第33話 窓越しに従姉と話す

フォロワー100人いきました。ありがとうございます。

また小説家になろうの方でも連載始めました。

現在12話まで投稿していますが、来週中にはこちらと更新頻度は同じになるかと思います。


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 早いものでもう明後日の土曜からゴールデンウィークが始まる。明日の夜のリハ終わりから俺は9日間RAMの事務所に泊まり込みになる。この事を叶さんに言い出す時、家が近いのに泊まりたいとか何て言われるかなと不安だったので色々言い訳も考えていたがいざ言ってみると「この世界、朝が早いし夜も遅いのも多いからな。高校生が夜遅くや朝早くに外をほっつくのも親御さんも心配するだろう。別に良いぞ」とあっさり了承を貰えた。


一応練習に行く前に父ちゃんと母ちゃんには確認をとった。父ちゃんも母ちゃんも反応は「あんたの好きにしなさい」だった。ちなみに縁英高校はカレンダー上、飛び石連休になっていても原則、ゴールデンウィークは最初から最後まで休みという事になっている。これは俺にとって非常に都合が良い。これで俺自身が大怪我や病気にでもならない限り、これから3年間、ゴールデンウィークは毎日現場に入れるんだ。



 という事で練習が終わり、いつも通り銭湯でひとっ風呂浴びて帰って今は明日からの泊まり込みの準備をバックに詰める所だ。ただしバッグは通常持っていくものではなく、旅行用のそれなりに大きいものにした。何せ9日間泊まり込みなので着替えが大量に必要だ。先々週のデビュー現場で着替えを持って行かなかった為、帰りは汗だくのTシャツにチーム用ジャージを羽織るという状態だった。流石にあれは気持ち悪かったので今回はTシャツは少なくとも1日2着分持っていく、なので結構な量だ。


 あ、そういえばRAMの衣装倉庫には洗濯機が3台備え付けてある。それは基本的には衣装の洗濯の為に使うのだが、衣装を洗っていないかつ、邪魔にならないのなら私物にも使っていいと言われている。干す場所も勿論衣装の邪魔にならない所を間借りする形になる。

 じゃあ別に毎日別々のにしなくてもいいか。という事でTシャツは10枚位、パンツや靴下は5着位にして途中でタイミングを見て洗えば大丈夫か。なら大分荷物を減らせるぞ。

タオルも5枚位でいいか。あーでもジャージの下はどっちみち足りないんだよな。



「連ちゃん」



 うん?俺を誰かが呼んでいる?何かがやってくる?誰だ!誰だ!誰だ!?


 窓の方を振り向くと俺の部屋の向かいの部屋の窓からチャームポイントのポニーテールを降ろして顔を熱らせたアヤがこちらを覗いて微笑んでいた。

普段、俺は帰宅すると部屋を一通り換気した後、窓のシャッターを閉める。今日は換気をしたはいいが、シャッターを閉め忘れてたようだった。


 そして何故アヤがいるかというと俺の部屋の向かいの部屋が芹野家のアヤの部屋だからだ。

 そういえば何気にアヤとこうやって窓越しに話をした記憶が無い。アヤが忙しいというのは勿論あるが、アヤがデビューする前も余り無かったはずだ。恐らく、俺が帰宅すると換気をして窓のシャッターを閉めるのは昔からの癖だからだろう。



「あぁアヤお帰り。今日もリハお疲れ様」

「うんただいま。今日は珍しいね。窓のシャッターが閉まってない」

「今日は今まで閉めるの忘れてたんだ」

「じゃあ今日はラッキーだ。こうやって窓越しでも連ちゃんとお話できるのは嬉しい」

「それじゃあそろそろ閉めるね」

「ちょっと待ってよ連ちゃん!折角だからもう少しお話ししようよ」



 シャッターを閉めようとする俺をアヤが慌てて静止する。暖かくなってきたからと言っても今は4月だ。まだ夜は少し冷える。明日の夜からはゴールデンウィークの為、泊まり込みだ。風邪は引きたくない。



「明日からゴールデンウィークだね。連ちゃんは…ヒーローショーだよね、うん」


 少し寂しそうな顔をするアヤ。アヤ達「ディーヴァ」は5月5日の穂希の生誕祭ライブに向けて今はリハーサルの真っ最中だ。そしてゴールデンウィーク最終日でもある。折角、関係者席を用意してくれたのに俺は現場を優先して行けなくなった。改めて思い出すと申し訳なくなってくる。



