13話 研修旅行(3)
「本当にすまないんだが、思わぬ予約が他に入って部屋数が足りないらしい。
お前ら4人で一緒に寝てくれないか?」
「「「「はい!?」」」」
意味がわからない。
これがまだ仲の良いグループだからいいものの……
いや、おそらくここの4人は何もやらかさないと信じての選択だろう。
なぜこうなったのか必死に記憶を呼び戻す。
それはほんの数十分前のことである。
「ずいぶんと大きいホテルですね……」
星空観察が終わり、これで今日の行事は終わりであった。
そして旅館についたのだが、思っていたよりも大きい。
「ここは校長先生の親戚が経営しているらしく、毎年一クラス泊まっているそうだ。
部屋数が多いから1班あたり2部屋だ。
男子と女子、分かれて寝るんだぞ!」
かなり広そうだ。
8班もあるのに、1班あたり2部屋ある。
クラス毎に泊まる旅館は違うみたいだが、かなりの当たりを引いたようだ。
「夜は俺達が問い詰めるから覚悟しけよ?」
「咲ちゃんは寝かせないからね?」
どうやら逃げられないらしい。
おとなしく白状しようと思っていたのだが、その時に先生に同じ部屋で寝てくれと伝えられたのだった。
話は今に戻る……
「え…… 4人で一緒に寝てくれってどう言うことですか?」
状況が飲み込めない。
「その言葉の意味のままだ。
ベッドは4人分用意してくれているらしい。
三上は芝田と付きあっていると聞いたし、佐藤はなにもやらかさないだろう。
お前らを信用しての選択だ」
いくらなんでもさすがに無理だ。
クラスのアイドルである三日月さんと一緒に寝たなんてバレたら関係が怪しまれてしまう。
「すいません、さすがに無r……」
「もちろん大丈夫です!」
「いや待って?」
断ろうとした瞬間、三日月さんに割り込まれた。
「さっき関係が~って言ってたのに大丈夫なの? まずくない?」
「ん? なにか不都合なことでもあったか?
佐藤も三日月と付きあっているものだと思っていたのだが」
「え?」
話が余計混乱してきた。
なぜ先生は俺達の関係を知っている?
「いや、さすがに学校でもあんなにイチャイチャされたらみんな気づいていると思うぞ……
毎日あんなに見せつけておいて佐藤達は隠しているつもりだったのか?
最近の恋愛にはついていけねぇよ……」
どうやらとっくに手遅れだったらしい。
蓮と凜も顔を合わせて苦笑いしている。
「いや…… うん。
実は前々から噂されていたんだが、面白そうだから隠していたんだ。 すまんな優真」
(なぜだ……
それなら関係をみんなに公表するか悩んだ意味がないじゃないか……)
「その調子なら了承してくれるみたいだな。
めちゃくちゃ助かる」
「もちろんです!」
結局、関係を公表することに決めた俺達であった。
「ちなみにホールで晩飯を食べる。
お前らは少し遠いから時間はしっかりな」
確かに遠そうだ。
少し早めに出ることにしよう。
そうして俺達は部屋に向かった。
「ベッドふかふかだ…… 優真も寝転んでみたらどうだ?」
部屋に入ってすぐ蓮と凜はくつろぎだした。
この状況で、いや毎日こんなベッドで寝てるから…… なんて言えない。
「あ~動きたくねぇ……
Hey Yuma この後の予定は?」
「俺のことをSiri扱いするな。
えーっとこの後の予定は……
飯食って、風呂入って後は自由だな」
しばらく時間が空くみたいだ。
俺もゆっくりしようかと考えていると、
「まだ時間あるみたいだし、今日の成果を聞かせてもらおうか優真」
「そーだよー! 私達協力したのに内緒なのはずるいよー!」
どうやらゆっくりできないみたいだ……
覚悟を決めて、話すことにした。
そうして数十分後。
「もういい……
分かったから口を閉じてくれ……」
「大丈夫……
これ以上は聞かなくても分かるから……」
なにやら二人が悶えているが、俺は三日月さんの良さを一から語っているだけだ。
「優真くん…… もうだめです……」
隣で三日月さんも真っ赤な顔で悶えている。
さすがにこれ以上はやめてあげよう。
ちょうどご飯の時間だ。
さっさと移動するとしよう。
「そろそろ時間だぞ。
早めに移動してしまおう」
「「「はーい!」」」
ちなみに俺達は4人用の大部屋のため、クラスメイトとは離れた場所だ。
ホールの近くまでは人がいない。
「優真くん! 優真くん!」
「どうしたの?」
「呼んでみただけですよー。 えへへ……」
俺の腕に抱きついて三日月さんはうっとりとしている。
(そうか…… これが俺の奥さんか……)
考えるだけで顔がにやけてくる。
「ごほん…… ところで優真達は関係をみんなには明かすのか?」
むぅ、せっかくいいムードだったのに。
俺らのことを忘れるなとでも言いたいのか。
「三日月さんはどうしたい?」
「少し様子を見てみた方がいいかと。
けっこ…… お付きあいして時間がたっているわけではありませんし」
「咲ちゃんポロっと言っちゃいそう……」
そんな会話をしながら俺達はホールへと向かった。
「見ろよ優真!
