第六話 違和感

小鳥の囀りが聞こえる


起き上がろうとすると体に痛みが走った


鈴木は少し呻き声をあげるが

すぐさま昨日の事に思いを馳せた


まるで夢の事のようだ


確か美咲に抱き寄せられて

そのまま寝落ちしたんだったか…


まぁ

夢か


だって


「じゃあ何で俺が床で寝てんだよー!」


外で囀ってた鳥がバサバサと羽音をたてながら飛び立つ


ベッドの方に視線をやるが

そこに美咲は居ない


まぁそもそもあんな事

美咲がやる訳は無いか


あれはきっと夢のだったのだ


部屋から出て階段を降り

リビングの椅子に座る


そこには自分と母の分の食事が置かれている


いつもの風景


やはりそこには

美咲の分の食事は無い


「あら蒼真

起きてたなら言ってくれれば良いのにぃ」

「うん」

「…?」


今日は何も喋らずに朝食を終え

身支度を整える


玄関で靴を履いていると

後ろからギシギシと足音が聞こえてくる


「蒼真

忘れ物」


そう言って母が差し出したのは弁当だった


そっか

今日は金曜日か


金曜日の学食にはパンが無いから

毎週弁当を作ってもらっているのだ


「ありがとう」


弁当を受け取り…


ん?


確かに俺はリュックに弁当を入れた筈だが…


違和感はあるものの

半ば反射的に弁当をリュックに入れ

今度こそ玄関を出た


「行ってきます」



真っ白な空間


先程まであった筈のテーブルや椅子達は姿を消し

そこには一人の朱色の髪の少女と執事のような格好の男性が居た


「じゃんけんつまんないねー…」

「…そうですか」

「まぁ半分以上…いや、九割九分十厘アルテミスが悪いんだけどねー」

「申し訳ございません」

「ほんっと

そういうとこだよそういうとこ」

「は、はぁ…」


少女はアルテミスに興味を失くしたのか

拍手一つ


瞬時に目の前に先程と同じようなテーブルと椅子達が並ぶ


そしてそのテーブルの中心には謎の球体が浮かんでいた


そこに見えるのは玄関から丁度出ていった鈴木の姿であった


少女が椅子に腰掛けると

少女に付き従うように向かい側にアルテミスが座る


「あのさー

昨日から始まったこの世界だけど」

「昨日から?」

「あ、いや

何でもない」

「…?」


少女はやっちまった

と言わんばかりの表情をするが

相変わらずハテナの表情を浮かべるアルテミスを一瞥すると

溜め息を吐く


「なーんで観測なのかなーって」

「それがセカイの意思ですから」

「でもさー

私は嫌だよ?

自分で出来る事をしないってのは」


そう

私が命令されたのはこの世界の観測


エンターテインメント


そう言ってしまえば気楽に見れたのかも知れない


でも

私が目の前にしているのは人間の生き様だ


助力してあげたいというこの気持ちに嘘はつけない


セカイからの神託…か…


私の目の前には沢山の未来がある


あの子が笑える未来

あの子が絶望する未来


自分勝手ってのはわかってる

でも

私はあの子を見捨てられない


「私が救わなきゃ…」

「メグ様…」

「何?何か文句ある?」

「ええ

まだその世界を見るなと言った筈ですが?」

「あ、ごめんなさい

えと…

しりとりする?」

「何ですかその奇妙な名は

しませんよ」

「えー!」


私はどうするべきだろうか…

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