第28話 内応策
悠月は本丸に戻るなり、元就へ直談判したい、と隆元に申し出た。
「唐突じゃな」
隆元もその言葉には苦笑いしたが、拒否はしなかった。
「なんぞいい策でもあるのかもしれぬし、父上と面会を許可しよう」
隆元と共に、元就の元へ向かう。
「おお、お主か!」
「元就様、突然の申し出をお許しくださり、ありがとうございます」
「そう固くならんでも良い」
元就は相変わらず穏やかに諭す。
そして、隆元及び悠月に笑顔でまた餅を振る舞った。
「やはり餅は美味いのう」
「父上はよく餅を食べておられますな」
隆元も一緒になって餅を食べている。
「して……、いかような用じゃったかの?」
「はい……、尼子方の動向に対し、次はどうされるのかと……」
「ふむ、確かにそう思うのも致し方あるまい。だが、心配には及ばぬ」
「と、申されますと?」
「数人、あえて投降させた兵がおる。いわゆる間者なのじゃが……、陣を城の南に立てるよう誘導させるよう指示はしておるのじゃ」
「城の南、つまりは城の正面ですか……!」
「毛利軍から投降し、元就の首を上げるためになどとうまく誘導できれば城の南に陣取ることなど容易かろう」
元就はそう言って笑っていた。
一方で尼子陣営内。
元就の策通り、毛利軍から投降したという足軽が数人いた。
「元就の首、今度こそは!」
「でしたら、良き策がございます」
足軽たちは真剣な表情で言う。
「お主たちは毛利軍から逃げてまいった者じゃな。ならば、陣をどこにすべきかわかっておろう?」
「ええ、もちろんでございます」
足軽の目は怪しく笑っている。
だが、尼子晴久はそれを見抜くことができなかった。
「お待ちください」
「なんじゃ?」
松井は尼子に意見を聞くのを止めさせる。
「毛利から下った、という者の意見を素直に聞き入れては危ういかもしれませんよ」
「う……、うむ、確かにそうであるな」
「我らの策が怪しいと申されますか、晴久様!」
「そうじゃな。次の戦次第でござろうな」
「しかし、晴久様……」
「こたびはお主ら足軽の者どもの意見を採用する」
足軽たちはホッとしていたが、松井は苦々しい顔をしていた。
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