すっごい豪華だぞ!」
「確かにこれはすごいな……
大きいホテルのバイキングなだけある」
本当においしそうだ。
まあ俺の一番は三日月さんの料理だけどな。
「おい優真。
まさかここまで来て三日月さんの手料理の方が美味しいなとか思ってないだろうな?」
なんで分かるんだよこいつ。
まじもんのエスパーじゃねぇか。
「なんでもいいじゃん。
とりあえず今はありがたく食べようぜ」
「それもそうだな」
「「いただきまーす!」」
この後、蓮が腹を壊してまた苦しむのは別のお話。
ご飯を食べて風呂に入り、あとは点呼まで部屋で待機することになっている。
「点呼まで他の子の部屋に行ってくるね~
二人きりだからってえっちぃことしちゃダメだよ?」
「そんなことしませんよ!?
そういうことはお家で…… むぐぐ」
とんでもない爆弾発言をしかけた三日月さんの口を急いで塞ぐ。
「これ以上夫婦漫才見てたら死んじゃう……
さっさと行くことにするね」
なにやらそそくさと出ていってしまった。
「さて…… 2人きりですね……」
「待って目が血走ってるよ?
本当に何するつもりなの?」
「ふふふ、それはもちろん……」
そう言うとベッドの上で寝転んでいた俺の上に飛び込んできた。
三日月さんも寝巻きのため、柔らかい感触が伝わってくる。
「もちろんギューってするにきまってるじゃないですかぁ!
今日は一日出来ていなかったんですから!
ベッドの上で男女2人、ナニも起きないはずはなく……」
「絶対なにもしないからね!?」
さすがにこんなところで手は出せない。
「むむー まあいいでしょう。
夫婦ならいつでも出来ますし」
(俺の体力は持つのだろうか…… って変なこと考えるな俺のバカ)
こんなところでも三日月さんにリードされるのかなんてバカなことを考えてしまった。
「えへへー 優真くん優真くん優真くん!」
「三日月さんが壊れた機械みたいに……」
そう言うと三日月さんは突然起き上がり、俺の側から離れた。
「私達はもう夫婦なんですよ!?
なんで優真くんは私のことを旧名で呼ぶのですか?」
「気持ちが早いよみかづ……」
「もういいですもーん!
優真くんが名前で呼んでくれるまで絶対に返事しません!」
これまた大変なことになった……
――――――――――――――――――――
part13
これが真の幸せなのですね!
優真くんが本当に私のものに……
いえ、モノ扱いするのは失礼すぎますね。
それにしても私達の関係がクラスメイトに誤解されていたとは……
いえ、まあ誤解ではありませんけど!
関係を明かさなければいけない日も近いかもですね。
ただこうなると不安なのは優真くんです。
私は妬まれることには慣れっこですが、優真くんが耐えられるのか……
なにか言われるようなら私が優真くんの良さを2時間ほど語って黙らせますが……
まあそれはその時に考えましょうか。
今は私を名前で呼んでくれないことの方が大事です!
名前じゃないと返事しない!
なーんて言いましたがさすがにそれはそれで寂しいです……
我慢…… 我慢するのです私……
――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました!
学校の暇な時間に書いていたこの小説も、学校では暇な時間が少なくなり、気づけば2日に1回投稿に……
毎日投稿したいのですが、ウマにエペにエルデンに、高い高い障壁があります。
2日に一回投稿は余程のことがない限り守るので、よろしくお願いします。
最後に、前回もお読みいただきありがとうございました。
一日50PVで喜んでいたのに気づけば毎日150PVなんて信じられません(笑)
次回もよければよろしくお願いします!
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