本作の季節は春です。主人公は中学教師と女子生徒ですが、ふたりに授業や部活の接点はなく、ふたりを繋ぐのは、とある秘密の花です。秘密の花園で奇妙な交流が始まるものの、微妙な距離感のふたりの掛け合いが、不思議と愛おしく、やるせない気持ちにさせます。花が咲き続けることはできないように、ふたりの淡い春にも限りがある。許されない営みとわかっているからこそ、少しでも春のひと時が続いてほしい。ヒロインの絵と共に、そんな悲哀が静かに描き出されているように思います。