第14話

『蒼くんへ

まずは、この手紙が君に届く頃には私はこの世界にいないんだね。なんか不思議な感覚。


ごめんね。嫌なもの見せちゃったよね、多分。でも、どうしても、最期の時は君と一緒に居たいと思っちゃったんだ。私のわがまま聞いてくれたかな?


15年前の12月24日、私はこの世界に生まれてきた。でも私はきっと、生まれてくる場所を間違えた。だから、15年後の同じ日に元の場所に帰ろうと思う。予報では、今年のクリスマスイブは快晴なんだけど、実際はどうだったかな?いいお天気の日に帰れたら幸せだな〜。


君がくれた屋上という楽しい高校生活。もうちょっと楽しみたかったなー。私ね、君と屋上でなんでもない話したり、お互いに好きなことしてる時間大好きだったんだー。君といるとね、無言でも、めちゃくちゃ楽しいんだよね!だからさ、君が美羽ちゃんと話してる時、君がもう屋上に来てくれないんじゃないかって心配になって、嫉妬しちゃって、すごい嫌な態度とっちゃった。しかも、何もなかったことにしちゃったしさ。ごめんね。


夜の学校探検あったじゃん?楽しかったねー。ほんとはね、あの日、みんなが学校を回ってる間に屋上に行って、飛んじゃおうかな、って思ってたの。でも、君がペアになっちゃったから、こんなの楽しむしかないじゃん?って思っちゃった。本当に楽しかった。生きてていいこともあるもんだって思えたもん。


文化祭、一緒に回ってくれてありがとね。君に友達がいないとか言って強引に連れ回しちゃったけど、本当は君が他の誰かと回るのを見たくなかったんだよね。君の友達は私だけでいいとか思っちゃった。ほんとにごめん。


こうやってみると、私君に謝らなくちゃいけないことばっかだね。ほんとにいろいろごめんね。そして本当にありがとう。


あ、時計めっちゃ可愛いでしょ?君に似合うクリスマスプレゼントを探したんだ。そしたら、見つけちゃった。君が好きって言ってた青色。群青色に近いでしょ?しかも、私が思う君のイメージにぴったりなんだよね。見た瞬間、これだ!って思っちゃった。これからつけてみてよね。

あと、ラベンダーのフラワリウム。まあ、それは君が持っといてよ。私からのプレゼント。どっかに飾っといてくれたら嬉しいかな。

メリークリスマス!良いお年を!


あ、これはね、自意識過剰かもしれないんだけど、絶対についてきちゃダメだよ。君には自分の人生を全うして、私の分まで幸せになってもらうつもりだから。将来の夢を叶えて、素敵な家族に囲まれて、自分のしたいこと飽きるくらいして、存分に幸せを噛み締める。これ全部私の夢。あっちに行く前に全部叶えてきて!これが私の最後のわがままかな。頼んだよ、山田蒼!


最後に、本当にありがとう。君といる時間全部が楽しかった。

私はきっと、君のことが好きだった。


大好きでした。

                 吉野茜  』


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