第9話

12月は、さすがに屋上に出るには寒すぎた。僕達は屋上に出る一歩手前の踊り場で昼休みを過ごすようになった。

「12月24日、終業式が終わった後、ここに来てよ。」

彼女は窓の外を眺めながら、そう言った。この角度だとちょうど、高く広がる冬の空が一面に見える。

「いいけど、なんで?」

12月24日。それは彼女の誕生日ではなかっただろうか?僕なんかと一緒にいる時間が彼女にはあるのだろうか?

「冬休み入っちゃうんだよ?君は寂しくないわけ?!」

彼女はわざとらしく、目を見開いて、信じられないと呟いていた。僕がその姿に笑うと、彼女は倍くらいの声量で大笑いする。踊り場では声が響いて、より一層大きく聞こえる。下から声がして、2人で黙り込む。顔を見合わせて、今度は静かに笑う。笑いを抑えようとすればするほど、笑いは込み上げてくる。2人でひとしきり笑った後、僕はとてつもない幸福感を感じた。この時間が学年が上がり、クラスが変わってしまっても続くといい。そんなことを心の底から思ってしまった。


終業式の日に彼女に誕生日プレゼントをあげようと思った。かと言って女の子が好むものなんてわからない。なのでとりあえず、ショッピングモールをぶらぶらしてみることにした。

しばらくいろんなところを見たが、いまいちピンとくるものがない。また日を改めて、違うところを探してみようかと思っていたとき、ふと一つの時計に目が止まった。ベージュのベルトに金色のケース、そして秋の夕暮れの空を連想させる紫とピンクが混ざったような色のアイコン。

(これだ。)

僕は即決した。いつも優柔不断な僕だが、今日は違った。彼女のイメージぴったりの時計を見つけた。なんだかとても誇らしかった。これを受け取った彼女の反応を想像して、にやけてしまう。これじゃただの変態だ。僕はにやけを我慢しようとしたが、その顔の方が変だったかもしれない。


このプレゼントを早く彼女に渡したいと思った。

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