第38話 ギリギリ

   ~~ テイムの力 ~~


 顔面に拳をうけ、壁付近まで吹き飛ばされた。

 それでも、衝撃耐性を強化をしておいてよかった……。でなければ、顔面が砕けていたところだ。

 しかしナイフとともに衝撃をうけた左腕は、骨が折れていた。

 今は興奮で痛みを凌駕しているけれど、左腕は使いものにならなくなった。

「この一撃で、まだ立っていられたのはキサマが初めてだ。認めよう。強い。ギルドが送りこんできただけはある。でも、それだけだ……」

 再び拳をかためた。「ライジング・ボルト!」

 電気を帯びた拳を、つっこんできた勢いそのままにぶつけてくる、強力な技だ。しかし、さっきの攻撃で見切った。拳は一番衝撃が強いところ、腕を伸ばしきる一歩手前が、もっとも威力が強い。だから、ボクは前へとでた。ぎりぎりで拳をかわし、右の拳を叩きこ……めなかった。右の拳を避けられた彼女は、すかさず左のワンツーを入れてきたからだ。

 ボクの顔面に左拳がめりこんだけれど、撃ち抜かれなかった。それは近くにいたネズミにテイムをかけ、足首に噛みついてもらっていたから。鬼人族の女性も踏ん張りが利かず、力が殺がれた。

 相手の拳が顔面に触れている……。今だ!

 ドミネート――。

 若さと美貌をほこったその体を、鬼人族の女性は老いと腐臭に塗れさせていた。

 眼はかすみ、匂いも味も感じなくなり、骨も脆く、皮膚も皺だらけ。自分がめざしていた方向性とは真逆。まさに生き地獄――。

 内臓も老化によって壊れはじめ、そう長くは生きられない。自分の変わり果てた姿に絶望し、ボクに殴りかかろうとして、足首の骨が折れて悶絶する。そうして苦しみながら、死ぬがいい……。


 ぼろぼろの状態で部屋をでてきたボクの前に、一人の町民が立っていた。同じマントで、マスクをするので分かりにくいけれど……。

「リクィデーターか……」

「ご明察。依頼を果たせたようだね」

「鬼人族と知って、ボクをぶつけたな。しかも、それを教えずに……」

「教えたら断るだろ? 実は長いこと、この案件は棚上げされていた。依頼主は貴族のムルフス。彼女の夫だよ。鬼人族との融和のため、押し付けられた婦人の尻に敷かれ……というだけなら、ギルドも動かなかったんだけどね。この町に赴任して、妻がやりたい放題をはじめて愈々……となったが、誰も殺せる冒険者がいない」

「何で……ボク?」

「ギルドの情報網って奴だよ。これ以上は教えられない。間違いなく依頼を果たしてくれると信じていたよ」

「悪いけど、殺してはいない。ま、どうせ数ヶ月後には死ぬけれど……」

「構わんさ。私はここの施設を破壊してから出る。ギルドには報告しておくから、ゆっくり休んで、養生してくれ」

 何をどこまでつかんでいるのか……。ボクもギルドに不信感を抱いたが、そろそろ緊張が解け、左腕が傷みだしてきたので、サン・バルラの町を後にしていた。




   ~~


「サン・バルラの町にいた鬼人族? 多分、ジザよ」

 山小屋にもどって、ザビに尋ねてみると、すぐにそう返してきた。

「知り合い?」

「知ってはいるけれど、私、あのオバサン苦手。鬼人族は、あまり他家の者とは関わらないの、子供のころは。だから顔は知っているけれど、あまり知らない」

「暗殺してきたけれど……」

「へぇ~。やっぱりアナタ、強いのね。じゃあ今度、私と戦ってみない?」

「左手一本、もっていかれた戦いをまたしろ、と?」

「鬼人族相手にその程度で済んでいる時点で、人族としては優秀どころか、稀有よ」

 確かに、ドミネートが利いたので何とかなったけれど、ふつうの人族だったら危ない……どころか、敵わない相手だ。

 ちなみに、左腕の骨折は添え木を当てて、押さえている。この世界の魔法、ヒールは傷が消えたり、骨折したものがくっついたり、といったことはできない。そんなことができたら、死すら克服でき、暗殺という職業すら成り立たなくなる。あくまで傷の痛みを少なくしたり、一時的に感じなくしたりできるぐらいだ。もう一つ言うと、強化魔法を使い過ぎて、筋肉がはち切れそうになっている。一時的に肉体を酷使するのが〝強化〟で、今は左腕の痛みと、筋肉痛の緩和にヒールをつかっていた。


「みんな、ごめん。今はキミたちにしてあげられない」

 勿論、夜の話である。

「構いません。むしろ、今は私たちの方がしてあげます」

 フィアはそういうと、ボクに背中から抱き着いてきて、耳を舐めてくる。どうやら三人で話し合って、左腕がつかえないボクのために、彼女たちから気持ちよくさせてあげよう、ということらしい。

 動物たちの世話も、今はザビがいて手伝ってくれるので、左腕がつかえなくとも特に問題ない。でも逆に、ザビの存在感がそれで大きくなると正妻になってしまう、という危機感もあるようだ。

「じゃあ、私はお口でしてあげるのん」

 そういうと、ルゥナがねっとりと舌に唾液をからませ、ボクのそれを咥えてくる。フィアはあまり口でするのが好きではないようなので、無理にさせないけれど、ルゥナは嫌いでないようだ。ミズクが興味深そうにそれをみつめる。彼女のことだから、いずれ「私もやる」と言い出すのかもしれない。

 唯一、自由になる右手はミズクを責めるのにつかった。ミズクも最近、自己主張が強くなり、自分でボクの手を、自分の大切なところに導くようになった。まだ毛も生えていないので、抵抗もなくそこに辿りつき、自らボクの指をここに……という感じで引っ張る。

「私たちがしてあげる」という言葉通り、ミズクもボクの指を自分の中に導き入れると、後はボクの唇に、唇を重ねてくる。今はもう、ミズクもキスが上手くなった。特にルゥナのそれを覚えて、ねっとりと舌を絡ませ、ボクの舌にも吸い付くようにしてくる。


「私、太ももでしてあげる」

 ミズクがいきなりそう言いだした。顎が疲れて休んだルゥナの代わりに、ボクの足の間に膝立ちすると、足を閉じてボクのそれを自分の足で挟んできた。

 ボクが挿入してくれないので、自分で考えたらしい。彼女が腰をつかって体全体を前後させると、太ももの間でボクのそれもこすれて気持ちいい。

 ただ、彼女の太ももはまだそれほど肉がついていないので、締め付け過ぎるきらいがある。ボクが「少し痛い」というと、ミズクもシュンとしてしまう。まだ加減が分からず、もう少し勉強が必要なようだ。

「じゃ、じゃあ、私がしてあげます」

 そういうと、フィアがボクのそれを胸ではさんできた。まだ慣れておらず、ぎこちない動きだけれど、健気な感じがいい。ルゥナとミズクが悔しがるけれど、偶には怪我をして、みんなにしてもらうのもいいものだ……と恍惚に浸りながら考えていた。









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