第32話蔵人の中将の求婚
あーやれやれ。
悪党どもの始末がやっと終わった。
父帝ともあの後じっくりとOHANASIして御所に帰って貰った。
あの犯罪者どもは、母更衣の実家の
ひでー現実だ。犯罪者が
――北山の寺院で狼藉を働こうとした
これが、僕が下した
両親もそれで納得してる。
なにせ、宮中の役人でもないので父帝に責任はない。
本来なら実家の
ならば、
ただ問題があった。
日本は中国と違って宦官の文化がない。
だからやり方が分かんない。
僕は力のままぶった切ったけど、それじゃあダメらしい。場合によっては切られた方がショック死する事もままあると
じゃあ、別の罰を考えようかと思った時に僧の一人が書物を見つけ出してきた。
医学関係の書物に辛うじて宦官の作り方?らしきものが描かれていたので僧達が試行錯誤で行う事になった。僕がやってもよかたんだけど、「貴き御身。穢れを負いやすい行為はお控えください」と蔵人の中将に涙ながらに説得されたので諦めるしかなかった。
北山の僧達なら信頼できるからいいけどね。去勢後には、「女房達が受けた辱め以上の事をしておいて欲しい」とリクエストとしておいた。忘れずに実行してくれるといいけど。
さー、僕達もそろそろ出発しないと!
蔵人の中将は何処かな?
「私の子を産んで欲しい!!!」
蔵人の中将のデカクソボイスが響き渡る。
その直後に小気味にいいビンタの音も響き渡った。
……なに…やってんだろう。
――京の都への帰り道――
帰りの牛車の中。
窓を開けて、馬に乗っている蔵人の中将に北山の姫と何があったのか訊ねた。
「北山の姫君に求婚いたしたまでです」
清々しいまでに言い切りやがった。
「ふりゃれたのに?(訳:振られたのに?)」
「なんの!これは姫君の照れ隠しでございます!」
ムッチャ前向き。
頬に赤い紅葉マークがクッキリついているっていうのに…まったく。
「私は姫君に家宝の宝刀をお渡しして再会の約束を交わしたのです!姫君も快く受け取ってくださった。後は、屋敷を準備して姫君をお迎えすればいいだけでございます」
既に結婚の約束をした気でいる。
でもあれは、渡されたものをつい受け取ってしまった感じだったけど?
そんなんで大丈夫?
しかも、あの刀って家宝だったんだ…なんでそんなもん普段使いにしてんだよ。
「ちゅーじょ、りょーしんのおりゅるしがいるよ?(訳:中将、両親のお許しがいるよ?)」
この時代、結婚に関して親の許しは別にいらないけど、蔵人の中将の場合、明らかに北山の姫君を『正妻』として迎えるつもりだ。
屋敷を準備するって言っているから、正式な『北の方』としてお披露目するんだろう。一本気な中将らしいちゃらしいけど。『側室』と違って『正妻』なら、親の許可はあった方が良い。
武人そのものの中将だけど、これでも、内大臣の一人息子だ。
「父上たちの許可など必要ありません」
「いや、いりゅでしょ?おとどのきょか(訳:いや、いるでしょう?大臣の許可)」
「ご案じ召されますな。二の宮様!父上たちには報告だけで十分でございます。はははははは!」
上機嫌で笑っているけど、それ、ダメなやつでは?
拗れないといいけど。
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