Ⅹ
「そうだ。いろんな食べ物が食べれるように一人一個買って、二人で分けないか?」
「それがいいね。そうしよう!」
二人は屋台を回り、お小遣いの範囲内で買い物をし、再びベンチに戻ってくる。
「ねぇ、どれから食べるの?」
「綿菓子から食べようぜ」
「うん」
翔也は、綿菓子の入ったアニメキャラクターの袋を開け、綿菓子を取って食べる。
「私も……」
二葉は物欲しそうに見てくる。
翔也は、一口分の綿菓子を取り、二葉の前に出す。
「ほら……」
すると、二葉はそのまま綿菓子を口に入れる。
「お、おま……⁉」
「どうしたの?」
二葉は翔也の方を見ると、翔也は顔を赤くして驚いている。
「いや、何でもない……」
翔也はそっぽ向いて、綿菓子を食べる。
「私にも頂戴よ!」
「食べたければ自分で取れ!」
翔也は綿菓子の入った袋を二葉に突きつける。
二葉は、ニタリ、として翔也をからかい始める。
「翔ちゃん、もしかして、さっきの気にしているの?」
「ば! バカ! ちげーよ‼」
翔也は、声を上げる。
そうやって、桜の木の下で二人、過ごしていた。
「翔ちゃん、どうしたの?」
不思議そうに翔也の顔を覗き込んで、首を傾げる二葉。
「あ、ああ……。ちょっとな……。昔の事を思い出していたんだよ……」
「昔の事?」
二人は歩きながら話をする。
「ほら、昔、二人でここら辺の場所で遊んだことがあるだろ?」
「そういえば……」
二葉も思い出す。
「あったね。あの時、翔ちゃんって……」
二葉が思い出した記憶を口にしようとした。
「やめておけ。それ以上、思い出すと俺が恥ずかしい」
翔也は言った。
「ふふふ、分かった」
二葉は、笑みを浮かべて、昔の記憶を二人は共有した。
二人は射的屋に行き、八発・五百円を選び、銃を構える。
(久しぶりだな。こういうのは普通、簡単なものを取っていくのが鉄則なんだよな)
翔也は、銃にワインのコルクに似た弾を入れ、狙いを定めて、右手で引き金を引く。
駄菓子の所に当たり、崩れて後ろに倒れる。
「よし、うまくいった!」
「ああ、どうしよう……」
隣では二葉が、翔也よりも弾数が減っていた。
「おいおい、そんなに馬鹿みたいに狙っているのは何だ?」
翔也は二葉の視線の先を見る。
そこには、綺麗な包みがされていた箱だった。
「あれを狙っているのか?」
「うん……」
二葉は頷く。
「それにしても難しいのを選んだな。あれは一人では無理があるぞ?」
翔也はその箱を見ながらすぐさま計算する。
「え? なんで?」
「なんでかというと、重さとこの距離、そして、銃の威力を考えろ。簡単なことだ。一人じゃあ、あれは無理だが、俺の言う通りにできるか?」
「うん……」
二葉は頷くと、翔也は弾を準備して、二葉の隣に座る。
(え? 翔ちゃん!)
隣に座るといっても、密着するくらいの距離であり、鼓動が早くなる。
「いいか? 俺と呼吸を合わせて、あの箱を狙ってみろ。いいな、少しずれが生じると、あの箱は後ろに倒れない」
「うん。分かった」
二人は銃を構え、狙いを定める。
「三、二、一!」
集中して、その目線の先の箱に目掛けて引き金を引く。
弾は箱の方へと飛んでいき、二つ同時に当たる。箱はぐらつき、後ろに少し傾く。
(いけるか⁉)
箱は、そのまま後ろに倒れた。
「よし!」
「やった‼」
二人は喜んだ。
射的を終えた後、焼きそばを近くで買い、再びベンチに戻る。
「そういえば、あの箱の中身何だったんだ?」
二葉が大切そうに持っている箱を見ながら言った。
「さぁ? 私もまだ明けていないから分からない」
「開けてみるか?」
「うん」
二葉が、紐をほどいて、紙袋を破く。薄茶色の箱が見えてきた。箱を開けると、そこにはシャボン玉セットが出てきた。
「え?」
二葉は唖然とする。
自分が狙っていたものは子供でも使えるシャボン玉セットであるのだ。
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