王太子に婚約破棄されていたら「ずるいずるい」という妹が乱入してきました。

第1話




「アンジェリカ・モーストア!! お前との婚約を破棄する! 身分を笠に着て男爵令嬢であるプリシラを虐めるような女を王妃にするわけにはいかない!!」


 学園で行われた卒業パーティーの会場で、学園長の挨拶中に舞台に乱入したユークリス殿下がそうおっしゃられました。


 殿下の腕にはピンクの綿ゴミみたいなドレス……ごほん。ピンクのフリルがふんだんにあしらわれた夢のようなドレスをまとった女生徒がぴったりと寄り添っております。

 その後ろには殿下の側近候補の令息達もおりますね。ピンクのフリルがふわぁ~っと舞い上がったりたなびいたりしているせいでいまいちお顔が見えないのですが、おそらくはいつもの面々でしょう。


 申し遅れました。わたくし、モーストア公爵家の娘アンジェリカと申します。

 ええ。たった今、殿下に婚約破棄を告げられたのはわたくしでございます。


 しかし、婚約破棄はともかく虐めなど致しておりません。名誉にかけて誓いますわ。


「殿下。このような場で話すべき事柄ではございません。他の皆様のご迷惑に——」

「ええい、うるさいっ!! 言い訳しても無駄だっ!!」


 え? 今のわたくしの指摘のどこに言い訳と取れる言葉が含まれていたのでしょう?


「お前はこのプリシラに嫉妬して持ち物を盗んだり壊したりしたあげくに、階段から突き落として殺そうとしただろう!!」

「ユークリス様ぁ~プリシラ怖かった~」


 ああっ! プリシラ嬢が身をよじって殿下にすがりついたため、ピンクのフリルがふわっと舞い上がって真後ろにいた令息がくしゃみをしましたわ!

 あの方、宰相のご令息ね。彼は花粉症なのだからすぐ傍で埃が立つような真似をしてはお気の毒ですわ。


 わたくしは懐にそっと手を忍ばせて小さな包みを取り出しながら壇上へあがりました。

 いつも懐紙を持ち歩く習慣ですの。


「どうぞ」

「これは……かたじけない」


 わたくしがそっと包みを差し出すと、宰相子息は重なった懐紙を数枚取って鼻と口を押さえました。


 用事が済んだのでわたくしは舞台を降りて、再び皆様と同じ目線で壇上の殿下達を見上げます。


「以上の罪で、お前を処刑する! おい、こいつを連れて行け!!」


 殿下が会場を警備する衛兵達に命じました。

 その次の瞬間、会場の扉がばーんっと音を立てて開かれました。


「ずるいですわっ、お姉さま!!」

「シャティ?」


 扉を開けて会場へ飛び込んできたのは、わたくしの一歳下の妹シャティでした。



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