第3話 菊田徹

徹は、私の中学時代のバスケ部の友人の愛子を好きになった。

徹は、引っ込み思案で、写真を撮られるのが嫌い、一卵性の双子で、私が徹の友達の優斗を好きになり、お互いの恋愛を話すようになってから仲良くなっていった。


週4くらいで私の家に来て、課題をやり、テレビを見ながらご飯を食べるという、はたから見るとカップルのように見えたらしく、美香には毎回確認された。

「付き合ってるの?みくる、優斗が好きなんじゃないの?」

「付き合ってないよ、お互いの恋愛を応援しているだけ」

「はたから見ると、優斗よりお似合いだけどね」


そんなある日、私は尿管結石で倒れ、1週間入院することになり、母が上京してくれた。

下半身が管でつながれて、食事もとることができず、毎日病室の天井の模様を見ていた。

「こんにちは」声がするので、隣のおばあさんの家族がお見舞いに来たと思ったら、徹と美香がお見舞いに来てくれた。

正直、嬉しさと驚きで、私は声が出ず、ぼーっとしていた。

「みくる、大丈夫?」と徹の久々の笑顔が心にしみる。

「うん、なんとかね」

「よかった」

「徹がお見舞い行こうって言いだしたんだよ」と美香がニヤニヤしながら言ってきた。

「そうなんだ、ありがとう」

「いや、みくるが寂しがってるように見えたからさ」

「ありがとう」

この日から、私の気持ちは優斗から徹に心が動いた。


退院し、学校に通うと、徹が真っ先にやってきた。

心の中で、「やっぱりいいかも、徹」と思い始めた。

それから月日が流れ、2003年の冬。

河口湖のほとりで・・・


「徹、実はね、徹のことが好きになったんだ」

「え?優斗は?」

「ううん。優斗じゃなく徹と一緒にいる私がナチュラルで徹と一緒にいる時間が幸せだったんだ」

「・・・」

「やっぱ、だめだよね。私は、まだ愛子のこと好きなんだもんね」

「・・・」

「ごめん、急に」

「・・・」

徹は何も言わず、その日は解散した。


2週間ほど月日がたち、徹と私の家で、久しぶりに課題をやることになった。

「元気?」私からとりあえず話しかけてみる。

「うん」

「今日、ごはんカレーにしようかなって思ってる」

「いいねカレー」

「おう」

そんな会話をして、カレーを食べた。

「振られた」と急に徹が言い出した。

「え?」

「一昨日、メールで愛子ちゃんに告白した。好きな人がいるからって、振られた」

「・・・そうなんだ」

徹は、私のベットに横たわり、壁側を向き話し始めた。

「どうせ俺は不細工だし、背も小さいし、暗いからあんな明るい子には俺は合わないんだよ」

「そんなことないでしょ」

徹が、急に振り向き私の腕を引っ張り、ベットの上に引き上げる。

うっすら涙目の徹と目があう。

「なんでだよ、なんでみくるなんだよ。みくるから好かれて、愛子ちゃんからは振られて、なんでうまくいかないんだよ」

「・・・」

「もっと目を二重にして、鼻も高くして、もうちょっと痩せたら、みくるでいいのに」


私は、踏みつぶされた気がした。どうせ顔なんだ。

顔がよくないと心まで見てもらえないんだ。


私と徹はその日から会う回数が減るようになった。

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