。先輩も緊張している様子はなく、俺は本選に上がれると本気で思っていそうな。気軽と言うか。

 でも、先輩にはそれくらいのダンスがある。俺はそう思っている。


 予選の方法は、結構簡単で、選ばれたブロックの人たちがサークル状になって一回ずつ踊る。ただそれだけ。


 それだけで、決まる。


 ・・・だから、全く分からない。

 俺はいつも自分のダンスを出せるように練習してきた。だから、こういう場所でのノリとかは分からないし。それに予選の決め方。


 踊る人に順番とかは決まって居ない。それぞれが譲り合って他の人と被らないように踊る。


「先輩は大丈夫なのかな。」


 俺が踊る前に、どうやって譲り合っているのかちゃんと見とかなきゃ。もし、他の人と被ったとかしたら、・・・減点されるかもしれない。ダンスではなくてそんな所で落とされるのはいやだ。


「「「うぉー!!」」」


 その歓声に驚き落としていた顔を上げると、踊っていたのは、阿部先輩であった。・・・阿部先輩のダンス。・・この前見せてくれたのより良くなってる。


「Aブロック終了ー!予選通過するダンサーは肩を叩かれまーす。」


 あ、ちゃんと阿部先輩は叩かれた。叩かれると信じていたけど、本当に叩かれたら、ちょっとあんしんした。


「続いてBブロック!」


 あ、小奈津さんはBだったんだ。小奈津さんダンス経験はあるって聞いているけど・・・


「しゅーりょー!」


 ちゃんと叩かれている。良かった。・・・後は俺だけだな。

 俺の呼吸はBが終わるにつれてドンドン早くなっていく。緊張しているのか。心臓の音も聞こえる。


 これほど大きな音が鳴って居るのに、今の俺は心臓の音が鮮明に聞こえている。


「緊張しているのか?」

「はい。・・・ダンスがちゃんと出来るか。。。」

「・・・・お前なら、大丈夫だよ。・・・流れだけは見とけよ。」


 阿部先輩に鼓舞されたおかげで、少し緊張が和らいだ。

 流れを見るか。


「続いてCブロック!出場ダンサーは集まってください。」


 俺の番だ。・・・こんなところで、転んでいたら先輩に追いつく事すら敵わない。前に行こう。自分が使える物を使おう。


「Cブロック、スタート!」


 さっそく出てきたのは、おちゃらけていそうな男子。ダンスはブレイキンのパワームーブだ。・・・近くで見るのは初めてだけど、迫力がやっぱり違うな。力ずよくて、ムーブを繰り返しているだけで見れる、


 でも、音をちゃんと聞けていない。・・・細かい所は聞けていなくても、しょうがない。あんなに回っているのだから、しょうがない。


 でも、おおきい重要な音。それが聞けていなくて・・・見ているだけで虫唾が走って来る。・・・おれ、パワーとは分かりあえそうにないわ。


 あ、終わったみたい。そして、直ぐ出てきたのはその友達と思われる男性。その人は・・・パワーか。同じダンスで入るんだったら、別のタイミングじゃないとその友達さんとくらべられるよな、


 次は。あ、女性かな。

 その女性は・・・ブレイキンではあるけど・・フットワーク?かな。あんまり見た事が無くて本当にフットワークなのか分からないけど。・・・足を大きく使うダンスに、女性の長い脚は合っている合っているな。


 ブレイキンの中のパワームーブのように地に手が付いているが、こっちは音が聞けているようでダンスとして見れるな。


 ・・・・あ、ここだな。


 俺は何となく、女性の次。その時にダンスをするのが良いと感じた。

 後から気が付いたのだが、実際にそこで踊るのはいい感じの場面だった。その時は、他のダンサーが踊ろうとしていなくて被ることが無く、さらにブレイキン・ブレイキン・ブレイキンと続いたことで、俺のダンスが強調される。


 さらに女性の後だったこともあってそれも良かったと思う。・・・たぶんこれが「流れ」なんだな。


 まあ、ちゃんと流れを読めた。それなら俺がやる事は一つ。俺のダンスをするだけだ。


 ☆


 ポン。


 ダンスが終わった、やり切ったと言う感じが、肩に乗り他の人のダンスが終わるのを見て待っていた。


 そして、全員のダンスが終わり、審査をされる。すると、その微妙に重い手は俺の肩におかれた。剛毅さんの手だ。

 つまり、俺は予選を通過した。


 ダンスが終わり、落ち着いていた俺の心臓は予選通過の事実を受け、喜びのあまりドンドン早くなってきた。


 まずは一歩目だ。俺はその一歩を踏み外さないか、この瞬間まで心配で仕方が無かった。でも、無事予選を通過できた。


「Dの予選見ておきな。」


 それは俺の肩に手をおいている。剛毅さんの言葉だ。久しぶりに会ったので挨拶をしたいが、審査員として忙しいみたいだから、さっきまで挨拶も出来なかった。


 ・・・え、D?


 なので後でこの大会が終わったら挨拶しに行こうかと思っていたけど。・・・ここで剛毅さんに話しかけられると思ていなかった。

 そして、Dの予選を見ておけっていう良く分からない、事を言われるとは思ってもいなかった。


 まあ、Dも見ておくか。・・・剛毅さんの知り合いがいるのかな?わざわざ言うくらいだし。


「光ヶ丘!良かったぞ!」

「予選通過できましたね。」


 俺のダンスを見てくれていた、阿部先輩と小奈津さんは真っ先に俺の所に来てくれた。こんな風に言われると照れるな~


「ありがとうございます。・・そうだ、水はありますか。」

「どうぞ。」


 小奈津さんから貰った水を飲みながらこれからの事を考える。・・・Dは見るとして、それから少し時間が開くみたいなんだよな。何でもトーナメント表をつくるから少し時間をあけるらしい。


 ンで、その間に体を休めるんだけど。・・・何か間食でも取った方がいいのかな。正直何時間この大会が続くのか分からないし、体力が続くか・・・でも、何も食べない方がパフォーマンスが出るのは正直事実なんだよな。


 Dの予選選抜を見たら考えよ。今だと正直決められないし。


「この後どうする?」

「俺はDを見て来たいです。」

「敵の調査か?勤勉だな~。」

「いえ、剛毅さんに見とけって言われたんで。」

「・・・本当に知り合いだったんだな。」


 さっき言ったはずなんだけどな。・・・小奈津さんは凄い驚いているけど。


「じゃあ、見に行こうぜそろそろDは始まるだろ。」





 そう言い見に行くと、なぜかその場の空気感が白いバラが舞い降りたかのような。

 阿部先輩がダンスをしていた時とも、俺がダンスをしていた時とも雰囲気が違う。なぜか、・・・緊迫感がある。


 こんなダンスを魅せられたら、と、そんな感じが観客からも伝わってくる。誰がダンスをしているんだと思い見れみると、そこには白い羽根を生やして頭にリングがある。


 そんなイメージが湧いてくる人がいた。


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