第38話 護衛の旅

 今私達が護衛しているのは、砂糖を運ぶ商人だ。この国の南部にある港町周辺では、サトウキビが栽培されている。精製技術が未熟なのか黒砂糖ではあるが、なかなかの高級品で、裕福な平民でないと口にできないものだ。

 臨時の護衛パーティーは6人で、半分の3人が私と同じ傭兵団の同じ分隊のもので、残りが他の傭兵団の混成集団だ。

 この中で、私の分隊に所属している二人は、男性の方がエルクで、女性の方がルースである。どちらもまだ18歳と若いが、私とほぼ同時期に入団した同期生だ。そのため、自然と会話する事が多くなり、団員の中では一番仲の良い仲間である。

 この二人は幼馴染でいつもセットでいるが、付き合ってはいないらしい。どこの出身かは誰も知らないが、おそらくは元自由民だろうなと皆感じている。

 二人とも16歳という成人したばかりの年齢で入団し、若手のホープとして認識されている。

 エルクはいわゆる細マッチョというやつで、着やせする見た目に反して非常に力強く、大型の魔物の突進も盾を使って真正面から受け流す。いわゆる壁役である。それも相当優秀な。

 ルースはなんと魔導士だ。つまり、ヒム族ではとても希少な無詠唱魔法の使い手である。魔法制御力もかなり優秀である。私の知る限りでは、私を例外としてカウントすれば、ガルムの都市最強の魔法使いだ。

 エルクが受け止め、ルースがとどめを刺す。流れるような連携を見せる二人である。

 私が悪目立ちしているせいで、

(実力の割には、周囲の評価が低いんですよね)

 というのが、私の見立てだ。

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