病院の死神
「……」
「もうお葬式の準備できたの?」
「あとは亡くなるだけって嫌ね」
「連絡は死んだ後がいい?」
「お坊さん、どうする? 無宗教なのに」
「何人来るの?」
「結構お金がかかるのねえ」
「……」
「やだ、そんな、もう手遅れなんですか?」
「どうしたら、それなら家で、家に帰ります」
「機材とかどうするの、お金かかるじゃない」
「でも、でも」
「お金持ってるの? いいじゃない病院で」
「……」
「こちらとしましては、この病院に転院はいかがでしょう」
「お別れするまでのサポートをしてくれる病院で」
「そんなにお金は、ああ、はい、先に入院費を」
「規定内でお亡くなりになりましたら払い戻しで」
「……」
「うう」
「――ちゃん、大丈夫だからね」
「あたまいたいー」
「もう少しだからね」
「……」
「いつも来てるんだよ、今日は健康診断だ。アンタは?」
「俺もそんなもんだ。この歳になると病院行け行けってうるせえんだよ」
「手術費ばかになんねえからなあ」
「薬が増えるばかりよ、お金がかかってしょうがない」
「こんなことなら」
「……」
(つらい、いたい、ねむれない、つらい、いたい、ねむれない)
(くるしい、もう、たすけて、くるしい、もう、たすけて)
(おわりにして、なんでこうなるの、おわりにして、もういいから)
(いいから)
「……」
「アッ、センパーイ! 今日の分、終わりました?」
「ああ」
「病院勤務は疲れますねー」
「そうだな」
「固定給だからイイッスけど、やっぱフリーだと大変ッスか?」
「そうだな、安全に魂を送ることができない」
「そう思えば、気持ち悪いの我慢しているのがいいんスかね」
「さあな、戻るぞ」
「うーっす」
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