第14話

 部屋に戻ったイネスは、シャーリーから渡された紙束を見ていた。

 そうしていると、扉がノックされ「どうぞ」とイネスが声をかければ、入ってきたのはソーマスだった。

「どうかしましたか?」

「国王陛下が食後の茶をご一緒したいと申しております。いかがなさいますか?」

「え!?は、はい、行きます!」

「はい、ではご案内致します」

 と言うとソーマスはオレンジのマフラー姿のイネスが部屋を出ると部屋に鍵を掛けて、国王バンデンブランが居るという場所まで案内をするのだった。

 そうして辿り着いたのは前にも訪れた書斎だった。ソーマスが扉をノックして「デマントイド様をお連れしました」と言うと「どうぞ」と返事が返ってきた。

 ソーマスは「失礼します」と言いながら扉を開けると、バンデンブランは執務机でゆっくりと茶を飲んでいた。

「……デマントイド殿、来てくれたか」

「あ、はい。何か御用でしょうか?」

「まぁ、掛けてくれ」

 という視線の先には小さなテーブルと椅子が用意されていた。テーブルの上にはティーポットとカップが置いてあった。

 イネスは言われるがまま、その席に着くとポットから茶を注いで、

「いただきます」

 と言ってから口を付けた。

「それでお話というのは?」

「……先程の話、隠している事があるだろう?」

「っ!?」

 それにイネスは驚きを隠せなかった。どう答えたものかと考えていると、

「そういう事には職業柄敏感でな、隠す理由は何か教えてもらいたいのだが、駄目だろうか?」

「そ、れは……」

 イネスは考える。けれどもこれ以上誤魔化すことはできないと腹をくくり、

「申し訳ありませんが、お答えできません。理由もお話できません」

 と言うのだった。

 それにバンデンブランは、

「…………そうか、なら仕方がないな」

 あっさりと引き下がった。

「え、あのっ、いいんですか?それで?」

 挙動不審になるイネスを尻目に、バンデンブランは、

「答えられないのが答えなのだろう?ならば仕方がないだろう。無理に聞き出そうとは思っていなかったからな。ソーマス」

 ソーマスは手に持っていた皿をイネスの小さなテーブルに置いた。

「誤魔化すこと無くきちんと答えてくれた礼だ、甘い物が好きなのだろう?」

「い、頂いて宜しいのですか?」

「好きに食べると良い」

 そう言って茶を飲むバンデンブランに、イネスは皿の中のクッキーを手に取るとぱくりと頬張った。それは上品な甘さでイネスはすぐ虜になってしまった。

 ぱくりぱくりと食べ進めるイネスに、バンデンブランは目を細めて少々嬉しげにすると、クッキーを食べ終え茶を飲むイネスに、

「呼び出してしまって申し訳なかったな」

「いえ、こんなに美味しいクッキーが頂けたので僕は嬉しいです」

 そう思ったままを正直に言うイネスに、バンデンブランは机に肘をついてその手に顎を乗せると、

「なら、いい。聞きたかったのはそれだけだ、済まないな」

「いえ、お話できて光栄です。ありがとうございます」

 クッキーを食べ終え茶を飲み干すと、そう言って席を立ち、イネスは「失礼しました」と言って部屋から出ていった。

 その後はソーマスに付いて部屋まで戻り、シャーリーから渡された紙束をすべて読み終えると、風呂へと入り用意されていた寝間着に着替え、安宿とは雲泥の差であるフカフカで温かいベッドに横になれば、すぐさま眠りに落ちてしまうのだった。

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