【4】従兄の家で

 従兄の家は子どもが3人。、上から女男男、11歳8歳6歳。


 美奈は上の女の子、咲に懐かれて、勉強を見てやったり一緒にお風呂に入ったりしていた。



 お風呂上がりに縁側からあどけない声がする。風呂上がりに雨のあがった庭のそばで、美奈と咲が濡れ髪のまま麦茶をのんでいるようだ。


「ねえ、お姉ちゃんは哲っちんの恋人なの?」


美奈に尋ねたので、出ていこうとした脚をグッと踏み止まった。咲は、従兄の言い方を真似をして俺のことを哲っちん呼び。(美奈には散々笑われた)


「うーん、どうかな」


「ねえ、でもカッコイイよね?」


 そういうお年頃なのだろう。数ヶ月前に会った時よりもぐっと背が伸びたが、顔立ちはまだ幼く、そのアンバランスは成長期特有のものだ。


「じゃあさ、恋人じゃなかったとして、美奈ちゃんは哲っちんのこと好きなの?」


髪をトントンと吹いていた美奈がため息をついた。


「咲ちゃん、もう勘弁して……」


「あー?ということは……」


「ちょっと!咲ちゃん?」


ちょっと声を低めて美奈が注意すると、くっくっくと笑い声がきこえ


「えへへ、ごめんなさーい」


 そこまでの会話を、こっそりと盗み聞きして、苦笑いしながらそっと廊下を離れた。



 夜中、水を飲みに台所へおりたら、縁側のカーテンを開けて、美奈が座り込んで空を眺めていた。

「美奈」

「まだ寝てなかったの?」

「美奈もだろ?」

 返すと美奈はふふっと笑った。

「何見てたの?」

「星。こんな窓越しでもちゃんと見える」

「田舎だからな」

「家からなら、どうやってこれる?車以外だったら」

「電車の駅降りて、バスだな」

「そっか」

「平日はさすがに無理だな。…寂しいな」

 美奈が俺の腕に寄りかかった。

「ねえ、私がこういう風にしてもダメだって言わないよね?昨日だって…」

 未遂のキスのことを言っている。

「まあ…な、嫌じゃないし」

「私の事、好き?」

 見上げてくる美奈を見下ろす。月明かりにほんのり照らされた頬が白い。

「…そうだな。」

「どっち?」

「うーん、今言わないとダメ?」

「今はなんでダメなの?」

「…夜、男の人にそういうこと言っちゃダメです」

「え?」

「そんな潤んだ目をして、可愛い顔して、そんなふうに言われたら、もし好意を持ってなくても、好きだと言って悪さする輩だっているんだよ?だから、俺は信用して欲しいから今は言わない」

 腕の中にいる美奈は細っこくて頼りない。




「もう寝よう?」

「もう一回だけギュッてして?」

 美奈の目じりが濡れている。俺のシャツの裾を握る手が小さくて、白くて、切なくなった。


 何も言わずに肩を抱き寄せた。

 確かにそこにある命。手を当てた背中からもドキドキという心音が感じられる。


「朝、起きたらさ、そこの海散歩しよ?」

 美奈がポツリと言った。

「いいよ」

 返事して髪を撫でた。

 美奈が少し大きめに息を吸って、吐き出した。腕の中で上下する美奈の肩が細くて、闇に溶けそうだった。

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