師走の朝、わたしは闘わせていただきます。
九日
今日も今日とて、朝はお越しになられるらしいです。
ピピピ、ピピ
「んー……」
ああ、本日も朝がお越しになられてしまいました。ベッドに横になったまま、カーテンをひらりと
わたしはものすごくおかしな体勢で、窓の外を眺めております。ベッドから上半身は落ち、両手は窓枠に、下半身はお布団の中にあります。
ご存知だとは思いますが、わたしの足とお布団は、強力な瞬間接着剤で貼り付けてあるのです。なぜか、ですって? そんなことは簡単、理由はただひとつ……いいえ、ふたつでしょうか。まあ、良いのです、大きく括ってしまえばひとつですから。わたしがお答えするまででもないかもしれませんね。だって皆さんもお分かりになるでしょう? とても簡単。寒いからです。寒いから、お布団から出たくないからです。お布団から、出るわけにはいかないのですよ。寒さに負かされてしまう前に、上半身もお布団の中に入れることにしました。
た、た、た、
これはいけませんね。この音は、寒さと闘うわたしの邪魔をする、最大の敵があらわれる際のものです。
「こら! はやく起きなさい!」
大変です、敵がお部屋にまで入ってきてしまいました。わたしの全身が危険を訴えております。本能で、すぐに負けてしまうと悟りました。
「ほら!」
敵がお布団を勢いよく捲り上げます。外気がさあ、っと肌に触れます。
「びゃあっ」
何をしてくれるのですか、思わず叫び声を上げてしまうほど寒いではありませんか。
嫌です、やめてください。こんなに寒いのにお布団引っ剥がすなんて、娘を凍死させる気ですか!?
わたしは思い切り引っ張って、お布団を引き戻します。お布団はまだ暖かさが残っていました。
わたしは敵に言ってやりました。
「お布団から出るものか。このぬくぬくから出るわけにはいかないのだ!」
と。
師走の朝、わたしは闘わせていただきます。 九日 @_Hiicha
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