第41話 聞き耳

元就との面談を、と交渉すること二日後。

隆元は悠月を伴い、松井のもとに訪れた。


「すっかり家臣だな、悠月」

「そう思っても構わない」

悠月は眉一つ動かさない。

「父上との面談は可能じゃが、私も同席させてもらう、これが条件じゃ。良いか?」

「構わない」

元就と1対1の面談ならまず拒否されるだろう。

松井はそう思っていた。


翌朝、松井は悠月、隆元同席の上で元就と面会した。

「お主が、我が息子を攫おうとした輩か」

「……僕は、尼子に助けてもらった身ですから」

松井は淡々と答える。

「徳寿丸を連れ去ろうとしたことには間違いないのじゃな?」

「ええ、そうです。あまりにも、可愛い子でしたから」

松井はやはり淡々と答えた。


徳寿丸は、元就も特に可愛がっていた。

正室との間では末の息子なのもあるが、まだまだ可愛い年頃だ。

その徳寿丸は、やはり相当怖かったようだ。

ほとんど部屋に籠って怖がっているという。

「まだ幼子の息子に、あまりの行動をされたのう」

元就は言い方こそ穏やかだが、明らかに非難していた。

襖が少し開いている。

「……これ」

隆元は小さい声で注意して、襖を閉める。

こっそりと少輔次郎と徳寿丸が聞き耳を立てていたのである。


「やっぱり兄上がいた」

「兄上はお話の内容を教えてくれないもんね」

「そうなんだよなぁ」

少輔次郎は苦笑いする。

徳寿丸は好奇心が旺盛のようだから、隆元や元就の話には常に興味津々で会った。


「もし、吉田郡山城で戦いが終わったらどこか一緒に行こうぞ」

「嬉しいな、兄上! 私も連れて行ってね」

「約束ですよ! ゆーびきりげんまーん」

「嘘ついたら針千本飲ます」

「指きった!」

二人は少しの時間しか用意ないであろう時間を、二人で散策しようと約束をした。


「して、お主の本当の目的はなんじゃ?」

元就は松井をしっかりと見据えた。

松井はその瞳に罪悪感を感じ、目をそらした。

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