恐ろしの森

辻 褄

自分の怖い物

「ねぇ、あれが恐ろしの森?」

僕の顔を覗きながら妹が言う。


「そうだよ。この森には…が住んでいると噂されてるから恐ろしの森と言われているんだ。」


「そうなんだ。じゃあ、もう行こ!」

一瞬顔が青ざめさせたが、好奇心だけで森に走って行ってしまった。


「危ないから先に行くなよ」


「誰か居るよ!」

“声を出すな待ってろ”というジェスチャーをして、忍び足で向かった。



「あれは、…だ。自分の怖い物が…になる。何も考えずに、忍び足でこの森を抜けよう」


「わかった」


小声で言い、森の入口に入る。



森の中を歩いていくと、目の前に…がいる。



「気づかれないように出口に向かって逃げよう」


「わかった」


…が、後ろを向くのを見計らって、逃げる事を決意したが…。


…は自分達の方を覗くように見ている。


何も無かったように、首を傾げるが全速力で僕たちの方に向かってきた。



「…が向かって来た!出口まで走って逃げるぞ!」


妹が首を縦に振る。



必死に森の出口から刺す光に向かって走る。



後ろから、…の足音が「ドスドス」と大きな音を立てて迫ってくる。


「僕の手を掴め!」


小さな手が僕の手を掴む。



「待ってくれー!」

そう叫びながら、…は妹の腕を傷つけた。



「お兄ちゃん、痛いよ…」


「あと少しで住宅街だよ!」

妹の腕から大量に血が出ているのを心配しながら、目の前に住宅街があることに安堵する。


ついに、森から出ることができた。



「行くなぁぁぁぁあ!」


…は、出口の前で立ち止まって、僕たちを羨ましそうな目で見ていた。




「やっと着いたね!もう恐ろしの森に入るのはよそう」


妹が飛び跳ねながら嬉しそうに言う。


「そうだな。危険すぎるから、次からは森を避けて帰ろう」



2人で語り合いながら、平和に家に帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恐ろしの森 辻 褄 @tuji_tuma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