(二)-11

 そういう焦燥感はもちろん他のメンバーにもあった。でも彼のように他人にそれをぶつけることはなかった。

 三年生になり、就職活動が始まると活動も下火になった。私を含め五人いたメンバーの一人はプロを目指していたが、二人は就職することになった。彼もプロを目指していたが、二人と同じように「とりあえず」就職した。私も同じく就職することにした。そうして「シャークマウス」は自然消滅してしまった。

 彼は、就職活動の後、仲間とではなく、ソロで活動を始めた。新宿歌舞伎町や渋谷のスクランブル交差点などで路上ライブで夜な夜な演奏していた。


(続く)

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