第8話 デート2回目

「真凛ー? 昨日はどうだったん? なんか元気なさげだったけど、何か嫌なことでもあったわけ?」


「紘子……。いや、まぁ……なかったとは言い切れなくもないかな……? で、でも! 大丈夫だから!」


「ちゃんと相談してよね? あーしは真凛の親友なんだし」


「うん、ありがとう」


 翌日の朝。学校の廊下で後ろの肩を叩かれる。振り向けばそこにいたのは紘子だった。紘子はいつでもどこでもアタシに優しくしてくれて、いっぱいアタシのことを心配してくれる。やはり親友というものは持つべきだと感じることが、事あるごとにあるものだ。


「総武さん?」


「んひゃぁっ……! な、なにっ!?」


「そんなに驚かなくても……」


 すぐ近くでアタシのことを呼んだ人がいる。それも近くというのは耳元でということであり、かなりの至近距離なのである。ほのぼのとしていた空間に邪魔をする男が一人乱入してきた。


 この男の名前はドーテー君。アタシや紘子はそう呼んでいる。本名は『伊達だて』という。


 昨日は散々この男に振り回されてしまい、疲れがいまだに取れていないのだ。本当にこの男は女性をリードするという精神を持ち合わせておらず、自分の行きたい場所にづかづかと行ってしまうような人間。アタシはそんな人間に弱みを握られてしまい、昨日は言いなりになっていたのだ。


「な、何よ……? こんな学校の中でもネチネチしてこないでよね? アンタと一緒にいるところを見られると変にウワサされて困るから。アタシってこう見えて、かなりモテてるんだからね?」


「それ自分で言っちゃうんだ。少し幻滅」


「幻滅って何よ! 幻滅って!」


 大声を出していると尚更知られてしまうのに。アタシは何も警戒していない。


「まあいいや。総武さん、放課後時間ある?」


「はぁっ? あ、あると思うけど……」


「明日の放課後は?」


「あるんじゃないの? 知らないけど、今のところは予定入ってないわよ」


「そっか。明日か今日のどっちがいい?」


「いや、そもそも何をするかを聞かせてもらわないと……」


「僕の家来れる?」


「無理っ!!!」


 きっぱりと断り、その場を後にしようと思った。しかしここで引き下がらないのがこの男、ドーテー君。


「無理とか言わないでさ、僕の家に来てよ。お願いだからさ。だって予定とか入ってないんでしょ?」


「……むり。やだ」


「そんなに嫌がることでもないと思うんだけどなぁ……。総武さんが来れないのなら、僕としてはかなり困っちゃうんだよね……」


「アタシがいなくたって、別にアンタの生活に支障はないでしょう?」


「そんなに嫌ならいいんだよ? いやいや、全然いいんだけどね? ただまあ、僕のいうことを聞かないのであれば、それはこちらとしてもそれ相応の対応をしないと、と思ってね……」


 はぁ……。だるコイツ。さっさと言えばいいのに。


「……それで?」


「それで、とは?」


「アンタは何が言いたいのよ?」


「君が言うんでしょ?」


「はぁ……。分かったわよ! 行ってあげる! そのかわり一時間だけだからね!」


「うん、オッケー。一時間で終わらせるから」


 え、何を?


 若干の不安を抱いたアタシだった。



 ****



 なんかアイツ、色々と言動に不安を抱かせてくるから、こっちは結構考えたり悩んだりすることがたまにあるから、なんともいえない面倒くささというか、対処のしにくさが目立ってくる。


 特殊な人間という感じなのだろう。今のところ、アタシの彼に対するイメージはキモい男の子。この前までは普通で陰気なキモいヤツだったのだが、昨日からアイツは陰気で下品な言葉をサラッと使ってくるキモいヤツへと昇格した。


 とりあえずキモいって思ってる。ただそれだけ。


「アンタの家ってどこなのよ? 結構歩いてるんだけど?」


「もう少ししたら着くはず」


「はずって何よ、はずって。家が移動でもするわけ?」


「かもね」


「えっ」


「嘘だよ」


 コイツ、アタシをからかってきてる。散々ビビらせておいて後から『嘘だよ』とか『そんなわけないじゃん』とか言ってきて、とにかくアタシをからかって遊んでくる。


「ここだよ。このタワーマンション」


「ここって高級住宅街のやつじゃない……。アンタって、もしかしてそれなりにお金とか持ってるの?」


「持ってなかったら昨日のカラオケ代払ってないでしょ。ま、そういう家庭ってことだけ知っておいてね」


「なんなのよ、アンタ……」


「何が?」


「いや、今日はここで何すんのよ……。まさか家に上がってから速攻でベッド行きとか、アタシは絶対に嫌だからね」


 彼は不思議そうに首を傾げる。


「期待してる?」


「っ……!? アンタやっぱり……!」


「そんなわけないでしょ。ああ、じゃあもう手っ取り早く言ってしまうけど、そもそも君の体に興味はない。あるのは……そうだな……」


「あるのは?」


 歌声かな、と優しい笑顔でそう言った。何が目的なのか探りたいけれど、しかし彼は自分の素性を明かすことがないため、常に自分のペースで物事を運んでいく。付け入る隙などない。


 エレベーターに乗り込み、彼の家に向かった。

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