第七話 ファンタジーしてる

四時間目の終わりのチャイムが鳴る

今から昼休みである


結局あの後鈴木が土切に会う事は無かった


いつも通りの登校である


いつも通りでない事をあえて挙げるならば

堀辺が登校していない事と

何度確認してもリュックの中に弁当箱が二つ入っている事である


今朝玄関で入れた弁当箱は二つ目だったという訳だ


金曜日


いつもならばここで

堀辺が俺の机と自分の机を連結させ

向かい合って弁当を食べていたのだが


今日は堀辺が居ないので

自分の席でボッチで食べる事になるのだが


正直堀辺が転校したという実感が湧かない


振り返ればそこに堀辺が居る気すらする


鈴木は自分の机の上に二つ弁当を置く


やはり

もう一つは土切に渡せという事なのだろうか…


鈴木は少し考えた後

弁当を両方共持って保健室へ向かう事にした



「あら

自分の意思で自分の食事を差し出すとは

殊勝な心がけね

奴隷という自覚が身に付いたのかしら?」


自覚したくねーな


「いや

一つ余分に貰ったんだ

だからお前に…」

「お前?」


土切の鋭い眼光が鈴木に突き刺さる


やはり昨夜のあれは夢であったか


「可憐な美咲様に献上致します」

「ええ

頂戴するわ」


二人は手を合わせ「頂きます」と言ってから

弁当を口にする


「そういえば

自分の弁当は用意してないのか?」

「していないわ」


即答


「そもそも私は昼食を食べないのよ

昔そういう英才教育を受けたの」

「へ、へぇ…

その割りには初めて会ったときぐったりしていた気がするが」

「あの時は…」

「あの時は?」


そこで土切は一度深呼吸をする


「あなたが持っていたパンが欲しくて

わざと空腹の振りをしていたのよ」

「そっか

それじゃあこの弁当はいらないn…」

「張り倒すわよ」

「ごめんなさい調子に乗りました」

「わかればいいのよ」


なんだこの茶番


「そういえば美咲はどうしていつも保健室にいるんだ?」

「なるべく他人と関わりたくないだけよ」

「そ、そうか…」


まぁこの性格だと人付き合いも苦労するだろう


「関わりたくなさすぎて

産まれてこの方私は授業と言うものを受けたことがないの」

「それは流石に言い過ぎたろ…」

「ええかなり

いえ少し誇張したわ」


というかこの言い回しだ

絶対その他大勢との会話はあまり向いていなさそうだ


「何でそんな関わりたくないのかって訊いていいか?」

「そうね…

どうせその内バレる事でしょうし

特別に教えてあげるわ」

「あざっす」


鈴木の軽い返事に少し土切は眉を潜めたが

それでは話が進まないと思いスルーする


「私

嘘を聞くと頭が痛くなるのよ」

「何その微妙な異世界ファンタジー」

「ええ

私はファンタジーなのよ」


土切の話を要約するとこうだ


嘘が見抜ける


実際は脳と目を酷使する事で

相手の表情、仕草、体温や汗までも感知し

嘘かどうか判断出来る

というものだった


「にわかには信じがたいな」

「まさかご主人様を信用出来ないのかしら?」

「そうじゃなくて

何か急に予想外の事言われて頭が混乱してるっていうか…」

「それじゃあ売店のおばさんの所にでも行ってみる?」

「え…まぁ良いけど」

「あの人もファンタジーしてるわよ」

「は?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る