肩書について

町の歯医者さん、白瀬先生のクリニックには額に飾られた紙がある。

『歯科医師免許』と書いている。


歯科医師。

先生の肩書だ。

僕がそれをうらやましく思いながら眺めていると、先生が問いかけた。


「どうしたんだい?」


僕は正直に答える。


「先生には肩書があっていいね。僕にも肩書がほしいよ」


はははという先生の笑い声が響く。


「君はまだまだ子供だ。これからたくさんの肩書が手に入るよ。僕よりも立派なね」


僕は今すぐ肩書がほしいのに。


「先生、僕にも手に入る肩書はないの?」


先生は、ふむとうなった。


「君がこのカメラで、白衣のお姉さんたちのスカートの中を撮るんだ。そうすれば一つ肩書が増える」


すると白衣を着た数人のお姉さんたちが現れた。

お姉さんたちは額を壁から外し、歯科医師免許を破り捨てる。

先生はけたたましく叫んでいる。


歯科医師という肩書はあっけなく消えたが、犯罪者という肩書が手に入ったようだ。


~偉業を成し遂げても、法を犯しても犯罪者という肩書が手に入るのだから、肩書に価値はない~

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