第14話桐壺の更衣回復、理由は桐壺帝に有り

朝、起きたら響き渡るお経の声。

何事?


外に出ると、ここは寺かな?といった具合に念仏をとなえる祈祷の嵐。

凄い人数の人がブツブツと唱えてる。

不気味だよ!

 

「桐壺の更衣様の病回復祈願のために、昼夜を問わずに祈祷をおこなっていらっしゃいます」

 

父帝の女房の一人、靫負命婦ゆげひのみょうが説明をしてくれた。

いや、余計に体調が悪くなりそうだよ。

病人をゆっくりと休ませてあげようという考えはないのか?

これじゃ、治るものも治らないのでは?


煩いお経をBGMに母の見舞いに行くことにした。すると、そこにはメロドラマが展開されてた。


「死ぬ時も一緒ぞ!後れたり先んじたりしないと約束していたではないか。必ず二人同時に逝こう、と。忘れたとはいわさぬぞ。私を捨てて先には逝かせはしないぞ!」


父帝は母更衣の手を握りしめ、涙を流しながら切々と語っている。

ちらりと横を見ると、父帝が桐壺の更衣を離さないため治療ができずにオロオロしている医師くすしたちがいた。


父よ……邪魔だ。


「我が愛する君よ、何故、私をこのように悲しませるのだ。

私を哀れに思うならば、このように悲しませてくれるな……。

我が唯一の恋人…我が生涯の伴侶よ…約束しておくれ。我らは来世でも共にありつづけると、誓っておくれ」


いつ終わるんだ?このメロドラマは。


「離さぬぞ、決して離さぬぞ」


いやいや、離してもらわないと治療できね~~~んだよ。


「そなたが儚くなれば…私と二の宮も共について逝くぞ。安心せよ。一人にはせぬ」


巻き込まれた!?

僕は嫌です!

生きたい!


「なにも心配いたすな。そなた一人寂しい思いはさせぬ。我ら親子三人いつまでも一緒ぞ」


なに勝手に心中予告だしてんだ?このオヤジは(怒)


「ああああああ、しっかりいたせ!こう…<<ドカッ!!!>>」


あっ、扇が折れちゃった。てへぺろ。

ついつい、手がでちゃった。でもいいよね、邪魔だしこのオヤジ(笑)


一応、脈みとくか…ん、正常だ。ざんね…げふんげふん。

頭にタンコブが出来てるけど生きてる(笑)


「じゃあ、くちゅちのみなしゃん、ははうえをはやくみちてくだしゃい(訳:じゃあ、医師くすしの皆さん、母上をはやく診てください)」


ニッコリ笑顔でお願いした。

ん?

なんだろう?

医師くすしが涙目でプルプルしてる。

ああ、父帝が母更衣に覆いかぶさって寝てるからか。

しゃーねーな。


父帝の足を持って、せーのっ!


ズール…ズルズルズーーズール。


この体、意外と力あるわ。足首持って成人男性を引きずれるんだもん!


とりあえず、廊下に寝かしておこう。

さあ、早く母を診てもらおう!

今度は手を組んで上目遣いでおねだりポーズ。必殺のウルウル目!


「じゃあ、きびきびみてね(訳:じゃあ、きびきび診てね)」


医師くすしたちは何故か体をガタガタと震わせていた。

僕のプリティな姿に感動したんだね!





その後、桐壺の更衣は病が全快し、父帝は大喜び。


僕のお願いした通り、国一の医師くすしや薬師に見せたようだ(父帝は懲りずに祈祷師を呼ぼうとしていた、アホか!)。

そうしたらビックリ!病回復した。


てっきり、医師くすしたちの懸命な努力の末、桐壺の更衣が全快したのだとばかり思っていたけど、どうやら違った。

大弐の乳母曰く、普通の看護であったそうだ。

懸命な治療じゃなくて、普通の治療をしただけ…?


じゃあ、今までなんだったんだ?と思ったら、桐壺の更衣が熱がでようが、咳がでようが、鼻水がでようが医師くすしではなく祈祷師を呼んでいたというのだ。

バカなのかな?


まあ、何はともあれ第一関門は突破出来た。



ただ問題がある。

これ以降も、桐壺の更衣が体調不良に陥るたびに父帝は祈祷師を大量に召喚する(やめれ!)。


父帝からしたら、目が覚めたら最愛の桐壺の更衣が全快していたのだ。

神仏の御加護だ!と本気で思ったらしい(僕としては全然同意できないけど)。

医師くすしや薬師を始め、看護にあたった者たちに対して思うところはなく、「これも全て神仏のお力のお陰である」と納得する日々を過ごしていた。


大弐の乳母にお願いして母の治療や看護にあたった人達への『褒美』を準備したのは、なんと、三歳の僕だった。

あれだけお世話になってな~~~~んとも思ってなさそうな両親に脱力だよ。


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