18.咲けよ乙女、魅せるは閃光
一進一退の攻防に、観客の歓声は止むこと無く少女たちの身体を叩いた。
開かれた間合いでも、一瞬の隙が命取りになりかねない状況で、お互いが動きを観察している。
「ちっ、邪魔くさいッ!!」
マグライトの束縛系の魔法の檻を、メリーは手に持った鉄杭で叩き割る。甲高い破裂音とともに、光の粒子が風に乗り消失した。
これで、3人の状況は戦闘前へと戻されることとなる。
「あなた達、共闘でもしているのかしら?」
マグライトがセルとメリー両方に視線を送り、どちらが攻めてきてもいいように腰を落として構える。
「別に。メリーが先にあなたを殺したら、わたしがあなたを殴れないじゃない。一発入れるまでは、わたしの方も尊重してもらないと」
「うっさいわね。あたしの邪魔すんなら貴様も一緒に串刺しにするわよ」
「そのおもちゃがわたしの
「なんですってッ!」
セルとメリーの様子をニヤニヤとしながら眺めるマグライト。
「「笑ってんじゃないわよ!」」
2人の殺意が猛襲と成ってマグライトへ迫る。
螺旋を巻いて、2本の鉄杭がマグライトに疾走する。
弾丸のような速度で放たれるそれを、マグライトは最小の動きで躱し、魔力を両腕に込め、――メリーへと肉薄した。
跳躍にも匹敵する踏み込みは、メリーの肉体を強張らせる。
鎖の上を滑らしながら、火花を散らして進むマグライトの前腕が、メリーの胸板に叩き込まれた。
炸裂する魔力が爆風を巻き起こす。その勢いでメリーが吹き飛ばされ、衝撃が土煙を舞い上げた。
その影に――刃に魔力を込めたセルの一突きが奔る。
突きの衝撃で、遠く離れた岩が粉砕される。
紙一重で躱したマグライトは、
「――『
腕に巻き付く魔力の渦が、運動エネルギーとなって弾丸と化す。
「――『サンダーボルト・バルカーノ』――!!」
雷の弾丸へと化け、セルを撃ち抜かんと連続で射出された。
その弾丸を受け止めるべく、セルが大剣を突き立てる。
数十発の雷の弾丸の威力は、着弾するたびに爆発を起こし、地面を抉り、視界を奪うほどの土煙を上げた。
「これじゃあ、やれないわよね」
そう呟いたマグライトに、再び鉄杭が投擲される。
不意打ちで放たれる投擲を避けたが、繋がった鎖が蛇のように自在に動き、マグライトの腕へと絡みつく。
力強く引っ張られるが、体勢を崩さぬようマグライトが踏ん張る。
「――捕まえたわ。もう、これで逃さない」
土煙の先から、わずかに焦げ付いた胸元から煙を上げたメリーが歩みを進めた。
「流石ですわ、メリーちゃん。その一途な思いにワタクシ焦げちゃいそう」
「減らず口を。貴様のしでかしたものをあたしは絶対に許さない。あたしの暗殺も
メリーの怒りに満ちた表情に冷や汗が出る。その時、マグライトはアリーナを漂う魔力の雰囲気に、異物を感じた。
「――おいおい。わたしも混ぜなさいよ」
土煙が晴れると、
「あなたも、相変わらず馬鹿げた耐魔性ですわね。あれでも、ワタクシの全力でしたのに」
メリーに叩き込んだ一撃も、セルへと向けた弾丸も、マグライト自身手加減していない。
両者とも討ち取るつもりで、全力の魔力をもって対峙している。
それを、――片や軽傷、片や無傷で帰還した。
「よく言うわ。魔法は受け止めれても、衝撃までは中和できないというのに。この剣に捕まらなければ、今頃壁までひとっ飛びよ」
そう、マグライトの魔法は、最早魔力だけで錬成されるものではない。
先程の『サンダーボルト・バルカーノ』も、並の魔法少女の出力の10倍はある。それが、3倍ほど多く射出される。
一発一発が砲弾に匹敵するほどの威力に、人の踏ん張りだけでは耐えれないほどの衝撃となる。
その砲撃も、セルは大業物『テリオン』の強度を利用して刃を地面に突き立て、吹き飛ばされないよう踏ん張っていたに過ぎない。
魔法によるダメージはなくとも、物理的な衝撃を耐えるには、はやり研ぎ澄まされた判断力があってこそ。
――またしても、戦況は振り出しに。互いが互いを打つ優良な一手を、未だ見いだせていない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます