本作は、引きこもり生活を送っていた高校生の浩太が、心に傷を抱えながらも下田の海辺の分校へと編入し、新たな日々を歩み始める物語です。
繊細な心を抱えた子どもたちが集う寮で、コータは様々な過去と向き合う仲間たちと出会い、波乗りを通して少しずつ自らの痛みと向き合っていきます。
コータの心を真正面から受けとめる大人たちの温かさが、コータの閉ざされた心にゆっくりと光を差し込みます。
また、下田の美しい海と空が、まるで詩のようなテンポの文章で描かれる個所があり、読者の心にもしみわたるように響きます。
まだ読了前ですが、日々ネコ少年の言動と、ソーダ水のようなシュワシュワの海に自分の心まで癒されています。
フィクションでありながら、今この瞬間、現実に存在する子どもたちの苦しみと再生を映し出しているはず。
静かで、力強い青春成長ストーリー。
この物語は、問題ある親や不用意な教師の言葉に傷つけられたコータが色々な優しさに触れながら心を癒やし、成長していく物語です。
失意のまま入寮した至大寮には、コータと同じように心に傷を持った子供達が生活していました。子供のまま成長できなくなったネコという男の子に振り回されながら、放課後は美しい海で波に乗る日々。寮の仲間や優しく見守る大人達といろいろなことを乗り越えていきます。そして、透明な海と空に心にある悲しみや苦しみが少しずつとけてゆくのです。
詩のような文章は、端的ながら下田の海の美しさを心に届けてくれ、登場人物達の痛みや慈愛を伝えてくれます。
子供達の心の問題を、優しい文章ながらリアルにつたえてくれるのは、直にそういう苦しみをもつ子供達に関わった経験がある作者の力なのでしょう。
読後も登場人物達に心を寄せて、幸せを願いたくなる物語です。