ハングオーバー(RE)クエスト!~消えた装備と仲間たち~

戸隠シノブ

1杯目~決戦前夜の宴~

~???~


「ワルヨイさま……ビシューは、ビシューは幸せでございました…。あなた様に出会いそして救われたこと…あなた様にお仕え出来たこと…あなた様と過ごした日々……そしてあなた様を……『愛したこと』……すべてが……そのすべてが…このわたくしにとって、かけがえのない大切な…宝…も…の……で………………」


〈ガクッ………〉


「ビシューよご苦労であった…。ゆっくりと休むと良いぞ………キサマ……キサマ、ゆるさん、ゆるさんぞぉおおおおオオオオオオオオオオッ!!!!!!!よくも、よくも…『ワガハイの命よりも大切な配下』たちを……コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルゾ……ハング・オオオオオーバーマぁあアアアン……ッ!!!!!!!!」


「……それは僕も同じ気持ちだよ魔王ワルヨイ・カラム……死んでいったみんなの仇を……取らせてもらうぞぉッ!!!!!」


「…お願い行かないで……お願いアナタまで失ってしまったら…、アタシ、アタシもう耐えられないよぉ~ッ!!!!!!だから、お願い行かないでよ、ハング……お願いだからさ……アタシね、…『アナタのこと愛してるの』……」


「……………ありがとう。『僕もキミのことを愛してる』よ。なおさらキミをここで失うワケにはいかない…。だから…、ヤツとの決着を付けてくるよ!!せめて…『せめて愛するキミだけでも守ってみせるッ!この命にかえてでも……ッ!!!!!!』」


「こいッ!!ハング~オォオオオバーーーーーーマーーーン…ッ!!!!!!!」


「いくぞ!うぉおおおおオオオオオオオオオオぁああアアアアアッ!!!ワルヨイ・カラムーーーッ!!!!!!!!」


〈ドゴォオオオオオオオオオオン……ッ!!!!!!!〉



「ハングーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!」








「イヤ、イヤよ『こんな結末』………こんなのあんまりだよ……ハング…、ヨーイツさん…、マーダさん…、ノンノさん…、みんな……みんな………アタシをひとりにしないでよ……………お願いだから…さ……ひとりは………イヤ…」








~サケカース城~


「勇者ハング・オーバーマンよ!よくぞ王家の最後の試練を突破し、その証である英雄の紋章を持って参られた!約束どおり王家に伝わる聖剣を授けよう!!」


魔王城の近郊にあり、常に魔王の脅威にさらされ続けているサケカース王国の王サケカース13世は、勇者に王家に伝わる聖剣とこの世界の未来を託した。

遂に勇者ハングとその仲間たちは、王家の数々の厳しい試練をクリアし「王家の聖剣」またの名を「英雄の剣」を手に入れたのであった。

そしてこの瞬間、勇者ハングは伝説の装備である「英雄の剣」、「覇者の腕輪」、「妖精王の盾」、「戦鬼の兜」、「軍神の鎧」のすべて手に入れたのである!

遂に魔王城での魔王との決戦の時が来た!!


「よし、遂に…遂に……その時が来たんだぁッ!!この世界は必ず僕たちの手で守ってみせる!!!」


その決戦前日の朝、魔王城の近くにある町「ノンダ・クレ」を訪れたハングたちは、町の住民たちから手厚く歓迎される。

その際に彼らは町の住民たちの提案で、魔王との決戦での士気を高めるための大宴会を開くことにした。

その日の夜、盛大な宴が開かれた…。

町はお祭り騒ぎでとてもにぎやかな様子であり、町の誰もが勇者一行の勝利を信じて、皆アツいエールを彼らにおくった。


~ノンダ・クレの町~


「さぁ明日は魔王との決戦だ!盛大に今日は飲もう!」


勇者ハング・オーバーマンは剣ではなく大ジョッキを片手に高らかに掲げ叫んだ。


「よっしゃ!今日は食べて飲むぜぇぇぇぇぇっ!!」


武道家ヨーイツ・ブレンは目の前の豪華なご馳走や酒に目を輝かせながらウキウキ

した様子である。


「もう、ハングもヨーイツもテンション高すぎですわよ~。くれぐれもお酒で失敗しないようにホドホドにしてくださいね」


聖女ノンノ・ベエーカーはあきれた様子で二人を見つめる。


「まぁいいじゃないかノンノ。明日は魔王との決戦だ。今日ぐらい少し羽目をはずしても構わないだろ。なーに、心配することはないさ。何かあったら私がすべて責任を持とう。だから君も安心して飲むといいぞ!」


聖騎士マーダ・ノメールは笑顔でそう言った。


『それではカンパーーーイ!!!!!』


盛大な宴がはじまった。


『ねぇ勇者様!今までの冒険のお話を聞かせてよ~!』


酒を飲んで上機嫌なハングのもとに町のやんちゃな子供たちが集まる。


「そうだな~♪じゃあせっかくだし話してあげよう!…あれは伝説装備の妖精王の盾を手にいれるため、妖精族の隠れ里を訪れた時のことだったな~。快く盾を譲ってくれた妖精王様に、妖精族に伝わる秘薬『妖精の涙』の成分について興味本意でしつこく聞きまくった結果、温和で優しく絶対に怒らないと評判の妖精王様がなぜかブチギレちゃったんだ〜。そしてそのまま唐突にバトルに突入してしまったんだよ!いやー中々に手強かったな~。そのあと一応和解は出来たんだけど、出禁になっちゃったんだ~里にねっ☆あはは♪」


