九話 キューピッド
「父さんはいつくらいから仕事に行く予定?」
「そうだなぁ、社長とも相談してみないといけないから、まずは電話でアポとって、日程を組むところからだわ」
「まさか、パートに降格したりしないよね?」
「それはないだろう」
父さんは苦笑いを浮かべた。
「それとね、」
「なんだ?」
「仕事が横井さんと父さん一緒だよね? 僕がキューピッドになるよ」
「は? なにいってるんだ、おまえ」
「夜になったら横井さんに電話してデートしなよ」
「おまえ、気持ちは嬉しいが加奈の気持ちだってあるんだぞ」
僕はニヤリとした。
「きっと、大丈夫だよ」
「なにを根拠にそんなこと言ってるんだ? もしかして、おまえ、加奈からなにか吹き込まれたな?」
ふふん、と僕は鼻で笑った。
「答えろ」
「何も言われてないよ」
「本当か?」
「ほんとうだよ」
「そうか、わかった。じゃあ、するか」
僕は笑ってしまった。
「何で笑うんだよ?」
「いやあ、何でもないよ」
父さんは横井さんと結婚して幸せになって欲しい。まだ、父さんだって若いから。性欲だってあるだろう、兄弟が出来てもいいと思っている。異母兄弟。
そして、夜八時ころ。
「そろそろ電話してもいいんじゃない?」
僕が父さんに言うと、
「そうだな、かけてみるか」
言いながら木製のテーブルの上に上がっているスマホを父さんは取った。
「あっちへ行っててくれ」
「なんで? いいじゃん。いたって」
「いいから自分の部屋に行け!」
電話をかけながら言っている。僕は笑いながら二階の自分の部屋に行った。
約十分後。父さんの「よし!」という気合いの入った声が響いてきた。きっと横井さんは、父さんとのデートをOKしたのだろう。そう思っていると、
「昭雄ー!」
階下から僕を呼ぶ叫び声が聞こえたので、リビングに降りた。
「どうだった?」
父より先に僕は言った。
「デートはしてくれるそうだ」
「おっ! よかったね!」
「ああ。おまえが背中を押してくれなかったら、デートはしていなかった。ありがとうな」
「いやいや。それはよかった」
僕の策略は成功した。あとは、父さんの愛をぶつけるだけだ。果たしてどうなるか。うまくいくといいけれど。
「それで、いつ会うことにしたの?」
「今週の土曜日だ」
「そうなんだ。どこで会うの?」
「札幌に行ってくる。この辺じゃあ、何もないからな」
「確かに。泊まってくるの?」
「そうしたいのはやまやまなんだが、初デートで泊まりはまずいかな、と思って言わなかった。だから、日帰りだ。遅くなるとは思うがな」
こうして僕の作戦は成功した。でも、父さんと横井さんの関係が今後どうなるかまではなんとも言えない。できれば結婚して欲しい。そういう策略だから。
つづく……
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