第四章 chapter4-4
「……あれ?ここは……」
目を覚ました私はベッドから身を起こすと部屋の中を見渡した。
「そっか、私はみかさを助けるために雪声の家に泊まったんだ……」
私はベッドに一人腰掛け状況を確認していると、部屋の扉が開く。
「桜夜、起きました?準備を始めるので来て下さい」
「おはよう、雪声。判ったわ」
「私の服をそこに置いてありますので、それを着てきてください」
雪声はそう伝えると部屋を後にした。
私は立ち上がると雪声の用意してくれた服に着替える。
普段殆ど着る事の出来ないブランド物のワンピースに私はため息をついた。
「彼女の身代わりになるから彼女の服を着るのは当然と言えば当然なんだけど……」
着がえ終わると、どこか気恥ずかしさを感じながら部屋を出る。
「こんな時でなければ嬉しいんだろうけど……」
どこかこの状況を自分が楽しんでいる気持ちに私は気がついていた。そんな風に考えている時ではないと慌てて首を横に振った。
隣の部屋に私が入ると既に雪声と津々原が朝食の準備をして待っていた。
「思ったよりも似合ってるな、馬子にも衣装って奴かな」
津々原がつい漏らした感想に私は思わずむっとする。しかし昨日の会話から彼の性格が良いとはとても言えない事は判っていたために無視する事にした。
「取りあえず、今日の事を食べながら説明するから早く座れ」
「は、はい」
津々原に急かされた私は慌てて空いてる椅子に座った。
そんな私のことを見て雪声がクスリと笑みを浮かべた。
昨日の今日で雪声とどう接して良いのか、判らなくなっていた私はその小さな仕草で助かった気がした。
「さてこれからのことだが、昨日話したとおり君には雪声の代わりとして私と一緒に人質交換に来て貰う、それはいいな?」
津々原の言葉に私は黙って頷いた。
「その際に雪声は別行動をする、一緒に来ては意味がないからな」
「極力人質交換の場で人質を助ける努力はするが、無理そうなときは人質交換に応じ、それから君に持たせた発信器で君の場所を特定し、救出する」
正直、私は津々原のその言葉を信じる事ができなかったが、昨晩の雪声の言葉は何故か信じることが出来た。
だからきっと大丈夫だと根拠はなかったが、そう思うことが出来た。
食事が終わり、雪声が席を立つ。
「それではこれからメイクします」
「ああ、判った、頑張ってお前に似るようにしてくれ」
コクリと雪声は津々原の言葉に頷くと、私を隣の先ほどまでいたベッドのある部屋へ行くように促した。
部屋の扉を閉じると、雪声は小さく息を吐いた。
「ごめん、嫌な気持ちにさせて」
雪声のその言葉で、あのタイミングで席を立ったのは彼女なりの気遣いだと私は理解できた。
「それじゃ津々原に文句言われないようにメイクをするね、ドレッサーの前に座ってもらえる?」
「メイクも雪声がやってくれるの?」
「……私じゃないと私らしさが判らないから」
「……あ、そう言われてみるとそうだね」
雪声にそう言われ私自身がやっても彼女と同じようはできないと判り、そのまま促されるままドレッサーの前に座った。
しばらく後、まるで姉妹であるかのようなメイクを施された私の姿がそこにはあった。
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