『なんか思ってたのと違う…』


子供たちはひきつった顔で口々にそう言った。


『きゃあああ!ヨーイツさま~っ!』


街の若い娘たちがヨーイツの元に一斉に集まる。


「ヨーイツさま~今宵はお暇ですか~?もしよろしければ、この私と『オ・ト・ナのアツいお稽古』で、朝までステキな汗を流しませんか~!」


一人の若い娘が豊満な胸を押しつけ誘惑しながらそう言った。


「ちょっと!アンタ何ひとりで抜け駆けしようとしてんのよ!!ヨーイツさまは今夜私とステキな汗を流すのよ!!!」


他の若い娘たちも口々にそう言うと、ヨーイツの逞しい体にしがみつきはじめた。


「おいっ!俺はいま肉と酒をおいしくいただいてる最中なんだよ!もうちっと静かにしてくんないか?これじゃ食べるのに全集中できないぜ~。…まぁ、あとでみんな仲良くよ『おいしく』いただいてやるから待ってな!!」


『きゃあああああ~♪ヨーイツさまステキーーー!しびれちゃうわーーーーーっ!!』


娘たちは目をハートにして悲鳴をあげた。


そんな調子のヨーイツを見て、不満そうにしているのがノンノであった。


「ヨーイツって相変わらず女ったらしで本当に不潔ですわ!男の人っていつもそうですよね!…ったくワタクシのことなんて子供扱いして全然かまってくれないのに…。ワタクシだってもう立派なレディーなのにぃ!ううう、ヒドイ!もうサイテーですわ!信じられない!!もうそういう女心がまったく分かってないところも、本当にだぁいだぁいだぁい……………すきーーーっですわぁぁぁッ!!!」


そう言って大ジョッキのお酒を勢いよく飲み干した。


「まぁまぁ、落ち着け。あんなことは言っているがヨーイツのことだ、どうせ約束をすっぽかすだろう!前にも言ったと思うが、私が見た限りでは彼に女遊びの趣味は無いと思うぞ……なぁノンノ、ヨーイツのことがそんなに好きだったら、魔王を無事討伐し、世界に平和を取り戻してからでも決して遅くはないぞ!平和になった世界で二人で幸せに暮らせばいい。今は魔王を倒すことが最優先だろ?なっ!聖女様…♪」 


「それじゃあ遅すぎるんデスヨ~!い・き・お・く・れのおばさんには分からないかもですが…、これは『清らかで美しいうら若き恋する乙女のワタクシ』にとって、とても、とーーーっても切実な問題なんですぅぅぅっ!聖女プンプンですわ!!」


「なぁっ!?『いきおくれのおばさん』……だと?今……私のことを、いきおくれのおばさんと言わなかった?」


その言葉でマーダは凍りついた。

ノンノも決して悪気はなく、ただ酒が入っていたからつい出てしまった何気ない一言なのかもしれない。しかしその言葉はマーダをとても傷つけた。なぜならそのことをずっと気にしていたからである。


「う・う・う・う・ぶ、無礼者~!ヒドイ!ヒドイヒドイヒドイヒ~ド~イ~っ!!ずっと気にしていることなのにぃっ!ああそうさ!どうせ私は『ガサツで不器用な脳筋女騎士』だぁッ!縁談の話があってもどうせまた破談だ!そうとも!いまだに男性とキスどころか手すらマトモに握ったことがないからな!当然『アッチの方の経験』なんて・・・アハハ、ア・・ハ・・ハ・・ハ・・酒だぁ~!酒を持ってこーーーい!今夜は飲むぞおおおっ!ちくしょう~!うわーーーん!!兄上ぇーーーーーッ!!!」


どうやら悪いスイッチが入ってしまったようだ…。


しばらくし近隣の町や村からも、勇者一行の噂を聞きつけた多くの人たちが集まりはじめ、宴会はさらなる大盛り上がりをみせる。

すると近隣の村の村長が「とっておきの酒」を持ってハングの元にやってきた。


「勇者様方、今宵はお楽しみのようですね!そんな勇者様方に是非飲んで頂きたい素晴らしい酒を持って参りました」


そう言って村長は不思議な形の瓶に入った酒を取り出した。


「この酒は『魔王殺し』という名の超伝説級の魔酒でございます!この酒を飲み明日の魔王討伐で見事魔王をうち滅ぶしてくださいませ!!」


「超伝説級の酒で名前が魔王殺し!こりゃいいや!みんな集まって!」


ハングは仲間たちを自分の元に集めた。


「みんな、この酒を見てくれ!この酒の名前はなんと魔王殺し!明日魔王との決戦を控えている僕たちにとって、うってつけの名前の酒だと思わないかい?」


「おおっ!じゃあ早速みんなで飲もうぜ!明日の魔王との決戦は、こいつを飲んで必勝だなぁっ!!」


「まぁ、変わった名前のお酒ですね♪ワタクシも是非いただきますわ!」


「う・う・う、私はもう結構だ。それは君たちで飲んでくれ。すまんが、ちょっと飲みすぎたようだ。私は先に宿で休ませてもらうとするよ・・・。」


マーダ以外のメンバーたちは、魔王殺しをグラスに注ぐとこれを一気に飲み干した!


「おおっ!こりゃうまい!肉と合うぜぇっ!」


「とってもおいしいですわ~♪この力強くも深みのある味わい、もうクセになりそうですわ!聖女ニッコリんですわ~♪」


「あはは、本当においしいな~。あっ!ヨーイツ、一人でそんなにズルいよ~。ノンノも飲みすぎだって!僕にも、もう少しちょうだ・・・・・あれ?何だか頭がボーッとしてき…………………………」


勇者ハングはそのまま意識を失った。

そして後に世界を揺るがすことになる波乱に満ちた新たなる冒険が、今始まろうとしていた…。(つづく)





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