「本当にごめん、アヤ」

「良いよ。謝らなくて。仕方ないんだよ…。うん、仕方ない……」



 俺ではなく自分に言い聞かせる様なアヤ。アヤにそんな事をさせているのは自分だと思うとやはり申し訳なさしかない。



「それよりさ、初めてだよね。こうやって窓越しにお話しするの」



 やはりアヤとしても何となく居心地が悪かったのか話題を変えてきた。



「確かにね。家が隣同士で部屋が向い合せなのに」

「それは連ちゃんがいっつもシャッターをすぐ閉めちゃうからだよ」

「まぁ、昔からの癖、みたいなものだからなぁ」

「わたしはこうやっていつも窓越しでもお話したかったんだけどなぁ。何だか漫画とかであるじゃない。幼馴染っぽいというか」

「あー確かに」

「いつもわたしは連ちゃんの部屋の窓のシャッターが閉まっているのを見て、今連ちゃんは何をしてるんだろう?寝てるのかな?特撮を観てるのかな?とか思ってるんだよ」

「えっそうなの?」

「そっ!それより!」



 急に顔を赤くしだしたアヤがまた話題を変えてきた、忙しいなもう。



「その荷物、何?」



 アヤがそんな事を聞いてきた。視線の先には荷造り中の荷物とバッグがある。



「あぁこれ。明日の夜からリハでそこからゴールデンウィークは事務所にずっと泊まり込みだからさ。その準備」

「え?泊まり込み……?」



 アヤの顔から血の気が引いた様になった。



「何で!?アクションチームの事務所って学校の近くで徒歩で行ける位近いんだよね?それなのにどうして!?」

「どうしてって…?」



 何故かアヤが慌てている。単純にショーに集中したいのと朝早く夜遅くが毎日続くのに姉ちゃんが絡んでくるのが面倒だから。いや本当毎日大変なんだよ。朝から蕩け切った姉ちゃん、相手にするの。ただでさえ話聞かない人なのに朝は余計に話聞かなくなるし抱き着かれているのを解くのも一苦労だし。しかもショー現場はかなり遠い場所でも開催される。なので集合が午前4時とか午前5時とか当たり前にある。そんな状況で早朝というか夜中から姉ちゃんの相手をして疲れた状態で現場に向かうとかマジで勘弁してほしい。



「ショーに集中したいのと姉ちゃんの相手をするのが大変だから」



 だから理由を正直に言った。アヤはあ~と言った表情になった後、少し悔しそうな顔をした。



「水沙も自業自得だね。でも、それで連ちゃんがいなくなるのか…。もう一体何やってるの…」

「アヤ?」

「じゃあ連ちゃんはこれからずっと居ないんだね…」

「そうなるね」

「そっか…。連ちゃんの顔を見てライブ本番まで頑張ろう!と思ってたんだけど…」



 また寂しそうになるアヤ。そう何度も寂しそうにされるとこちらも辛い。罪悪感でいっぱいになる。



「まぁわたし達はわたし達で何とか頑張るよ。連ちゃんも頑張ってね」

「あぁ、ありがとうアヤ」

「ライン毎日送るね。電話もするよ。それに自撮りも」

「いやそれは良いかな」

「連ちゃんが良くてもわたしが良くないの!」



 アヤがかなり強めに言ってきた。別にそんな毎日ラインとか自撮りとかいらないだろ。アヤ達ももっと色々やる事あるだろう。



「連く~ん♡」



 廊下から姉ちゃんの声が聞こえる。風呂から上がった姉ちゃんが俺の部屋に来る気だな。



「水沙の声…。何だ今日はこここまでか。もっとお話したかったのに…」

「今日も十分話したんじゃないか。アヤも疲れてるし、夜風も浸りすぎるのは良くない。ゆっくり休みな」

「うん、そうする。お休み連ちゃん」

「お休みアヤ」



 そう言って窓を閉めてカーテンを閉じるアヤ。俺も窓を閉め、シャッターも閉める。

そしたら姉ちゃんがやって来た。またスカイタイプで。

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