第18話 相良の協力者

――病院内。


「相良さん相良さん!」

心配そうに見守る吉田。

「大丈夫だ。少し気を失っていたか俺」

「・・・はい」

「そうか、心配かけたな。ところで富樫さんは?」

「事情は知ってると思います。でも・・・」

「そうか」

相良は深く息を吐いた。その顔はどこか寂し気な表情だった。

「お聞きしたいことがあります。富樫さんって前から相良さんに対して暴力的だったんですか?」

吉田はまだ組織に入って日が浅かった。そして相良は組織について話す。


「そうか、あまり話していなかったな。少しばかり組織の話を聞かせよう。富樫さんが最初に言ってた結婚詐欺師の男の話を言っていただろう?あれは実は富樫さんの弟で、雅也ってやつなんだ。雅也は腕っぷしよりも、言葉巧みに女を騙す能力が長けていて、富樫さんの右腕的存在だった。だがその雅也が殺されてから、兄である富樫さんはあんな風になってしまった」


少し考える吉田。それから相良に質問をする。

「でもそれがなぜ相良さんに対してあんなに当たりが強くなるんです?」


「俺がきちんと管理できていなかったからそれで俺を恨んでいる。実は当時から今も俺は若頭でその下が雅也だったため、俺がきちんと管理できていなかったから雅也が死んだと責めているのだろう」


「そんな話って・・・」

「ただ雅也も相当の悪い奴だった。人から恨まれるには十分な動機がある。だから神楽坂に見つかり処刑されたのだろう。他にも報道で見る限り死んだ奴はいるが俺はよく知らない。ただ富樫さんはなんか知っているみたいだったがね」


「まさか一連の騒動って富樫さんが全て噛んでいる?」

「可能性はある。全員ではないにしろ富樫さんがある程度噛んでいるは間違いないと思う」


やがて相良は退院した。組に戻っても富樫からは一切の労いの言葉もなく、いつも通り組織を動かせる金を稼げと命令される。吉田は別の場所に行くよう言われ、いったん相良と離れる事となる。




◆◆◆


――店内。


「相良さん、体はもう大丈夫?」

「マスター、心配かけたな」

「相良さん、1杯飲んできなよ奢るよ。この前の礼もしたいし」

「そうか、ありがとうではお言葉に甘えるとするよ」

「相良さん、いつも感謝している。富樫さんの事はよくわからねぇが、相良さんあんたは信用できる」

「ありがとうマスター」


「でもこのままだと相良さんあんた死ぬんじゃないかって心配なんだよ」

「店を襲う外道には負けねぇよ」

「そうじゃねーよ相良さん、俺が言ってるのは富樫さんの事だ。相良さんあんた頼ってみたらどうだ?地獄の落し蓋と言われてる神楽坂さんに吉田君随分と心配していてぞ」

「吉田が俺を?」


「あぁいつか富樫に殺されてしまうのではないかと心配で仕方がないって連絡きたぞ。しかもあんた雅也が死んだことで余計目の仇にされているんだろう?だったらもう自分の命が危機にさらされているってことじゃないか。それと他にも富樫は悪行を重ねていた。だったら富樫の外道行為を考えると抹殺してくれるかもしれないし、あんたもこれ以上無駄な血を流さなくても済むんだぞ」


悩む相良。仮にそれができたとしても相良はヤクザ。話を聞いてもらえるかどうか解らなかった。


「なぁ相良さん、あんた大切な人いるんじゃないのか?」

それは悟ったようにマスターが口を開き相良に問いかける。

「・・・それは」

「親を想い、子を盾にしてまで守る。そして相良さんの人柄。これは俺の感だが誰かいるのか?」

そうマスターが問いかけると相良は頷く。

「実は今年で息子が6歳になる我が子がいる」

妻は他の男と出ていってしまったため、行方は現在分からず、相良と母と息子で3人で暮らしているという話もした。


「相良さんあんた苦労してるんだな。吉田君言っていた。俺なんか普通は殴られるだけのはずなのに、相良さんは盾になってくれたと。身をもって守ってくれたことに非常に感謝している。とね」


「相良さんの事は俺も協力するし、実は神楽坂さんの居場所も知っている。以前伊藤さんという人がここへ来て、話してくれて彼は外道に殺された遺族なのだよ。その伊藤さんの紹介という形なら・・・。とにかくこのままだと相良さんだけではなく息子さんの命までも狙われるような気がするんだ」

「・・・わかった」


そう言い、マスターは店の事もあるから行けないという話になり、近々、地図と住所を伊藤さんから詳しく聞くのでその時に教えると言う話になった。


ー続くー









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