第34話 その子にその父で変態かよ!

「いらっしゃいませ~! あら? お二人とも、ものすごく似合っておりますわ!」


 駆け足で出て来たエイミーさんが僕達を見て真っ先に褒めてくれる。


「ありがとうございます! エイミーさん!」


「ふふふっ、こうしていらしてくださって嬉しいですわ。さあさあ、お二人とも中にどうぞ!」


 すぐに妹の手を引いて中に入るエイミーさん。


 僕も衛兵さんに小さく会釈して、部屋の中に入って行く。


 エイミーさんの部屋は、現在泊っている高級宿屋の部屋くらいの広さがあり、貴族家の令嬢らしい広い部屋だなという印象だ。


 周囲は綺麗に整理整頓が整っていて、部屋の中には優しい香りが充満している。


 恐らく、窓辺などに置かれている紫色の花の香りなのだろう。


 テーブルに案内したエイミーさんはすぐさま色んな事を妹に聞き始める。


 妹も楽しそうにここまでの旅を語った。


 メイドさんが淹れてくれる紅茶もとても美味しくて、クッキーなどのお菓子も程よい甘さがとても美味しい。


 ティータイムを堪能していると、ノックの音が聞こえてメイドさんからエイミーさんに何か耳元で囁く。


「あら、お父様がいらしたようです。ホロ様。お父様にも会って頂けますか?」


「もちろんです」


 先程はメイドさんがずっと後方に待機していたのだが、子爵様と入れ違いに、部屋には誰もいなくなる。


「ホロくん。此度は訪れてくれてありがとう」


「いえいえ、こちらこそ誘って頂きありがとうございます!」


 子爵様がテーブルに座ると、エイミーさんが自らの手で子爵様の紅茶を用意する。


 令嬢なのに、意外にもこういう家事のような事が出来る事に驚きだ。


「ホロくん。すまないが一つ仕事・・の話をさせて貰ってもいいかな?」


「どうぞ」


 まあ、こうなるだろうなって事くらい予想している。


 妹にも昨晩話しているので、驚きは見せない。


「昨晩、襲われたそうだね」


「そうですね。暗殺者二人でした」


「二人のうち、一人は既に確保しておりますわ。一人は泳がせております」


 泳がせている…………という事は、どこの暗殺者が調べるためなんだな。


「奇遇ですね。僕も追尾・・させていました」


「あらあら、ホロ様も抜け目がないですわね」


「まあ、本当はエイミーさんの正体を調べるためでしたけどね」


「うふふ、嬉しいですわ!」


 決してたわわの為ではない。


 僕達兄妹を助けてくれた人が誰か調べるために、こっそりシルフィーで尾行させようとした。


 思っていた以上にたわわさんが強くて、逃げたもう一人の男が気になったのもあり、たわわさんよりそちらを優先させていたのだ。


「こほん。こちらの暗殺者は恐らく【デモンシーズン】という集団だと思われるのだ」


「【デモンシーズン】?」


「ああ、君がクインズ町で倒した男爵。うちの元執事。ヘンス町の男爵。どれも【デモンシーズン】の関係者だ」


 へぇ…………名前からして邪神を崇める連中かな?


「【デモンシーズン】は黒ノ女神を信仰する集団で、多くの権力者が参加しているという噂だ。君も知っているだろうけど【ヘルナンデス戦争】を知っているだろう? あれも【デモンシーズン】が起こしたと言われている」


「なるほど…………関係者に被害を出させた僕は【デモンシーズン】によって邪魔者だという事ですね?」


「そうだ。既に君達兄妹は彼らの的になっている可能性がある」


「…………」


 僕だけならいいが、妹もそのターゲットになっているならそのままにはしておけない。


「分かりました。それで子爵様は一体どういう存在なのですか?」


「――――ふふふ、良い事を聞いてくれた! ホロくん! 今だからこそ教えてあげよう! 我々ストーク子爵家の本当の姿を!」


 何故か子爵様とエイミーさんが席を立つ。


 後方にぴょーんと飛んで両手を上に広げる。


 何のポーズだよ…………。


「我々ストーク子爵家の真実! それこそが――――――この【ライトニング】だ!」


 子爵様が変な玉を地面に投げると、そこから黒い煙が広がり子爵様とエイミーさんの姿を隠す。


 そして、一瞬で姿を現した二人は――――――










「うわああああ! エリー! 見ちゃダメだ!」




 急いで妹の目を隠す。


 先日出会ったたわわさん。


 そして、その隣に立つ変態姿の男性のもっこりさん。


 なんで二人ともそんな姿なんだよ!


「お兄ちゃん…………大丈夫だよ…………」


「で、でも!」


「はぁ。お兄ちゃんこそ、エイミーさんばかり見ないでよ」


「えっ!? どうして分かっ――――」


 ベシッ!


 目を隠しているのに一切の迷いのない妹のハリセンが僕の頭を叩く。


 妹エリーは見えている。


 こほんこほん。


 仕方なく妹の目を隠していた両手を外すと、妹は大きなため息をついた。


「それで子爵様、それはなんなんです?」


「うむ。これは我が王国を裏で支えている暗殺集団【ライトニング】の正装なのだ」


「なるほど。【ライトニング】は変態集団ね…………」


「変態ではない! これはアサシンだからこそ、最も効率良い服装なのだ!」


「そうですわ。闇に紛れやすいのですよ? ホロ様とエリー様もいかがですか?」


「いらんわ! 妹を毒すな!」


 ――――――だが、ちょっと見てみたい。


 妹のは控えめだが、通常状態で既に可愛さレベルマックスだ。


 あの姿になっても可愛いに決まっている。





 ベシッ!

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