第12話
『第二世代型遺跡群 魔女の里』それについての情報を最も多く有しているはずの祖父へとエリックは思い切って尋ねる。
「なんじゃ『魔女の里』とは随分懐かしい名じゃの」
返ってきた気の抜けたような返事に拍子抜けしそうになるエリック。何せミーミルの泉から重要案件と言われた遺跡である。どんな危険な場所であるのだろうと危惧していたのである。初心者たる自分が危険な遺跡の情報を求めたなら身分不相応だと怒鳴られることも想定していたのだが。
「え、ただの廃墟なの!?」
「最初の頃はそれなりに遺物も見つかったみたいだがの。なにせ人里からの距離もそう遠くない場所ということもあって早々に発掘し尽くされた場所だの」
「そうなんだ…例えばの話なんだけど手つかずの未踏破領域が残ってたりは無いのかな」
そんなはずはないと必死に食い下がるエリックに対して祖父はニヤッとした笑みを浮かべる。
「なんじゃエリック、今日はずいぶんと夢見がちなことを言うじゃないか」
「そ、そういう訳じゃないんだけど」
確かに傍からみればそう勘違いされそうな言動だと気が付き。少し恥ずかしくなってしまう。
「あそこはもう『死んだ遺跡』じゃからの。トラップなんかもすでに起動か破壊済みでな。ワシも試しにと向かった事はあるが何も残ってないただの廃墟だったぞ」
『死んだ遺跡』と聞いてエリックはさらに混乱する。探索者界隈で言われるその言葉は踏破済みの全てのお宝を根こそぎ掘り尽くされた遺跡に使われているものだ。もちろん遺跡の防衛機能なんてものは破壊済みであり、その時点で全てが丸裸にされているも同然である。そんな場所になんの再優先があると言うのだろう。
「今や観光地としての価値くらいしかないとおもうがのう。そうじゃなあそこなら危険もない。リハビリがてらに見てきなさい。地下へと降りて行く迷宮型の遺跡じゃ勉強にはなるじゃろうて」
混乱のまま次の探索が決まる。呆けていたためにエリックはつい聞き逃してしまうことになる何気なく祖父が続けて漏らしたその場所の名を。
「それとの、最深部にある『鏡の間』は一見の価値はあると思うぞ」
三度目の世界の反逆者 虎太郎 @kuromaru
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